私が悪役令嬢になるまでの物語

千代乃

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それはおとぎ話のような④

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──てっ天使!ああもうっ、どうしてお前はそんなにかわいいのよっ!

私は撃ち抜かれた胸を押さえて目を閉じた。心臓が、弟の可愛さに慌てふためいてばくばく暴れていた。

「エラお姉ちゃん?どうしたの?どこか痛いの?」

弟が小さな手を私の手に重ねた。心臓がさらに大きく飛び跳ねる。

「……どこも痛くはないわよ、ルース」

そっけなく応えながらも、語尾が震えていた。もう、この小さくてかわいい手ときたら!それになんてお姉ちゃん思いのかわいい弟なのよ。私は強い意志をもって、断腸の思いで弟から目を背け、机の上に視線をやったが、もちろん古代文字の課題なんて目に入っていなかった。

「お母さまの羽を探すとして、いったいどこを探すつもりなの?」

別に私は興味があるわけじゃないからね、という風に、どうでもよさそうに私が聞くと、弟はまってましたとばかりに私の両手を持って、自分の方へ向かせた。

「あのね、まずはこのお城の中をしっかり探そうと思うんだ。このお城は広いし、きっとお母さまが探してないところもあるはずだよ!」

──あのね、お母さまは羽をなくしたからこの城に来ることになったのよ……ここでなくしたわけじゃないのよ……

私の理性はそう反論していたが、両手をとられて力ずくで弟の方へ向かされた私は、可愛さの集中砲火で言葉を失ってしまっていた。

──こんなに小さいのにっ、なんて強引な子なのっ!?かわいいっ!!
──ここまでして私の注意を惹きたかったのねっ!もうっ!お姉ちゃんが大好きなんだからっ!!

つながれた弟の小さな両手は温かく、尊かった。離せるはずがなかった。そしてすぐ目の前には、天使のように愛らしい弟が熱いまなざしで私を見ている。いや、私にとってはもう弟は天使そのもので、ここはもう天国なんじゃないかしらと思うくらい、周りの色彩は鮮やかにキラキラして見えた。

「お姉ちゃん。僕と一緒に探してくれる……?」

上目遣いでこちらを見上げる弟に、

──もちろんよ、ルース!お姉ちゃん、あんたのためなら何にだって、喜んで付き合うわよ!

と心の中で答えながら、持ちうる限りの自制心をかき集めて、

「仕方ないわね……」

とそっけなく応えていた。その後、弟がさらに破壊力のある笑みを浮かべながら、

「本当っ!?やっぱりお姉ちゃん大好き!!」

と抱き着いてきたときには、私はこのまま心臓が破れて死んでしまうのではないかと思った。死因は弟が可愛すぎるせいだ。
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