嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

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19.もう二度と、戻る気なんてない

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「じゃあ、行こうか。中は、俺が案内するから」

 そう言って殿下が僕を引き寄せられるから、なんだか落ち着かない。

 王子が帰ってきたことが知れてしまう前に、結界の魔法の道具を探し出さなきゃならないのに、何をしているんだ……

 殿下が戻ってきたことが発覚したら、恐らくこここにある魔法の道具が一番に壊されてしまうだろう。だから急ぎたいのに、これじゃなかなか進まない。

 そして、殿下と会った時のことを本当は全部覚えてるって、なかなか言い出せない僕。

 だって、言ったら何で言わなかったんだって話になるだろうし、そしたら、再会できて話せてすごく嬉しくて、でもそれがそんなに嬉しい自分に戸惑って言い出せなかった……って、白状しなきゃならない。そんなこと言えるか…………!

 こうして、結局何も言えなくて、仕方なく二人で歩き出す。

 今は深夜だ。

 こんな時間に王子が帰ってくるとは誰も思わないだろう。こんな風に動けるとしたら今だけ。

 殿下が歩きながらたずねてくる。

「この先の部屋が怪しいと思ってる?」
「……そこしかありません」

 今回の件で最も疑わしいのは、最もここで力を持っている大臣のコレリイジャイン様だ。

 あー……嫌だなぁ……会いたくない。

 何しろ、僕を馬鹿にしていた貴族の筆頭だ。僕のことをひどく蔑んでいたし、正直、二度と会いたくないと思っていた。

 だけど……別に会わなくたっていいのか。結界の魔法の道具を探し出せれば、それでいい。

「この奥にある、連中が管理する部屋の中ですよ。普段は魔法の研究のためと閉ざされていますが、奴らがしているのは、魔法の研究というより、自分達のために必要な魔法の道具の管理です……あの連中は、すでに王城まで自分達のものにしたような気でいます」
「……ふーーん…………ふざけた連中が城にいたんだな……」

 そう言う殿下は、平然としているようなふりをしていたけど、残念そうにしていた。奪ったものを自分の城に隠されたら落ち込みもする。まるでここが、殿下たちの城じゃなくなってしまったようで。

 そもそも、深夜にこうして忍び込んでいるんだ。これじゃまるで、殿下の城じゃないみたいじゃないか。そんな風に居場所がなくなっていく辛さなら、僕にも分かる。

「……そんな顔をしないでください」
「え……?」
「王城がそんな状況にあることは、僕にとっても、由々しき事態です。これが終わってからも……僕が……その…………」

 言いづらいままでいると、怒鳴り声がした。

 廊下の向こうからだ。

 何かと思って振り向けば、数人の魔法使いがこっちに向かって走ってくる。

「おいっ……! お前たちっ……何をしている!」

 あいつら……コレリイジャイン様の手駒になって動く魔法使いじゃないか。多分、あいつに命じられて、道具を守っているんだろう。

 なんだよ。まだ、話の途中だったのに。

 僕は、そいつらに振り向いた。魔力を使い、走ってくる奴らが自らを守るためにかけた防御の魔法を確認する。

 一人一人、かけた魔法が違うが……あのくらいなら、破れそうだ。

 駆け寄って来る一人一人を狙って、眠りの魔法をかける。

 あっさり眠り倒れていく男たちを見て、殿下は感心したように言った。

「すごいね……相手も、防御の魔法で身を守っているはずなのに」
「そんなもの、貫き方を知っていれば、簡単に打ち破れます。それより、僕の前に出ないでください。何が出てくるのか分からないので」
「…………うん。分かってるよ」
「手も出さないでください。王子殿下が手を出すと、後々面倒なことになります」
「うん」

 ……本当に、分かっているのか……?

 殿下、かなり軽く答えていているけど、僕は真剣に話しているんだぞ!

 殿下は王位には全く無頓着だけど、僕はそんなの勿体ないと思う。彼はすでに王位を継承する気はないようだけど、それなら、ここで他の王子殿下たちの力になって、国を守っていってほしい。これは、あの屋敷で僕が、ずっと感じていたことだ。

 だから、殿下がここで第一王子殿下たちの補佐をしていると聞いた時は嬉しかった。それを……こんなところで壊されたりしてたまるか!

 そう思って歩いていると、殿下の方が、口を開いた。

「…………ねえ……ダスフィレト……」
「はい?」
「王城に戻る気はない?」
「…………え?」
「もちろん、あの屋敷が気に入っていることは知っている。あの屋敷に帰ることを止めるつもりないけど…………ダスフィレトには、俺のそばにいて欲しい」
「……」

 そんなの、僕だって。

 殿下のそばにいて、彼を支えられたら嬉しいだろうって思う。

 だけど僕は、ここにいない方がいい。

 僕、かなり他の貴族たちに嫌われているし、いずれ殿下たちにとって、邪魔な存在になるだろう。

 殿下たちはいずれ、王国を動かしていく。それには、貴族たちの協力が絶対に必要になる。有力貴族は、敵に回さない方がいい。

「…………ウィクレンクト様は?」
「信頼できる人に預けてある。一人で置いておくと、彼を使っていた貴族の手駒が来て、唆そうとする可能性があるからね」
「…………そうですね」

 それが分かっているなら……大丈夫か。
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