不自由で自由な僕たちの世界。

広崎之斗

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二章:共助/共犯

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 話をしよう、と膝をつき合わせたところで、あれこれと出てくるものではない。特に今回の場合、ユーマはどう切り出すか悩んでいた。否、悩む必要はないのだが。
「何か分かったの?」

 ベッドはそもそも一つしかない。ユーマはソファでも椅子でもどこでもいいと言ったのだが、ハチが譲らず、二人揃ってベッドで寝るということになった。だがせめてもの救いはベッドが大きいことである。
 腰を下ろしたユーマに続いてハチは腰を下ろして口を開いた。
「あの男はフリーランスだった。ただどこから雇われてるのか通信情報は消去されていたらしい。おそらく、こうなるとキュリアだろうけど……まぁ、そこは復元出来るだろうって言ってたから、あと少しまてば多分連絡はくる」
「連絡手段は?」
「……貰った」
 そう言ってユーマはスマートフォンを取り出してハチに見せた。あまり手の内は見せたくないと思っていたが、こればかりは仕方がないかと諦める。
「大丈夫なの?」
「大丈夫。アイツ、腕は立つ。ある意味唯一俺が信頼出来る組織外の人間だよ」
「へぇ。それで、他には?」
「他には……」

 言い淀んでユーマは少しだけ迷った。だが迷ったところで聞かないという選択肢はない。むしろ早いところ話を聞いてしまったほうがロスからの連絡がきたとき、話の展開も早いかもしれない。
 そう思ってユーマはハチを見て言った。
「お前は……一体何者なんだ?」
「何者って、どういうこと?」
 笑いながらハチは首を傾げる。
「調べてくれた奴はお前の事を怪しんだ。そりゃそうだろ、俺だって今も完全に信じられるわけじゃない」
「まぁ、お互いにそうだろうねぇ」
「そう。でもそれ以上にアイツはお前の事を怪しんでて……それで調べたんだよ、お前のことを」
 そう伝えるとハチは少し眉を上げて楽しそうにまた笑う。
「へぇ。それで、どこまで分かったの?」
「お前が、組織の……ハデウスの人間だったっていうところ。だけどそれ以上は無理だった。情報が全部消されてる。お前がフリーランスっていうこと意外、その前が基本的には消されてる」
「そう。だからその人は確かに腕は立つんだろうね」
 そう言ってハチはわざとらしく拍手を三回した。乾いた音が室内に響くと居心地が悪い。さっきまで空を見上げていた時の人物とは別人のような雰囲気に気圧されそうになる。どうしてか本能的に緊張し、たじろいでしまう。

「そこまで確かに正しいよ。凄いね、よく見つけたよ。その情報に行き着けなかったらどうしようかと思ったけどね」
「行き着いた方がいいってことかよ」
「もちろん。別に対したことはないし、物語としても凡庸な出来だけど。でも俺達の関係は今に始まったことじゃなくて、一度交わってたってことは知っている方が何かと便利かもしれない。別にそれをボスが知ってて俺に仕向けてきたのかは分からないし、だったとしても枷にはならないけどね」
「枷? お前は何を知ってるってんだよ」
「組織の殺し屋っていうのはさぁ、基本的に育成プログラムがあるよね」
 唐突な質問だったがユーマは頷いた。

 組織の殺し屋というものは基本的に若年から育てられる事が多い。その方が精神的にも技術的にも一定のクオリティを維持できるということからだった。それが実際どうなのかは分からないが、データはそう言っているらしいとユーマも聞いていた。
 そして育成の為には若い人材が必要となる。男女問わずある一定の年齢の子どもが必要となる。それはどこで手に入れるかといえば、人身売買であったり孤児を連れ去るということから始まる。
「俺はね、生まれた時から組織に引き取られてたの。要するに売られたっていうやつ? それで最初から殺しの為に育てられた。まぁ別にそれはいいと思うよ。手に職ってやつだし? それで、育成プログラムの最後ってテストで仕事をやるじゃん? 簡単な仕事が殆どだし、後始末は基本的に大人がやってくれる。大体は内部の粛清だったり、外部のテリトリーを荒らしている人間を始末するような、そんな殺し」
 ユーマはまたも頷いた。彼もまたこのプログラムは経験していた。だから言われなくても分かっている。むしろどうして今その話をハチがしているのか全く検討もつかないことが、少々薄気味悪く感じ始めていた。
「俺のテストはね、まさに外部の人間を始末することだったのよ。テリトリーを荒らしてる男を殺せっていうテスト。どうやらそいつは、そのあたりの子どもの世話をしていたらしいんだけどさぁ、まぁ、その子ども達には身体売らせてたわけよ。男も女も。胸くそ悪い話だよねぇ、今思うとさぁ。でもそうでもしないと生きて行けない孤児ってのはいるわけじゃん? それで男を始末して、基本的に使えそうな子どもは組織が引き取って育成する。それ以外は、組織のフロント企業が運営している孤児院へ連れて行くってことになってたわけ」

 逸材と見なされれば殺し屋へと育て上げ、そうではなく使い物にならないと判断されればただの孤児院へと連れて行かれる。後者の場合、孤児院を出た後の生活は保障されない。だがある程度までの生活は保障される。組織は表向きには慈善事業を行っていると見做されるし、行政との関係も良くなる。そして育てている中でフロント企業に対する印象を良くしておけば子どもは将来良き顧客になる可能性が高い。
 それに育っていく中で才能があると判断されれば、進学もすることが可能だ。この場合、将来的に事業の戦力となる可能性があるが故の制度であり、技術者の中でも僅かだがこの制度によって生み出された才能もあるという。
「それがなんだっていうんだ? ただのテストだろう」
「そう。でもそのテストで俺が殺した男はさ、ユーマの世話をしてた男だったんだよね」
「……は?」
 時が止まったようにユーマは瞬きを忘れた。
 ハチが瞳を細めて微笑むのを見ると、記憶は少しだけ過去へと向く。
「お前が……あの人を?」
「そう。俺も仕事でユーマの事調べようとした時に気づいたんだよね。っていうか、思い出したっていうのが正しい? 殆どは大人がやってくれてたけどさ、唯一ユーマは俺が仕事する時に男の側にいたんだよ」
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