不自由で自由な僕たちの世界。

広崎之斗

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三章:過去/自由

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「じゃあ、お前は俺より先に組織にいたって、こと?」
「そうなるのかなぁ?」
 首を傾げながらハチは言った。
「まぁ俺はね、物心ついた時から組織にはいたのよ。ユーマと違って親に売られたっぽいから。まぁその辺は、興味ないから知らないけど」
 人が死ぬことは常に近くにあった。だから目の前の男が死んでいるのを見た時、ユーマは冷静に「ああ、死んでいるな」と思っただけだった。悲しいだとか辛いだとかの感情はわき上がることなくいた。第三者の人間が見れば、それはもしかしたら衝撃的な現実を前に硬直していたように見えたかもしれない。だがもちろん、そんなことはなかった。
「俺を見たのは、覚えてない?」
「俺は……俺は、あの人に言われたことをやって、遣いを終えて戻って来た時に……死んでるあの人を見ただけで……」
「そう。入ってきたユーマを俺は確かに見たんだよね。だからユーマを見た時に、この人も殺さないとテストは合格じゃないのかな、ってちょっと迷ったんだよね。それは事前の説明に入って無かったから」

 事もなげに言いながらハチは肩を竦めた。
「だけど別にこんな話はどうでもいいんだよ? 別に、だからどうってわけでもない。別にユーマがこの事実を知って俺を殺したいっていうなら殺せばいいけど」
「別にそんなことはしない。あの人に感謝はしているけど、別に……だからって情があったわけでもないし。それにあの頃から、別段他人に対して何も思うところはなかったし」
 側にいる人間はいつだってすぐに離れるものだし、敵でもあった。特に男の元に拾われるまでは、側にいる子ども達は皆敵同然だったのだ。
 その日の食事を食べる為にも、自分の食事を守る為にも、誰もが敵だった。誰もが仲間とは思っていなかった。
 だから側にいる人間に対して、強く執着することもなければ、仲間意識であったり信頼という言葉を理解することもなかった。
 そうだった筈なのに、自分にそういった情の欠片を与え育て上げたのは他でもないミナトだ。

「でも、なんでこんな話をしたんだ?」
「俺が元々組織にいたって事を知ったなら、絶対にユーマはこの事を気にすると思って」
 確かにその通りではあった。だがだからといって、詳細を知ったところで何かが変わるとは思えない。
 しかし一方で、ハチが共に行動することを良しとしているのは、何か裏があるのではないかと勘繰りたくなっているのも確か。これは帰り道、車の中で考えていたことだ。だがハチにとって黙っていることで、またバレたところで何か有利になるというものでもない気がした。
「それにユーマが調べてくれて、分かったなら話が早くなる」
「早くなる?」
「そ。俺は今はただのフリーランスだ。そして実験体の成功例。ユーマの仕事内容から察するに、俺はおそらく今、組織が喉から手が出るほど欲しい成功例なんだよ。色々あって俺のデータは残ってないからね。別に組織に対して恨みはないし、恩義があるとかもないし。あるとすれば俺を育てた人への恩だけだし。その人のお陰で俺のデータは残ってない。だから別にユーマと出会わなければ俺としては組織のことなんて気にする必要もなくて、この先も来る仕事を毎日こなすだけだったんだけど。まぁこれはチャンスでしょ? だからユーマの依頼に乗るし、絶対に俺は裏切らないって誓うよ」
 そう言うとハチは恭しくユーマの手を掴み、その手の甲に唇を押し当てた。
「依頼人なんだから、俺を上手く使えばいい」
「……お前はなんで、組織を出られたんだ? その恩人っていうのは一体……?」
 ユーマの問いに、今度はハチが昔の話を語り始めた。
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