嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

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17.今はそれより先に

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 こんな風に拘束されて、そのまま触れられたら、もういいようにされるしかないじゃないか。

 せめて睨んでやりたいのに、キスだけで、すっかり殿下から目を離せなくなってしまった。

 抵抗できなくなった僕を見下ろして、殿下が言う。

「だって俺は、もう二度とダスフィレトを離したくない。ダスフィレトは、俺のことなんか、なんとも思ってないようだけど…………」
「はっ……!? そ、そんなことっ…………」
「だってさっき、俺と出会ったあの屋敷であったこと、覚えてないって言ってたじゃないか」
「あ………………」
「忘れてたんだ……俺は、ぜーーんぶ覚えていたのに」
「それはっ……」

 僕だってそうだ。殿下と話したこと、全部覚えているのにっ……!

 しまった! そう言うタイミングを逃した!! 僕の馬鹿っ……!!

 口を開こうとしたけど、殿下が僕にキスをする方が早い。
 まだ震えたままの僕の唇に、殿下はそっとキスして、優しく言った。

「まあ、いいや…………」
「え…………?」
「ダスフィレトが忘れてても。これからは、ずっと一緒だから…………」
「い…………いや……あの……ま、ま、待ってくれっっ!! 殿下っ……んっっ!!」

 彼は微笑んで、愕然とする僕にまたキスしてくれる。

 待てと言っているのにっ……!

 この男、僕の話を全く聞いていない!!

 暴れる僕は簡単に押さえつけられて、何度もキスされていた。
 逃げようとしても、手枷で拘束されて吊るされていたら、何もできない。甘くキスされるだけで、だんだん僕も、彼がくれるキスに夢中になってしまいそう。

「ん…………殿下……ちょっっ…………!」

 服の下に手を入れられそうになって、僕は身を捩って逃げた。

 このままキスされてたら、そのまま身を任せたくなってしまいそうだけど、よく考えたらこんなことしてる場合じゃないっ!!

「ま、待って…………待って!! 今、こんなことをしてる場合じゃないっ…………」
「…………俺にとって、なにより大事なことなんだけど……?」

 ……く、くそ……ずるいぞ。

 そんな顔されたら、僕だって…………

 ……って、何を考えているんだ!! こんな時に!!

 手枷をつけられて、鎖で吊るされているんだぞ!! それで無理矢理キスされて、脅迫のように求婚されているんだ! それなのに、なぜ…… 

 キスくらいで言いなりになるなんてっ……!! こんな辱め、許せるものか!

「ふ、ふざけるなっっ!! 馬鹿にしているのか! 今はそれどころじゃない! 今すぐこの鎖を外せ!! 結界の魔法の道具を探すんだろう!!」
「……そうだけど…………結界の魔法の道具は、必ず取り返す。だから、後少しくらい、キスしててもいいんじゃない?」
「道具が先だっっ!!」

 当然だろうっっ!!

 それなのに、殿下は残念そうな顔をして、それでも僕の前で、勝ち誇ったように笑う。

「じゃあ、道具を探しながら口説く」
「え………………わっ!!!!」

 いきなり、手枷が消えて、体は自由になったけど、すぐに殿下に抱き止められてしまう。

「行こうか?」
「ま、まずは離せっっ…………は、話は……それから…………」

 だんだん僕の声も小さくなっていく。

 だって、こんな風にじっと見下ろされて、しかも、ずっと離してもらえなくて、怖いのか緊張しているのか分からない。

 それに……口説くって…………急にそんなことを言われても困る!
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