婚約者に愛想を尽かし、追放されて陵辱される道を選んだら、私を弄ぶはずの伯爵がなぜか楽しげに近づいてきて対応の仕方が分からない

迷路を跳ぶ狐

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38.楽しませていただけますね?


 喚くグラウワウル殿下に、私は腕を組んで言った。

「あなたにとって、砦を管理する指輪は、確かに重要なものだったのでしょうが、それ以上に大事なものがあったのではないのですか? 砦を管理する指輪と、もう一つ……このようなものも……」

 私は隠し持っていた指輪を取り出し、手の中でコロコロと弄んでやる。
 それを見て、ベネディクシア様が顔色を変えた。

「それはっ…………!!」
「あの部屋でベネディクシア様に抱きつかれた時、魔法でこっそりと、あなたの持ち物を調べさせていただきました。随分と物騒なものを持っていらっしゃるのですね、ベネディクシア様。これは、拘束の魔法を強化する魔法の道具を管理し、相手を捕まえるためのものだわ。あまりに恐ろしいので、あなた方が愉快に私を痛めつけていらっしゃる間にいただいておこうかとも思いましたが…………そちらの指輪には、かなり強力な盗難防止の魔法がかけてあったので、その場でダミーを作らせていただきました。けれど……こちらは随分と作りが単純ですわね……砦の鍵と違い、とても作りやすかったです。お陰で、私だけでも随分精巧なものが出来上がりましたわ」
「それは、私がここを管理するために必要な大切な指輪です…………よくもそんなことができましたね!!!! 悪辣な女っ……!」
「あらあら…………今さら、何をおっしゃっていますの? 分かりきったことではありませんか。私のような悪女を前に、鞭を持ったくらいで間抜けヅラして油断なさるあなたが悪いのですわ。それに……バレたら魔法で意のままに動かしてしまえだなんて考える方に、そんなことを言われたくないわ」
「……何をおっしゃっているのです? 私たちは、ここを守りたいだけです。そのためには、予算だって必要です。けれど、それを説明しても皆さん分かってくださらないのです。ですから、こうするしかなかったのですわ。それに、私たちの言う通りにしてくれれば操りません。私たちが正しい道に戻して差し上げるのですよ? 何が悪いのです?」
「…………悪意とも呼べないような、聞くに耐えない理論ですわね。ベネディクシア様」
「あなたのような汚れた方には何を話しても無駄だわ……それに、あなたの処刑には、皆さんが賛成してくださるはずです…………私が正しいことを、皆さん知っていますもの。それに……あなたの手の中にあるのは、あなたが作った出来の悪いダミーだけでしょう? そんなもので、何ができると言うの?
「あら。そんなことありませんわよ」
「…………何ですって?」
「確かに、あなたの仰るとおり、これで皆さんを操ることはできません。けれど、そんなこと別に構わないのです。あなた方がしようとしていたことさえ分かれば。ちなみに、こうして見せつけていますが、こちらは私が作ったダミーをさらにコピーしたものです。私が作ったものは、先ほど使い魔に咥えさせて、クウォリアス様に送らせていただきました。彼らなら、それがあれば、ここで行われようとしていたことは分かるでしょうし、砦の魔法使いの方々も、すっかりあなた方に愛想を尽かしているようですよ。こちらの方々のように」

 私は、私を取り囲んでいたはずの兵士の方々を指した。

 彼らの拘束はすでに解いてある。けれど、誰も動かない。
 これまで魔物と戦い続けてきてくれた人たちを蔑ろにして、自分に都合のいいように操ろうとした者たちに、これ以上兵士の方々が従うはずもない。
 そもそも、彼らもこの地を守る指揮官としての王子ために王城から派遣されて来たのであって、私欲のために王家から送られたものを金に換える下衆を守るためにいるわけではない。

「彼らなら、あなた方が強化の魔法や結界の魔法の道具に紛れさせて設置した拘束の魔法のための道具を見つけ出して、破壊してくださるでしょう。少し喧嘩っ早い方もいらっしゃることですし。こちらは、もう、必要ありませんわね」

 言って、私は持っていた指輪を握りつぶす。

 ……思っていたより、ずっと脆かったわね……こんなにあっさり破壊されてしまうなんて。

 少し落ち込んでしまいそうだけど、すぐに気を取り直して、私は剣を握った。

「さて。グラウワウル殿下…………これで大人しく投降なさるあなたではないはずです。あなたも、魔物と戦う騎士……それならば、私を楽しませていただけますね? 王家の剣術……今ここで見せてくださいませ!」

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