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第6話:芦田幸太は目を覚ます
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どこからか、電話の音が聞こえてくる。
でもこれは、僕のスマホの着信音ではない。
それにしても大きな音だ。
頭に響いてガンガンする。
いや違う。これは二日酔いか。
僕は頭を抑えながら、上体を起こした。
頭痛を我慢しながら周りを見ると、乱雑に積み重ねられた段ボールが目に入った。
引っ越し業者が来たみたいだ。一体いつ?
ダメだ、あの僕の歓迎会という名の地獄の記憶が、途中から全然ない。
お酒を飲んで記憶を無くしたのなんて、大学生時代を含めて2回目だ。
初めてお酒を飲んだ日。
大学の先輩達に進められるままにお酒を飲んだ僕は、記憶を無くした。
普段、あんまり喋らない僕が饒舌になったらしい。
饒舌どころか、先輩達に数々の暴言を吐いて、そして先輩の部屋で違うものも吐いて。
先輩達はみんな笑って許してくれたけど、何を言ったかも分からないままに頭を下げて回ったあの日から、僕はお酒は少ししか飲まないと決めていたのに。
のに~!!
嫌な記憶を思い出して頭を抱えていた僕がふと窓に目をやると、カーテンの掛けられていない窓の向こうからは、街灯の光が差し込んでいた。
どうやら今は、夜らしい。
いつの間にか敷かれていた布団から起き上がった僕は、改めて自分の周りを見渡してみる。
組み立て式のベッドが、バラバラの状態で置かれている。
その横に、開け放たれた布団圧縮袋。
誰かが、ここから布団を出してくれたんだ。
それにしても電話の音、全然止まらないな。
ふと音のする方に目を向けると、壁に備え付けられていた電話機が目に入った。
あ、これが鳴ってたんだ。
ぼ~っとしながら僕は、その電話機に手を伸ばした。
「も、もしもし」
「やっとお目覚めかい!」
津屋さんの大きな声が、僕の頭に響き渡った。
「す、すみません」
僕は、カラカラになった喉から必死で声を絞り出した。
「とりあえず、リビングに出てきてちょうだい」
そう言って、津屋さんはガチャリと電話を切った。
リビングって、共有の、だよね。
っていうかこの電話、もしかして内線電話みたいなものなのかな?
まだぼ~っとする頭でそんな事を考えながら、僕は共有のリビングへと続く扉を開いた。
「やっと来たね。ほら、片付けを手伝ってちょうだい」
案の定というか、津屋さんはそこにいた。
ダイニングテーブルの上のお皿を重ねながら。
どうやら、あの酒盛りの片付けをやっているみたいだ。
なるほど。『管理人補助兼雑用係』の雑用って、こういうことか。
っていうか、さっきのって僕の歓迎会なんじゃなかったの?
僕の歓迎会の片付けを僕がするの!?
そう思いながらも、僕はダイニングテーブルへと駆け寄ってお皿に手を伸ばす。
「そっちはいいから、ゴミの方を頼むよ。ちゃんと分別するんだよ?」
津屋さんの言葉に、僕は頷きながら燃やせるゴミを1つの袋にまとめ始めた。
良かった、事前にゴミの分別を調べてて。
ゴミの分別って、地域によって違ったりするじゃん?
大学時代に分別は苦労したから、今回は事前に調べてたんだよね。
僕はゴミを片付けながら、口を開く。
「あの、先程はすみませんでした―――」
途中で眠ってしまって、と続けようとした僕の言葉を、ニヤッと笑った津屋さんが遮った。
「幸太、飲むと性格変わるんだねぇ。あたしらへの数々の暴言に穂照(ほてる)へのセクハラ。みんなあんたを―――」
あー、なんか僕、色々とやらかしたみたいだ。
皆さん、怒ってらっしゃるんだ。
「気に入ってたよ」
気に入られてたよっ!!
っていうかさっきの言葉・・・
「えっと、穂照さんっていうのは?」
「ん?あぁ、愛島のことだよ。あんた、穂照の胸に思いっきりダイブしてたよ?」
いやいや、さすがにそんなことは・・・・・・・・
やってた!僕完全にやっちゃってた!
顔が青くなるのを感じながら僕は、ゴミを集めるのも忘れて津屋さんに頭を下げる。
「すみませんでしたっ!」
「いや、あたしに謝られてもねぇ。あぁでも、欲情した穂照をあんたから引き離すのには苦労したから、そこだけはその感謝を受け取っておこうかね」
そう言って盛大に、津屋さんは笑っていた。
っていうか、欲情って・・・
僕が顔を真っ赤にして立っていると、
「ほら、そんなとこに棒立ちしてないで、片付け片付け!
まさか、違う棒まで立たせてるんじゃないだろうねぇ?」
「ちょ、な、何言ってるんですか!」
いきなり下ネタを言い出す津屋さんにちょっと強めにつっこみながらも僕は、そのあと黙々とごみを片付けることに専念した。
「よっし、終わったね。幸太もおつかれさん!」
そう言って津屋さんは、缶ビールを差し出してきた。
「いやまたビール!?」
あ、ついつっこんじゃった。
「あっはっは!まだ酒が抜けてないのかい?あんたはそのくらい元気な方がちょうど良いよ!
それと、まだ晩御飯食べてないだろう?余りものだけど、これで良ければ食べとくれよ。」
そう言って津屋さんが差し出してくれたおにぎりを受け取って、僕は部屋へ戻ろうとすると。
「幸太、仕事始まるのはまだ先なんだろう?」
「あ、はい。4月からなのでまだ2週間はあります」
「じゃぁ、明日から少し、あたしの手伝いをやってもらうからそのつもりでね!」
「は、はい!」
僕の返事を聞いた津屋さんは、そのままリビングをあとにした。
「ふぅ」
僕は、もらった缶ビールとおにぎりを手に、段ボールだらけの部屋へと戻った。
・・・まずは、片付けないとな。
その時、またしても部屋の電話が鳴り響いた。
はぁ。お腹すいたな。今度は何なんですかぁ・・・
でもこれは、僕のスマホの着信音ではない。
それにしても大きな音だ。
頭に響いてガンガンする。
いや違う。これは二日酔いか。
僕は頭を抑えながら、上体を起こした。
頭痛を我慢しながら周りを見ると、乱雑に積み重ねられた段ボールが目に入った。
引っ越し業者が来たみたいだ。一体いつ?
ダメだ、あの僕の歓迎会という名の地獄の記憶が、途中から全然ない。
お酒を飲んで記憶を無くしたのなんて、大学生時代を含めて2回目だ。
初めてお酒を飲んだ日。
大学の先輩達に進められるままにお酒を飲んだ僕は、記憶を無くした。
普段、あんまり喋らない僕が饒舌になったらしい。
饒舌どころか、先輩達に数々の暴言を吐いて、そして先輩の部屋で違うものも吐いて。
先輩達はみんな笑って許してくれたけど、何を言ったかも分からないままに頭を下げて回ったあの日から、僕はお酒は少ししか飲まないと決めていたのに。
のに~!!
嫌な記憶を思い出して頭を抱えていた僕がふと窓に目をやると、カーテンの掛けられていない窓の向こうからは、街灯の光が差し込んでいた。
どうやら今は、夜らしい。
いつの間にか敷かれていた布団から起き上がった僕は、改めて自分の周りを見渡してみる。
組み立て式のベッドが、バラバラの状態で置かれている。
その横に、開け放たれた布団圧縮袋。
誰かが、ここから布団を出してくれたんだ。
それにしても電話の音、全然止まらないな。
ふと音のする方に目を向けると、壁に備え付けられていた電話機が目に入った。
あ、これが鳴ってたんだ。
ぼ~っとしながら僕は、その電話機に手を伸ばした。
「も、もしもし」
「やっとお目覚めかい!」
津屋さんの大きな声が、僕の頭に響き渡った。
「す、すみません」
僕は、カラカラになった喉から必死で声を絞り出した。
「とりあえず、リビングに出てきてちょうだい」
そう言って、津屋さんはガチャリと電話を切った。
リビングって、共有の、だよね。
っていうかこの電話、もしかして内線電話みたいなものなのかな?
まだぼ~っとする頭でそんな事を考えながら、僕は共有のリビングへと続く扉を開いた。
「やっと来たね。ほら、片付けを手伝ってちょうだい」
案の定というか、津屋さんはそこにいた。
ダイニングテーブルの上のお皿を重ねながら。
どうやら、あの酒盛りの片付けをやっているみたいだ。
なるほど。『管理人補助兼雑用係』の雑用って、こういうことか。
っていうか、さっきのって僕の歓迎会なんじゃなかったの?
僕の歓迎会の片付けを僕がするの!?
そう思いながらも、僕はダイニングテーブルへと駆け寄ってお皿に手を伸ばす。
「そっちはいいから、ゴミの方を頼むよ。ちゃんと分別するんだよ?」
津屋さんの言葉に、僕は頷きながら燃やせるゴミを1つの袋にまとめ始めた。
良かった、事前にゴミの分別を調べてて。
ゴミの分別って、地域によって違ったりするじゃん?
大学時代に分別は苦労したから、今回は事前に調べてたんだよね。
僕はゴミを片付けながら、口を開く。
「あの、先程はすみませんでした―――」
途中で眠ってしまって、と続けようとした僕の言葉を、ニヤッと笑った津屋さんが遮った。
「幸太、飲むと性格変わるんだねぇ。あたしらへの数々の暴言に穂照(ほてる)へのセクハラ。みんなあんたを―――」
あー、なんか僕、色々とやらかしたみたいだ。
皆さん、怒ってらっしゃるんだ。
「気に入ってたよ」
気に入られてたよっ!!
っていうかさっきの言葉・・・
「えっと、穂照さんっていうのは?」
「ん?あぁ、愛島のことだよ。あんた、穂照の胸に思いっきりダイブしてたよ?」
いやいや、さすがにそんなことは・・・・・・・・
やってた!僕完全にやっちゃってた!
顔が青くなるのを感じながら僕は、ゴミを集めるのも忘れて津屋さんに頭を下げる。
「すみませんでしたっ!」
「いや、あたしに謝られてもねぇ。あぁでも、欲情した穂照をあんたから引き離すのには苦労したから、そこだけはその感謝を受け取っておこうかね」
そう言って盛大に、津屋さんは笑っていた。
っていうか、欲情って・・・
僕が顔を真っ赤にして立っていると、
「ほら、そんなとこに棒立ちしてないで、片付け片付け!
まさか、違う棒まで立たせてるんじゃないだろうねぇ?」
「ちょ、な、何言ってるんですか!」
いきなり下ネタを言い出す津屋さんにちょっと強めにつっこみながらも僕は、そのあと黙々とごみを片付けることに専念した。
「よっし、終わったね。幸太もおつかれさん!」
そう言って津屋さんは、缶ビールを差し出してきた。
「いやまたビール!?」
あ、ついつっこんじゃった。
「あっはっは!まだ酒が抜けてないのかい?あんたはそのくらい元気な方がちょうど良いよ!
それと、まだ晩御飯食べてないだろう?余りものだけど、これで良ければ食べとくれよ。」
そう言って津屋さんが差し出してくれたおにぎりを受け取って、僕は部屋へ戻ろうとすると。
「幸太、仕事始まるのはまだ先なんだろう?」
「あ、はい。4月からなのでまだ2週間はあります」
「じゃぁ、明日から少し、あたしの手伝いをやってもらうからそのつもりでね!」
「は、はい!」
僕の返事を聞いた津屋さんは、そのままリビングをあとにした。
「ふぅ」
僕は、もらった缶ビールとおにぎりを手に、段ボールだらけの部屋へと戻った。
・・・まずは、片付けないとな。
その時、またしても部屋の電話が鳴り響いた。
はぁ。お腹すいたな。今度は何なんですかぁ・・・
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