冷遇された僕、思いが募るばかりなので遠ざかったら嫉妬心を見せつけた隊長が襲いかかってくる。僕じゃなくても良い、邪魔するなって言ってたのに……

迷路を跳ぶ狐

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62*ヴァンフィルイト視点*あれは俺のものだ

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 俺は、隣にいるブレロブルを睨みつけた。

「貴様のような男がそばにいて、よく王家は何も言わないな!? こんなクズの好きにさせているのは誰だ!」
「王家も公爵家も俺の言うことを聞いてくれるから。殿下だって、早く俺のところに来てもらわないと困るのに…………」
「ふん。絶対にないな」
「そんなことはない。俺は、何を使ってでも、あいつを手に入れるから」

 そいつが懐から取り出した小瓶には、見覚えがある。媚薬だ。なるほど、図々しいこいつの一族らしい手だ。

「しまえ。そんなもの。純粋なデフィトリュウィクの目に入ったらどうする。今度こそ、貴様を殺す」
「本当は欲しいんじゃない? 無意識に束縛する君にも分けてあげようか?」
「いらん。そんなもの。俺はいざとなれば媚薬の魔法が使えるからいいんだ」
「それでよく俺に説教したね!??」

 怒鳴りあっていると、不覚にも、その男との話に夢中になってしまっていたらしい。気づかないうちに、部屋に一人の男が飛び込んでくる。伯爵のテトルマズだ。

「ひっ…………! な、なんでっ…………ぶ、ブレロブル様っ……! なぜこんなことを…………そ、それはなんですか!?」

 そいつは、ブレロブルが持っているものを指差す。

 馬鹿め……

 なぜ部屋に入ってきてすぐにそれに気づくんだ。利用された上に、余計なものまで見るな。

「おい……」

 俺が声をかけると、そいつは顔を青くしていた。

「ひっ……!!」
「そう怯えるな……俺は、貴様には感謝している」
「か、感謝している? 感謝!? か、感謝ですか!? な、なんで…………」
「貴様をここで殺すチャンスをくれただろう? こんなことでもなければ、貴様を殴れなかった。ああ、よかった」
「…………そ、そんな……こ、侯爵様……お、落ち着いて……」
「落ち着く? 今更? なぜだ?」

 俺は、その男に近づいた。

「ひっ………………」
「そんなに恐れた顔をしなくても、俺はずっと冷静だ。なんのために、お前をこんなところまで連れてきたと思っている?」

 これ以上気に入らない奴はいないような男だった。
 何しろずっとこの男はデフィトリュウィクの頭の中にいる。おそらく、恐怖や憎悪と共に、警戒しなくてはいけない対象として、あいつの頭に食い込んでいるんだろう。俺がどれだけ呼んでも、あいつはこの男を見ている時がある。許せるはずがない。

 あれのすべては、俺のものになる。

 他のものは、必要ない。

 それなのに、あいつにずっと警戒されているだと? ふざけるな……あいつの意識が俺以外に向くのは、我慢ならない。

「……なぜ…………お前がっ…………」
「ま、ま、待ってくださいっ…………侯爵様! こ、これはっ……ち、違うっっ!! 違うんですっ…………」
「黙れ……あれはもう、俺のものだ……お前には、二度と返さない…………」







 少しだけ、声をかけられた気がした。どうやら怒りのままに行動したせいで、意識が目の前の男を壊すことばかりに夢中になっていたらしい。

 遠くから、こちらに近づいてくる足音が聞こえる。ブレロブルがそれを聞いて、俺に向けて声をかけたらしい。

「誰か来る……随分早かったな…………殿下と、君の部隊じゃない?」
「なんだとっ…………!」

 くそっ……さすがはデフィトリュウィクだ。こんなに簡単に、ここを見つけてしまうなんて。

 ブレロブルが持っていた媚薬はすでにない。魔法で消したのだろう。ずるいぞ。自分だけ。俺が胸ぐらを掴んでいる、顔から血を流す男は、隠しようがないのに。

 しかし、あいつが来ると思ったら、微かに動揺してしまったらしい。俺が捕まえていた伯爵は、俺の手から魔法で逃れ、足音が聞こえるドアの方に近づいて行こうとする。

「だ、誰が来るっ…………」

 ふざけるな。あいつに近づかれてたまるか。

「おいっ…………! 待てっっ!!」

 俺がそいつの肩を掴もうとすると、そいつはひどく暴れて抵抗していた。

「離せっっ…………! 離せっっ……! お前たちっっ!!」

 叫んで、その男は周りで倒れていた連中に向かって怒鳴り散らす。すると、その男たちの体がかすかに動いた。

 ブレロブルの魔法が解けたか……とはいえ、全員まだ力が戻っていない。押さえ込むくらいわけない。

 だが、それより先に、部屋のドアをデフィトリュウィクが開いた。

 俺と伯爵が掴み合いをしているのを見て、彼が叫ぶ。

「隊長っっ……!!」

 焦っているのか、彼はすぐに俺を見つけて驚いていた。

 やはり、可愛い。

 俺の部隊も、王子もいる。全員、無事だ。

「デフィトリュウィク……お前たちも。無事でよかった」
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