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第二部
宣言
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「ちょっと、どうなってるの!?」
城のバルコニーから、一部始終を見ていたアキナが大声を上げた。
その眼下では、先ほどまで魔物の姿であったもの達が再び人間の姿になり、なにごともなかったかのように町の中を行き来し始めていた。
もはや、誰が人間で、誰が魔物なのかの区別はつかない。と思いきや、一部の人間は、驚きのあまり身動きができずにいたり、顔が引きつっており、彼らこそ、おそらく人間なのだろうということは、アキナにも分かった。
しかし、そういったもの達も、周囲の人間と話をする内に、やがて笑顔になり、その他大勢の中へとまぎれていった。
「まさか、これほどまでに多くの魔物が、町の中にいたとはのう」
アキナの横で、目を細めながら王が言った。
「お父さんも知らなかったの?」
「うむ」
王は、当然だろうという顔でうなずき、続けた。
「たしかに、以前から、やたらと町に人が溢れていて、なんだかおかしいとは思っておったのじゃが」
そこまで言って、王は笑顔を浮かべた。
「我がストラリアの町は、大人気なのだと思っておったのじゃよ。ふぁっふぁっふぁ」
疑いを込めた目を向けながら、アキナが言う。
「でも、住民の台帳とかあるんじゃないの? それと比べてみたりしなかったの?」
「もちろん、台帳で住民の管理はしておる。しかし、よその町から来た旅人の素性まではいちいち調べんからのう。ストラリアに、多くの旅人が集まっていると思っとったのじゃよ」
「ふーん」
納得したのかしてないのか、口をとがらせながらアキナは言った。
そして、人の行き交う町を見ながら、再び口を開いた。
「でもさ、あれだけ多くの魔物が、今までずっと町で一緒に暮らしてたなら、人間と魔物は仲良くできるってこと――」
「無理じゃ」
期待と喜びの混ざった明るい声を、無機質な王の声が遮った。
アキナは一瞬たじろいだが、すぐに言い返す。
「だって、現にこの町では、あんなにたくさんの魔物が、今まで人間と一緒に暮らしてたんでしょ? それどころか、あの魔物達は人間のために戦ってくれたじゃない」
「あんなものは、演技じゃよ。忘れたのか。この町では、しばしば、人間が魔物に襲われる被害が出ていたじゃろう」
「それを、あの魔物達がやったって言うの」
「そうじゃ。お前が城から居なくなり、ストラリア周辺に魔物が居なくなった後も、被害は続いたのじゃ。町の中に潜んでいた、あの魔物達以外に考えられまい。それに――」
王は、少し間をおいてから続けた。
「魔物は滅びる。それが運命なのじゃ」
アキナの顔に、挑戦的な笑みが浮かんだ。
「みんな、運命って言葉が好きなのね。でも、わたしは、運命なんてものはないと思ってるの。もしあったとしても、変えればいいだけだもん。どうせ変えられるんだから、運命なんてないも同然でしょ」
「お前が運命を否定しようとも、それはたしかにあるのじゃ。この世界の仕組みと言い換えてもよい」
「仕組み? どういうこと? お父さん、何か知ってるの」
「……少ししゃべりすぎたようじゃの。お前が知る必要はない話じゃ」
続けざまに質問をぶつけようと、口を開けたアキナだったが、王が、これ以上しゃべる気がないことを感じ取り、一旦、その口を閉じた。
数秒ののち、アキナは意を決したように、再び口を開く。
「なんだか知らないけど、その仕組みを変えれば、魔物が滅びずにすむのね」
「理屈の上では、そうなるのう」
アキナは笑みを浮かべると、王に背を向け、バルコニーから城内へと歩み始めた。
「じゃあ、ちょっと、その仕組みを変えてくるから」
「仕組みの内側に居るものに、果たしてそれができるかのう」
王は、アキナを止めなかった。
アキナは、階下へと駆け下り、城門から飛び出した。橋を渡り、町の中へと躍り出ると、町民達の視線がアキナへと集まる。
アキナはそこで立ち止まり、大きく息を吸い込んでから、大声で言った。
「魔物のみんな! 町を、人間を守ってくれてありがとう! わたしは、人間と魔物が、ずっと仲良く暮らせる世界を作る! 魔物は滅びる運命にあるなんて言う人も居るけど、そんな運命、わたしが変えてみせる! 人間のみんなも、魔物と仲良くしてね!」
言いながら、アキナは振り返り、城のバルコニーをにらみつけた。その視線の先では、王がアキナを見下ろしていた。
唐突に、アキナの宣言を聞いた町民達は、最初こそおどろき戸惑っていたが、間もなく各々がその言葉の意味を理解した。あるものは笑顔で拳を突き上げ、あるものは真顔でうなずき、あるものは驚いた表情のまま固まり、やがて、あたりは喝采に包まれた。
アキナは、町民達にうなずき返すと、身体中に声援を浴びながら、町の出入り口へと走った。
立ち話をしているフレークの姿を見つけたアキナは、その近くに駆け寄り、言った。
「わたしも混ぜなさいよ!」
人間の姿をした 3 人の魔王は、アキナのほうへと振り向き、おどろきの表情を浮かべた。その視線は、アキナを通り越して、そのすぐ背後に向けられていた。
不審に思ったアキナが振り返ると、そこに王が立っていた。
城のバルコニーから、一部始終を見ていたアキナが大声を上げた。
その眼下では、先ほどまで魔物の姿であったもの達が再び人間の姿になり、なにごともなかったかのように町の中を行き来し始めていた。
もはや、誰が人間で、誰が魔物なのかの区別はつかない。と思いきや、一部の人間は、驚きのあまり身動きができずにいたり、顔が引きつっており、彼らこそ、おそらく人間なのだろうということは、アキナにも分かった。
しかし、そういったもの達も、周囲の人間と話をする内に、やがて笑顔になり、その他大勢の中へとまぎれていった。
「まさか、これほどまでに多くの魔物が、町の中にいたとはのう」
アキナの横で、目を細めながら王が言った。
「お父さんも知らなかったの?」
「うむ」
王は、当然だろうという顔でうなずき、続けた。
「たしかに、以前から、やたらと町に人が溢れていて、なんだかおかしいとは思っておったのじゃが」
そこまで言って、王は笑顔を浮かべた。
「我がストラリアの町は、大人気なのだと思っておったのじゃよ。ふぁっふぁっふぁ」
疑いを込めた目を向けながら、アキナが言う。
「でも、住民の台帳とかあるんじゃないの? それと比べてみたりしなかったの?」
「もちろん、台帳で住民の管理はしておる。しかし、よその町から来た旅人の素性まではいちいち調べんからのう。ストラリアに、多くの旅人が集まっていると思っとったのじゃよ」
「ふーん」
納得したのかしてないのか、口をとがらせながらアキナは言った。
そして、人の行き交う町を見ながら、再び口を開いた。
「でもさ、あれだけ多くの魔物が、今までずっと町で一緒に暮らしてたなら、人間と魔物は仲良くできるってこと――」
「無理じゃ」
期待と喜びの混ざった明るい声を、無機質な王の声が遮った。
アキナは一瞬たじろいだが、すぐに言い返す。
「だって、現にこの町では、あんなにたくさんの魔物が、今まで人間と一緒に暮らしてたんでしょ? それどころか、あの魔物達は人間のために戦ってくれたじゃない」
「あんなものは、演技じゃよ。忘れたのか。この町では、しばしば、人間が魔物に襲われる被害が出ていたじゃろう」
「それを、あの魔物達がやったって言うの」
「そうじゃ。お前が城から居なくなり、ストラリア周辺に魔物が居なくなった後も、被害は続いたのじゃ。町の中に潜んでいた、あの魔物達以外に考えられまい。それに――」
王は、少し間をおいてから続けた。
「魔物は滅びる。それが運命なのじゃ」
アキナの顔に、挑戦的な笑みが浮かんだ。
「みんな、運命って言葉が好きなのね。でも、わたしは、運命なんてものはないと思ってるの。もしあったとしても、変えればいいだけだもん。どうせ変えられるんだから、運命なんてないも同然でしょ」
「お前が運命を否定しようとも、それはたしかにあるのじゃ。この世界の仕組みと言い換えてもよい」
「仕組み? どういうこと? お父さん、何か知ってるの」
「……少ししゃべりすぎたようじゃの。お前が知る必要はない話じゃ」
続けざまに質問をぶつけようと、口を開けたアキナだったが、王が、これ以上しゃべる気がないことを感じ取り、一旦、その口を閉じた。
数秒ののち、アキナは意を決したように、再び口を開く。
「なんだか知らないけど、その仕組みを変えれば、魔物が滅びずにすむのね」
「理屈の上では、そうなるのう」
アキナは笑みを浮かべると、王に背を向け、バルコニーから城内へと歩み始めた。
「じゃあ、ちょっと、その仕組みを変えてくるから」
「仕組みの内側に居るものに、果たしてそれができるかのう」
王は、アキナを止めなかった。
アキナは、階下へと駆け下り、城門から飛び出した。橋を渡り、町の中へと躍り出ると、町民達の視線がアキナへと集まる。
アキナはそこで立ち止まり、大きく息を吸い込んでから、大声で言った。
「魔物のみんな! 町を、人間を守ってくれてありがとう! わたしは、人間と魔物が、ずっと仲良く暮らせる世界を作る! 魔物は滅びる運命にあるなんて言う人も居るけど、そんな運命、わたしが変えてみせる! 人間のみんなも、魔物と仲良くしてね!」
言いながら、アキナは振り返り、城のバルコニーをにらみつけた。その視線の先では、王がアキナを見下ろしていた。
唐突に、アキナの宣言を聞いた町民達は、最初こそおどろき戸惑っていたが、間もなく各々がその言葉の意味を理解した。あるものは笑顔で拳を突き上げ、あるものは真顔でうなずき、あるものは驚いた表情のまま固まり、やがて、あたりは喝采に包まれた。
アキナは、町民達にうなずき返すと、身体中に声援を浴びながら、町の出入り口へと走った。
立ち話をしているフレークの姿を見つけたアキナは、その近くに駆け寄り、言った。
「わたしも混ぜなさいよ!」
人間の姿をした 3 人の魔王は、アキナのほうへと振り向き、おどろきの表情を浮かべた。その視線は、アキナを通り越して、そのすぐ背後に向けられていた。
不審に思ったアキナが振り返ると、そこに王が立っていた。
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