私が悪役令嬢になるまでの物語

千代乃

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それはおとぎ話のような⑥

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探検ごっこ……もとい、【お母さまの羽を探すミッション】は思いのほかとても楽しかった。
私も六歳の子供ということもあり、自分の暮らす城の隠された場所に踏み込んでいくことにとてもドキドキワクワクしていた。もちろん、弟が一緒だから楽しいのであって、一人だったら絶対にこんなことはしていなかっただろうけれど。

ドキドキするのは弟に必要とされていることを常に感じられるからで、ワクワクするのは弟がいろんな表情を見せてくれるからだった。

しかし、応接間や廊下などはともかく、使用人の住居スペースや厨房には大っぴらに入って行くことはできないし、城には地下牢や謎めいた塔がある。何しろ秘密のミッションなので、あまり私たち姉弟がウロウロしているのを見られるのは好ましくない。

そこで私の出番だった。
私は父譲りの魔力があった。かなり疲れるし、一定の手順は必要になるけれど、それさえクリアすれば私と弟は【透明人間】になり、誰にも気づかれずにいろんな場所に出入りすることができた。

私は子供ながらも自分の魔力が一般的なものより、強く膨大であることを知っていた。というのも家庭教師が、

「エラノーラ様、あなたの魔力は素晴らしく強い。王族に匹敵するか、もしかすると上回っているのかもしれません。少なくとも、私のような一介の家庭教師がここで教えるよりも、中央の学園に行って学んだ方がよろしいかと思います。普通は十三歳からの入学になりますが、これほど強ければ特例として認められるでしょう」

と私に言ったからだ。
確かに、私は魔力保持者は見ただけで分かるし、その程度も父母以外ならば簡単に見切ることができた。
その家庭教師に暗示をかけて、【エラノーラはごく一般的な魔力しかもっていない】と認識させるのは造作もないことだった。

もし、その家庭教師が父に進言したら私はそのまま学園送りになったと思う。父が私を送らない理由を思いつかなかったし、少なくとも、信用して雇った家庭教師の進言を無下にはしなかったはずだ。母も【エラちゃんが学園にいっちゃうと寂しくなるわ~】などと言って、泣くくらいのことはしたかもしれないが敢えて反対をするとは思えなかった。弟だけはきっと泣いて反対してくれただろうけど……

そう、私が学園送りが嫌だった理由はただ一つ、弟と離れたくないからだった。
いずれ十三歳になったら学園にいかなくてはならず、弟と離れざるをえなくなるのに、それすらも何とか回避したいのに、どうしてこんなに早い時期から離別の苦しみを味あわなければならないのか。私は弟と離れ離れになったら寂しくて死んでしまう自信があった。半日離れることすら考えられないことなのに、それがずっと続くなんて正気の沙汰ではない。だから、家庭教師に魔術を行使するのに一片の迷いもなかった。





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