16 / 25
兎と犬の関係は?
第十六話
しおりを挟む
む、やる気か?
「ふふ、俺を口説いても意味ないですよ。でも―――嬉しいです、ありがとうございます。」
前髪を流して顔が見えるようにして、相手の手をとって頬に当てる。それからうつむき加減で犬飼を見上げてそう言った。
「ッ!……お前、わざとだな?」
犬飼が顔をほんのり赤らめて口許をひくつかせる。よかった、メガネをかけたままでもそこそこ効果はあるようだ。
「ふふふ、どうですかね?」
「はあ…。まあいい、学園について説明しておきたいことは多々あるけど、今日はもうもどれ。狐塚が待ってんだろ。」
まだ耳がうっすら赤いままの犬飼が顔を片手でおおってそう言った。あからさまな照れ隠しだが結構時間がたっているので本当にそろそろ帰った方がいいだろう。
「そうですね。長居して怪しまれても困りますし、そろそろ戻ります。」
「おう。あいつも聞けば色々教えてくれるだろうよ。…いや、お前なら聞かなくても忠告されるかもな。まあ、分からんこととか協力できることがあったら言え。俺はここに残るから、帰るなら道は…」
「道は大丈夫です。では、失礼しますね。」
「…おう。」
犬飼がひらっと片手を上げて俺を見送る。数学準備室の扉をガラッと開けて念のため周りを伺って誰もいないのを確認してから外に出た。教室までの道は同じフロアではあるもののかなり距離があるが、もちろん頭に入っている。
今日犬飼と話しておけたのは大きい。犬飼が『こちら側』で、担任から協力が得られるとわかっていると、かなり大胆に動ける。それを考慮した上でプランを組まねば。それに、犬飼は個人的にかなり好印象の人物だった。ダウナーな感じではあるが言動は誠実そうだったし、嘘をついているようにも見えなかった。やはり初日に犬飼という協力者の存在を知れたのはでかいな。
さて、まだ俺の入学初日は終わらない。狐塚に怪しまれないようになるべく急いで戻らないとな。俺は今日の成果に満足しながら早歩きでもと来た道を戻った。
《犬飼side》
「あ”~、くそ、してやられた。」
あの人が学園内の有力な家の弱味を握るために送り込んだスパイだからやり手なのは分かっていたが…。元からスパイのような仕事をしたわけでもなく、拾い物だと言っていたからどんなもんかと思ったら、小柄で見た目はパッとしないやつだったから資料で見たときはどういうことかと思っていたが。
「まさかメガネ外して髪上げたらあんな美人とか、マジで漫画かよ…」
思わず呟いてしまう。素顔の白兎は、むしろよくメガネと前髪だけでカムフラージュできてたな?というほどの美少年だった。この学園によくいるきゅるんとした、可愛いを全面に押し出した感じではなく、目はぱちりと大きいがスッと通った鼻筋や小さな口が上品に思われる顔つきだった。あれならスパイとして送り込まれたのも納得だ。顔つきもそうだが、さっき白兎にしてやられたと感じたときのあれ。可愛らしいのに色香漂うしぐさ、表情。あれはまさに、傾国の美女といった様相だった。いや、女じゃないんだけど。
「はあ…。あれはしてやられた。」
15、16の色気じゃないだろ…。己の魅せ方も男に気に入られる態度も熟知したような風だった。頭も切れるようだし、隙があるようにみせてその実警戒心を解くことはない。少し自分の顔面への自覚が足りない気はしたが。まあ、だからこそ適任ではあるか。
「あの人もまだ子供になんつーことさせるんだと思ってたが…あいつならなんとかなるかもな。」
人のいなくなった数学準備室で、犬飼はこれから一年間共犯者となる者の今後に思いを馳せ、口許に笑みを浮かべるのだった。
「ふふ、俺を口説いても意味ないですよ。でも―――嬉しいです、ありがとうございます。」
前髪を流して顔が見えるようにして、相手の手をとって頬に当てる。それからうつむき加減で犬飼を見上げてそう言った。
「ッ!……お前、わざとだな?」
犬飼が顔をほんのり赤らめて口許をひくつかせる。よかった、メガネをかけたままでもそこそこ効果はあるようだ。
「ふふふ、どうですかね?」
「はあ…。まあいい、学園について説明しておきたいことは多々あるけど、今日はもうもどれ。狐塚が待ってんだろ。」
まだ耳がうっすら赤いままの犬飼が顔を片手でおおってそう言った。あからさまな照れ隠しだが結構時間がたっているので本当にそろそろ帰った方がいいだろう。
「そうですね。長居して怪しまれても困りますし、そろそろ戻ります。」
「おう。あいつも聞けば色々教えてくれるだろうよ。…いや、お前なら聞かなくても忠告されるかもな。まあ、分からんこととか協力できることがあったら言え。俺はここに残るから、帰るなら道は…」
「道は大丈夫です。では、失礼しますね。」
「…おう。」
犬飼がひらっと片手を上げて俺を見送る。数学準備室の扉をガラッと開けて念のため周りを伺って誰もいないのを確認してから外に出た。教室までの道は同じフロアではあるもののかなり距離があるが、もちろん頭に入っている。
今日犬飼と話しておけたのは大きい。犬飼が『こちら側』で、担任から協力が得られるとわかっていると、かなり大胆に動ける。それを考慮した上でプランを組まねば。それに、犬飼は個人的にかなり好印象の人物だった。ダウナーな感じではあるが言動は誠実そうだったし、嘘をついているようにも見えなかった。やはり初日に犬飼という協力者の存在を知れたのはでかいな。
さて、まだ俺の入学初日は終わらない。狐塚に怪しまれないようになるべく急いで戻らないとな。俺は今日の成果に満足しながら早歩きでもと来た道を戻った。
《犬飼side》
「あ”~、くそ、してやられた。」
あの人が学園内の有力な家の弱味を握るために送り込んだスパイだからやり手なのは分かっていたが…。元からスパイのような仕事をしたわけでもなく、拾い物だと言っていたからどんなもんかと思ったら、小柄で見た目はパッとしないやつだったから資料で見たときはどういうことかと思っていたが。
「まさかメガネ外して髪上げたらあんな美人とか、マジで漫画かよ…」
思わず呟いてしまう。素顔の白兎は、むしろよくメガネと前髪だけでカムフラージュできてたな?というほどの美少年だった。この学園によくいるきゅるんとした、可愛いを全面に押し出した感じではなく、目はぱちりと大きいがスッと通った鼻筋や小さな口が上品に思われる顔つきだった。あれならスパイとして送り込まれたのも納得だ。顔つきもそうだが、さっき白兎にしてやられたと感じたときのあれ。可愛らしいのに色香漂うしぐさ、表情。あれはまさに、傾国の美女といった様相だった。いや、女じゃないんだけど。
「はあ…。あれはしてやられた。」
15、16の色気じゃないだろ…。己の魅せ方も男に気に入られる態度も熟知したような風だった。頭も切れるようだし、隙があるようにみせてその実警戒心を解くことはない。少し自分の顔面への自覚が足りない気はしたが。まあ、だからこそ適任ではあるか。
「あの人もまだ子供になんつーことさせるんだと思ってたが…あいつならなんとかなるかもな。」
人のいなくなった数学準備室で、犬飼はこれから一年間共犯者となる者の今後に思いを馳せ、口許に笑みを浮かべるのだった。
16
あなたにおすすめの小説
病んでる愛はゲームの世界で充分です!
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。
幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。
席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。
田山の明日はどっちだ!!
ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。
BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。
11/21
本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。
僕がサポーターになった理由
弥生 桜香
BL
この世界には能力というものが存在する
生きている人全員に何らかの力がある
「光」「闇」「火」「水」「地」「木」「風」「雷」「氷」などの能力(ちから)
でも、そんな能力にあふれる世界なのに僕ーー空野紫織(そらの しおり)は無属性だった
だけど、僕には支えがあった
そして、その支えによって、僕は彼を支えるサポーターを目指す
僕は弱い
弱いからこそ、ある力だけを駆使して僕は彼を支えたい
だから、頑張ろうと思う……
って、えっ?何でこんな事になる訳????
ちょっと、どういう事っ!
嘘だろうっ!
幕開けは高校生入学か幼き頃か
それとも前世か
僕自身も知らない、思いもよらない物語が始まった
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
ひみつのモデルくん
おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。
高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎
主人公総受け、総愛され予定です。
思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。
後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる