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2.何か企んでいるように見えましたか?
嬉しいけど、間抜けな顔を見られたくなくて、ずっと顔を背けたままの僕に、隊長はぼそっと言った。
「……よくやったと思えばそれくらい言う」
「えっ……!?」
「だが、今のは褒めたわけじゃない」
「……え………………」
「ろくに戦えないお前にも、できることがあるのかと驚いただけだ」
「…………申し訳ございません……」
つまり、全然戦えない僕が、稀に成果をあげたから、びっくりした……って、ことか…………
……そう……
……だよな…………
報告だって、僕が一番遅い。それなのに、こうして渡したものを罰もなく受け取ってもらえただけでも感謝しないと……
隊長の後ろにいるみんなも、僕の方を見ては呆れたように話している。
「見ろよ……あいつ、役立たずであることを自覚していないぞ」
「呆れるな……大した成果も上げていないくせに」
「よくあれでこの部隊に入った気になれたな……足手まといのくせに。隊長の前で尻尾を振って、まるで犬だ」
「なんであんな奴をこの部隊に…………」
……今日は一際、ヒソヒソ言われてる…………
僕だって、実力不足なのは分かっているよ?
僕だって、場違いだと思う。
そもそも僕、王都に来る前だって、屋敷でいつも邪険にされていた。
なにしろ僕、ずっと、どこに行っても、いるだけで邪魔だと思われていたらしい。
子爵家に生まれたけれど、屋敷の中ではいつも邪魔者。
魔法や剣技も学んだけど兄弟たちには敵わないし、屋敷では、兄弟に嫉妬して彼らが家を継ぐ邪魔をしようとしているのでは、と囁かれていた。
それが嫌で、そうじゃないってことを示せるように、彼らの護衛になったんだ。
……剣を持って兄弟と話していたら、父上に突き飛ばされたから、無駄だったみたいだけど…………
ダメな僕のことを不憫に思ったのか、兄弟たちが、領地を守る魔法使いとして警備隊に入ることを勧めてくれた。
その時は、ちょっと嬉しかった。
僕でも役に立てることがあるんだって思えた。
それからは、魔物から領地を守るために戦っていた。
そのうちに、僕が魔物退治をできることを知った父上が、仲良くしていた貴族たちに僕を貸し、そこで魔物が増えている地域を守る任務につくように命じられた。
ずっと働かされて、報酬は一族の屋敷に送られたりして、ちょっと後悔し始めていた頃、王都から来ていた貴族の目に止まり、王都で魔物退治の部隊に所属できることになった。
その話が来た時は有頂天!!
それまで僕のすることは大体失敗して、まともな成果が出たことなんて一度もない。
魔法を頑張れば、魔法で兄弟を暗殺する気じゃないかと囁かれ、その魔法を使って護衛についたらますます疑われ、領地を守るために戦っていたら今度は物のように貸し出されて……
だけど……
やっと報われる時が来たんだ!
ずっと頑張ってきたことが初めて認められたんだと、本気でそう思った。
ちょうどその頃、王家の領地で魔物が増えたこともあって、僕は、伯爵のテトルマズ・レトスレッル様が隊長をする部隊に入ることになった。
隊長の伯爵には「魔物退治の途中ででしゃばるな!」とよく怒鳴られた。
後で他の魔法使いたちに聞いた話によれば、一度部隊で、伯爵とは敵対する勢力の貴族の話をしたことで、伯爵に目をつけられているらしい。あれは、特に意味があったわけではなくて、ただの雑談のつもりだったのに!!
それでも、伯爵にはひどく不快だったみたい……
しかも、魔物退治の最中、伯爵がとどめを刺すはずの魔物を僕が倒しちゃって、完全に怒りを買った。
それからは何度か嵌められて、僕は全く身に覚えのないことで、何度か処分された。
そんなこともあって、すっかり僕は疲弊していた。
そんな僕でも、心の支えはあった。
当時、王家は魔物が増えている地域の制圧に力を入れていたから、他の部隊と魔物退治に行くこともよくあった。
その部隊の一つが、侯爵家のヴァンフィルイト・デトリュクフィト様が隊長をしている部隊だ。
彼の部隊で魔物退治中に怪我をした人がいて、僕は、その人の代わりに彼らと戦うことになったんだ。
ヴァンフィルイト隊長は、王都に来る前も、侯爵家の魔法使いとしてよく魔物討伐をしていて、僕が、父上に命じられた貴族のもとで魔物と戦っていた時にも、彼が戦う姿を見ることがあった。
その頃から、多分、僕だけが一方的に彼を知っていたんだろう。
だから、彼の部隊に入れたことは、ひどく嬉しい。
だけど、伯爵様の部隊から来た僕に対する不信感は、かなりのものらしい。僕がしょっちゅう部隊で処分されているからでもあるんだろうけど、それと同時に……
「調子に乗るなよ……王家の奸臣が…………」
そんな憎しみも込めた声も聞こえた。
というのも、僕が所属している伯爵様の部隊は、みんな、王家を支持する貴族ばかりで構成されている。その筆頭に立つ一族の一つが、伯爵家。
対して、この侯爵家の部隊は、かつて王家と対立した、王家に反感を持つ貴族が多い。
そんなところに一人送られた僕は、彼らを見張りに来た王家の間諜なんじゃないか……そんな風に思われているみたいだ。僕は特に間者としての任務なんて受けていないし、ただ、侯爵様の役に立ってこいとしか言われていないし、僕だって、そのつもりだ。
だけど……ずっと対立してきた王家派の貴族から一人送られてきた魔法使いなんて、怪しく見えて当然らしい。
「……よくやったと思えばそれくらい言う」
「えっ……!?」
「だが、今のは褒めたわけじゃない」
「……え………………」
「ろくに戦えないお前にも、できることがあるのかと驚いただけだ」
「…………申し訳ございません……」
つまり、全然戦えない僕が、稀に成果をあげたから、びっくりした……って、ことか…………
……そう……
……だよな…………
報告だって、僕が一番遅い。それなのに、こうして渡したものを罰もなく受け取ってもらえただけでも感謝しないと……
隊長の後ろにいるみんなも、僕の方を見ては呆れたように話している。
「見ろよ……あいつ、役立たずであることを自覚していないぞ」
「呆れるな……大した成果も上げていないくせに」
「よくあれでこの部隊に入った気になれたな……足手まといのくせに。隊長の前で尻尾を振って、まるで犬だ」
「なんであんな奴をこの部隊に…………」
……今日は一際、ヒソヒソ言われてる…………
僕だって、実力不足なのは分かっているよ?
僕だって、場違いだと思う。
そもそも僕、王都に来る前だって、屋敷でいつも邪険にされていた。
なにしろ僕、ずっと、どこに行っても、いるだけで邪魔だと思われていたらしい。
子爵家に生まれたけれど、屋敷の中ではいつも邪魔者。
魔法や剣技も学んだけど兄弟たちには敵わないし、屋敷では、兄弟に嫉妬して彼らが家を継ぐ邪魔をしようとしているのでは、と囁かれていた。
それが嫌で、そうじゃないってことを示せるように、彼らの護衛になったんだ。
……剣を持って兄弟と話していたら、父上に突き飛ばされたから、無駄だったみたいだけど…………
ダメな僕のことを不憫に思ったのか、兄弟たちが、領地を守る魔法使いとして警備隊に入ることを勧めてくれた。
その時は、ちょっと嬉しかった。
僕でも役に立てることがあるんだって思えた。
それからは、魔物から領地を守るために戦っていた。
そのうちに、僕が魔物退治をできることを知った父上が、仲良くしていた貴族たちに僕を貸し、そこで魔物が増えている地域を守る任務につくように命じられた。
ずっと働かされて、報酬は一族の屋敷に送られたりして、ちょっと後悔し始めていた頃、王都から来ていた貴族の目に止まり、王都で魔物退治の部隊に所属できることになった。
その話が来た時は有頂天!!
それまで僕のすることは大体失敗して、まともな成果が出たことなんて一度もない。
魔法を頑張れば、魔法で兄弟を暗殺する気じゃないかと囁かれ、その魔法を使って護衛についたらますます疑われ、領地を守るために戦っていたら今度は物のように貸し出されて……
だけど……
やっと報われる時が来たんだ!
ずっと頑張ってきたことが初めて認められたんだと、本気でそう思った。
ちょうどその頃、王家の領地で魔物が増えたこともあって、僕は、伯爵のテトルマズ・レトスレッル様が隊長をする部隊に入ることになった。
隊長の伯爵には「魔物退治の途中ででしゃばるな!」とよく怒鳴られた。
後で他の魔法使いたちに聞いた話によれば、一度部隊で、伯爵とは敵対する勢力の貴族の話をしたことで、伯爵に目をつけられているらしい。あれは、特に意味があったわけではなくて、ただの雑談のつもりだったのに!!
それでも、伯爵にはひどく不快だったみたい……
しかも、魔物退治の最中、伯爵がとどめを刺すはずの魔物を僕が倒しちゃって、完全に怒りを買った。
それからは何度か嵌められて、僕は全く身に覚えのないことで、何度か処分された。
そんなこともあって、すっかり僕は疲弊していた。
そんな僕でも、心の支えはあった。
当時、王家は魔物が増えている地域の制圧に力を入れていたから、他の部隊と魔物退治に行くこともよくあった。
その部隊の一つが、侯爵家のヴァンフィルイト・デトリュクフィト様が隊長をしている部隊だ。
彼の部隊で魔物退治中に怪我をした人がいて、僕は、その人の代わりに彼らと戦うことになったんだ。
ヴァンフィルイト隊長は、王都に来る前も、侯爵家の魔法使いとしてよく魔物討伐をしていて、僕が、父上に命じられた貴族のもとで魔物と戦っていた時にも、彼が戦う姿を見ることがあった。
その頃から、多分、僕だけが一方的に彼を知っていたんだろう。
だから、彼の部隊に入れたことは、ひどく嬉しい。
だけど、伯爵様の部隊から来た僕に対する不信感は、かなりのものらしい。僕がしょっちゅう部隊で処分されているからでもあるんだろうけど、それと同時に……
「調子に乗るなよ……王家の奸臣が…………」
そんな憎しみも込めた声も聞こえた。
というのも、僕が所属している伯爵様の部隊は、みんな、王家を支持する貴族ばかりで構成されている。その筆頭に立つ一族の一つが、伯爵家。
対して、この侯爵家の部隊は、かつて王家と対立した、王家に反感を持つ貴族が多い。
そんなところに一人送られた僕は、彼らを見張りに来た王家の間諜なんじゃないか……そんな風に思われているみたいだ。僕は特に間者としての任務なんて受けていないし、ただ、侯爵様の役に立ってこいとしか言われていないし、僕だって、そのつもりだ。
だけど……ずっと対立してきた王家派の貴族から一人送られてきた魔法使いなんて、怪しく見えて当然らしい。
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