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13.隊長のために力を尽くすって、決めたんだ!
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目立たないように! そう決意しながら、愛用の杖の調子を確かめていると。
「おい。デフィトリュウィク」
「…………」
呼ばれて、嫌々振り向く。声だけで、相手が誰なのか分かるから、ますます嫌になる。
振り向くと、僕のすぐそばに立っていたのは、今回王子殿下と共にここを出発する、伯爵のテトルマズ様……
今日は同じ部隊ではないのに、なんで僕のところに来るんだ。
「何か……御用ですか?」
「御用? よく言えたな!! 魔法の道具だ!! お前に渡しに来るように命じているはずだぞ!」
「…………」
なんのことだろうと思ったけど、そういえば、討伐に必要な魔法の道具を準備することは、いつも僕の役目だった。
だけど、今回僕は彼の部隊ではないし、道具を用意する話だって、聞いていない。だから、今はそれは僕の仕事ではないはずなのに。
それなのに……
……そんなことを言いに来たのか?
だけど、それでも準備しておいてよかった。
この男が準備しろと言っているのは、魔物退治の時にないと困るものだし、なんとなく心配だったから、用意しておいたんだ。
僕は、準備していたものを渡した。小さな杖のような形をした魔法の道具だ。準備することが難しいようなものじゃない。魔力を回復するためのもので、魔物退治に行くときは、各自準備するのが普通。なぜそれをわざわざ僕に言いに来たのかすら分からない。
けれど伯爵は苛立ったように「遅い!」と言って、僕が用意したものを奪い取る。そして、僕を睨みつけた。
「なぜっ…………殿下がお前などに……」
「へっ…………?」
「殿下はやけに熱心にお前に侯爵の護衛を頼んでいたじゃないか…………なぜお前が、王子殿下や侯爵に指名されるんだ? お前、まさか、王子殿下から直々に特別な任務を受けたんじゃないだろうな?」
「…………」
なんでそうなるんだ…………意味が分からない。
だいたい、自分は断ったくせに……
依頼を受けたくないけど、僕が王子殿下からの個人的に依頼されたことが気に入らない……ってことかな…………
だけど、これは別に名誉なことじゃない。
ヴァンフィルイト様の部隊からは、王家から送られた間諜扱いされているし、今回の任務は殿下からの個人的な依頼で、王家から頼まれた訳じゃない。王子も依頼したことを公表してはいないから、絶対に後で王家派からの貴族たちから、あいつは侯爵家についたのかと言われる。多分この男だって、じゃあ行きますか? って聞いたら、絶対に行かない。
……じゃあ行く? なんて、僕は絶対に言わないし、僕以外がヴァンフィルイト様の部隊に入るのは嫌だけど…………
……って…………何言ってるんだ…………僕は……
そんなこと、僕が口を出すことじゃないだろ……それなのに…………
森の魔物退治は、ヴァンフィルイト様の部隊と王子殿下の部隊のお陰で完了しているけど、道中にはまだ魔物が出る。それに、魔物以外にも、盗賊、暗殺者なんかが襲いかかってくるかもしれない。
ヴァンフィルイト様は、これから領地を治める領主になる大切な時なんだから、彼のそばには、僕なんかよりもっと信頼できる側近や護衛がいるべきだ。僕では、力も地位も不足している。失敗したら、王家の威信に関わる…………
こんな風に、不安なことはいくつもある。まだ、僕でいいのかって、ずっと自問自答している。
だけど…………僕だって、行くって決めたんだ!!
ヴァンフィルイト隊長の部隊の人たちだって、僕がいるなんて、不安だろうし、不満もあるだろう。
だって隊長の部隊の人は、みんな、隊長のことを慕っていた。隊長が侯爵になった今だって、ずっとそうに違いない。
それでも、僕を護衛として迎えるなんて…………よほど、道中は厳しい戦いが続くと予想されているんだろう。隊長の部隊はみんな、長い間魔物に支配されていた森で激しい戦いを終えたばかりなのに。
これから僕たちは、その森を通って、侯爵家の領地となった場所に向かう。安全な旅とはいかないだろう。
僕が、ヴァンフィルイト様を守るんだっ……!
決意を新たにしていたら、すっかり伯爵様のことなんて、頭から抜け落ちていた。伯爵が呼んでも気づかなかったらしい。
「おいっ……聞いているのか?」
「え…………?」
まだいたのか……今日は違う部隊なのに、まだ何か用か?
僕が役立たずって言うなら、僕にかまわないでほしい。
「おい。デフィトリュウィク」
「…………」
呼ばれて、嫌々振り向く。声だけで、相手が誰なのか分かるから、ますます嫌になる。
振り向くと、僕のすぐそばに立っていたのは、今回王子殿下と共にここを出発する、伯爵のテトルマズ様……
今日は同じ部隊ではないのに、なんで僕のところに来るんだ。
「何か……御用ですか?」
「御用? よく言えたな!! 魔法の道具だ!! お前に渡しに来るように命じているはずだぞ!」
「…………」
なんのことだろうと思ったけど、そういえば、討伐に必要な魔法の道具を準備することは、いつも僕の役目だった。
だけど、今回僕は彼の部隊ではないし、道具を用意する話だって、聞いていない。だから、今はそれは僕の仕事ではないはずなのに。
それなのに……
……そんなことを言いに来たのか?
だけど、それでも準備しておいてよかった。
この男が準備しろと言っているのは、魔物退治の時にないと困るものだし、なんとなく心配だったから、用意しておいたんだ。
僕は、準備していたものを渡した。小さな杖のような形をした魔法の道具だ。準備することが難しいようなものじゃない。魔力を回復するためのもので、魔物退治に行くときは、各自準備するのが普通。なぜそれをわざわざ僕に言いに来たのかすら分からない。
けれど伯爵は苛立ったように「遅い!」と言って、僕が用意したものを奪い取る。そして、僕を睨みつけた。
「なぜっ…………殿下がお前などに……」
「へっ…………?」
「殿下はやけに熱心にお前に侯爵の護衛を頼んでいたじゃないか…………なぜお前が、王子殿下や侯爵に指名されるんだ? お前、まさか、王子殿下から直々に特別な任務を受けたんじゃないだろうな?」
「…………」
なんでそうなるんだ…………意味が分からない。
だいたい、自分は断ったくせに……
依頼を受けたくないけど、僕が王子殿下からの個人的に依頼されたことが気に入らない……ってことかな…………
だけど、これは別に名誉なことじゃない。
ヴァンフィルイト様の部隊からは、王家から送られた間諜扱いされているし、今回の任務は殿下からの個人的な依頼で、王家から頼まれた訳じゃない。王子も依頼したことを公表してはいないから、絶対に後で王家派からの貴族たちから、あいつは侯爵家についたのかと言われる。多分この男だって、じゃあ行きますか? って聞いたら、絶対に行かない。
……じゃあ行く? なんて、僕は絶対に言わないし、僕以外がヴァンフィルイト様の部隊に入るのは嫌だけど…………
……って…………何言ってるんだ…………僕は……
そんなこと、僕が口を出すことじゃないだろ……それなのに…………
森の魔物退治は、ヴァンフィルイト様の部隊と王子殿下の部隊のお陰で完了しているけど、道中にはまだ魔物が出る。それに、魔物以外にも、盗賊、暗殺者なんかが襲いかかってくるかもしれない。
ヴァンフィルイト様は、これから領地を治める領主になる大切な時なんだから、彼のそばには、僕なんかよりもっと信頼できる側近や護衛がいるべきだ。僕では、力も地位も不足している。失敗したら、王家の威信に関わる…………
こんな風に、不安なことはいくつもある。まだ、僕でいいのかって、ずっと自問自答している。
だけど…………僕だって、行くって決めたんだ!!
ヴァンフィルイト隊長の部隊の人たちだって、僕がいるなんて、不安だろうし、不満もあるだろう。
だって隊長の部隊の人は、みんな、隊長のことを慕っていた。隊長が侯爵になった今だって、ずっとそうに違いない。
それでも、僕を護衛として迎えるなんて…………よほど、道中は厳しい戦いが続くと予想されているんだろう。隊長の部隊はみんな、長い間魔物に支配されていた森で激しい戦いを終えたばかりなのに。
これから僕たちは、その森を通って、侯爵家の領地となった場所に向かう。安全な旅とはいかないだろう。
僕が、ヴァンフィルイト様を守るんだっ……!
決意を新たにしていたら、すっかり伯爵様のことなんて、頭から抜け落ちていた。伯爵が呼んでも気づかなかったらしい。
「おいっ……聞いているのか?」
「え…………?」
まだいたのか……今日は違う部隊なのに、まだ何か用か?
僕が役立たずって言うなら、僕にかまわないでほしい。
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