私が悪役令嬢になるまでの物語

千代乃

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それはおとぎ話のような②

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私の名前はエラノーラ・ロードヴィスという。

父はヴァルター・ロードヴィスという名の伯爵だった。
娘の目から見ても、父は非常に美しい人だった。長い黒髪に紫の瞳の、冷たい美貌の持ち主だった。私は父に似た容姿をしていた。そのためか、あまり父には好かれていないようだった。もちろん、何か冷たい仕打ちをされたわけではない。そのときはまだ、私と父の関係は良好だった。そのように私が感じていただけだった。

父は母のことを非常に愛していた。
母の名はフリーデリーケといった。今となってはそれが本名だったのかすら不明だ。ただ、母が伯爵夫人として外に出ていることは、私の記憶の限りなかったように思う。父が母を見初めて妻としたらしい。白金の髪に、澄んだ青の瞳をした美しく愛らしい女性だった。いつもどこかフワフワしている母は、寝物語によく父とのなれそめを話してくれた。

「お母さんはね、この世界の人ではないのよ。お仕事をしにこの世界に来た時に、羽をなくしてしまったの。羽がないと、お母さんは元の世界に帰れないの。困ったわ、どうしようって途方に暮れているところにお父さんが来てね、お母さんをお嫁さんにしてくれたのよ。最初は怖そうな人だわって思っていたけど、お母さんにはとてもやさしかったわ」

たまに話が前後したり、最初から父親がとてもやさしそうな人、という風に微妙にニュアンスが変わっていたが、概ねこのような内容だったと思う。今だったら、母は何かしらの頭の疾患があり、そのため公の場に出られないのだ……という風に解釈してしまったかもしれないが、そのときわたしはまだ幼く、母の物語る内容をそのまま信じていた。

信じていたなら、どうしてあのようなことをしてしまったのだろう。
ただ、私は純粋に母に喜んでもらいたかったのだ。
自分のしたことが、どのような結果をもたらすかなんて考えてもいなかった。
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