冷遇された僕、思いが募るばかりなので遠ざかったら嫉妬心を見せつけた隊長が襲いかかってくる。僕じゃなくても良い、邪魔するなって言ってたのに……

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
13 / 85

13.隊長のために力を尽くすって、決めたんだ!

しおりを挟む
 目立たないように! そう決意しながら、愛用の杖の調子を確かめていると。

「おい。デフィトリュウィク」
「…………」

 呼ばれて、嫌々振り向く。声だけで、相手が誰なのか分かるから、ますます嫌になる。

 振り向くと、僕のすぐそばに立っていたのは、今回王子殿下と共にここを出発する、伯爵のテトルマズ様……

 今日は同じ部隊ではないのに、なんで僕のところに来るんだ。

「何か……御用ですか?」
「御用? よく言えたな!! 魔法の道具だ!! お前に渡しに来るように命じているはずだぞ!」
「…………」

 なんのことだろうと思ったけど、そういえば、討伐に必要な魔法の道具を準備することは、いつも僕の役目だった。
 だけど、今回僕は彼の部隊ではないし、道具を用意する話だって、聞いていない。だから、今はそれは僕の仕事ではないはずなのに。

 それなのに……

 ……そんなことを言いに来たのか?

 だけど、それでも準備しておいてよかった。

 この男が準備しろと言っているのは、魔物退治の時にないと困るものだし、なんとなく心配だったから、用意しておいたんだ。

 僕は、準備していたものを渡した。小さな杖のような形をした魔法の道具だ。準備することが難しいようなものじゃない。魔力を回復するためのもので、魔物退治に行くときは、各自準備するのが普通。なぜそれをわざわざ僕に言いに来たのかすら分からない。

 けれど伯爵は苛立ったように「遅い!」と言って、僕が用意したものを奪い取る。そして、僕を睨みつけた。

「なぜっ…………殿下がお前などに……」
「へっ…………?」
「殿下はやけに熱心にお前に侯爵の護衛を頼んでいたじゃないか…………なぜお前が、王子殿下や侯爵に指名されるんだ? お前、まさか、王子殿下から直々に特別な任務を受けたんじゃないだろうな?」
「…………」

 なんでそうなるんだ…………意味が分からない。

 だいたい、自分は断ったくせに……

 依頼を受けたくないけど、僕が王子殿下からの個人的に依頼されたことが気に入らない……ってことかな…………

 だけど、これは別に名誉なことじゃない。

 ヴァンフィルイト様の部隊からは、王家から送られた間諜扱いされているし、今回の任務は殿下からの個人的な依頼で、王家から頼まれた訳じゃない。王子も依頼したことを公表してはいないから、絶対に後で王家派からの貴族たちから、あいつは侯爵家についたのかと言われる。多分この男だって、じゃあ行きますか? って聞いたら、絶対に行かない。

 ……じゃあ行く? なんて、僕は絶対に言わないし、僕以外がヴァンフィルイト様の部隊に入るのは嫌だけど…………

 ……って…………何言ってるんだ…………僕は……

 そんなこと、僕が口を出すことじゃないだろ……それなのに…………

 森の魔物退治は、ヴァンフィルイト様の部隊と王子殿下の部隊のお陰で完了しているけど、道中にはまだ魔物が出る。それに、魔物以外にも、盗賊、暗殺者なんかが襲いかかってくるかもしれない。

 ヴァンフィルイト様は、これから領地を治める領主になる大切な時なんだから、彼のそばには、僕なんかよりもっと信頼できる側近や護衛がいるべきだ。僕では、力も地位も不足している。失敗したら、王家の威信に関わる…………

 こんな風に、不安なことはいくつもある。まだ、僕でいいのかって、ずっと自問自答している。

 だけど…………僕だって、行くって決めたんだ!!

 ヴァンフィルイト隊長の部隊の人たちだって、僕がいるなんて、不安だろうし、不満もあるだろう。
 だって隊長の部隊の人は、みんな、隊長のことを慕っていた。隊長が侯爵になった今だって、ずっとそうに違いない。

 それでも、僕を護衛として迎えるなんて…………よほど、道中は厳しい戦いが続くと予想されているんだろう。隊長の部隊はみんな、長い間魔物に支配されていた森で激しい戦いを終えたばかりなのに。

 これから僕たちは、その森を通って、侯爵家の領地となった場所に向かう。安全な旅とはいかないだろう。

 僕が、ヴァンフィルイト様を守るんだっ……!

 決意を新たにしていたら、すっかり伯爵様のことなんて、頭から抜け落ちていた。伯爵が呼んでも気づかなかったらしい。

「おいっ……聞いているのか?」
「え…………?」

 まだいたのか……今日は違う部隊なのに、まだ何か用か?

 僕が役立たずって言うなら、僕にかまわないでほしい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。

完結·囚われた騎士隊長と訳あり部下の執愛と復讐の物語

BL
「月が綺麗ですね。あぁ、失礼。オレが目を潰したから見えませんね」  から始まる、国に利用され続ける隊長を自分のものだけにしようとした男の欲望と復讐の話  という不穏なあらすじですが最後はハッピーエンドの、隊長×部下の年下敬語攻めBL  ※完結まで予約投稿済・☆は濡れ場描写あり  ※Nolaノベル・ムーンライトノベルにも投稿中

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

処理中です...