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15.再び洞窟の中へ③
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シェリルはそろそろ、多少のことでは驚かないつもりでいた。
何しろ今夜は、次から次へと招かざる客で忙しかった。何度命の危機を感じたことかわからない。
最悪の事態は常に頭の隅にあり、いざとなっても絶望したりしないわよ、少なくとも最後の最後まで抵抗してやるわ、絶対に大人しく死んでやるものかと心の奥底で決意していた。
しかし、シェリルが恐怖を覚える出来事はまったく予想外の形でやってきた。
シェリルも少しは違和感を感じていた。
そいつの近づいてくる足音は不自然だったし、かけてくる言葉も非常に引っかかるものだった。そして目の前のジュークの反応もおかしかった。しかし相手が声をかけてくる以上、そいつの正体が気になるのは当然のことだったし、声の主を自分の目で確認するのも、自然な流れだった。
なんの心構えもなくジュークの後ろに視線をやって、シェリルは硬直した。次いで両手で顔を覆った。
「どうも、魔女さん。俺はレイス・グラハムだよ。いや~、可愛いね~。これはラッキーだね~」
そういってペタペタ近づいて来る相手に、シェリルは絶叫した。シェリルの叫び声にぎょっとしたジュークは思わず立ち上がるが、シェリルはその体に飛びついた。
「いやー!!来ないで!!!」
ちらりとしか、ほんとうに一瞬しか見なかったが、間違いなかった。相手は全裸の男性だった。
「え~、何その反応?すっごく傷つく」
「レイス、お前どういうつもりだ。勝手に持ち場を離れて急襲班に入って、こともあろうに魔女に危害を加えておいて、よくものこのこ顔を出せるな」
ジュークは怒りを滲ませた口調で言うが、
「そんなことよりも!どうして裸なのよ!!!」
岩に激突する以上の衝撃をくらったシェリルはジュークに怒鳴った。激高する自分自身に驚きながらも、シェリルは感情を抑えることができなかった。とはいっても直に全裸の変態男にいうのは、本能的に回避し、怒りはジュークに向けられた。
「いやー、魔女さんが心配で服着るどころじゃなかったんだよ~。ほんと心配したんだって」
変態男に言い訳をされたシェリルは、自分の頭の中で何かがプツンと切れる音を聞いた。
「心配しなくて結構よ!それよりも服着てよ!いえ、いますぐ私の前から消えて!ここから出て行って!」
そう怒鳴ると、両目からボロボロと涙が零れ落ちた。
(えっ、私泣いてる)
家族を焼いた炎を目にしたときから、涙など流れなくなっていたのに、こんな変態男に泣かされるなんて。こんな男のせいで私ははしたなくもよく知らない男の人に怒鳴ったりなどして……
「ひっくっ、ううっ……」
一度波にのった感情は、引き戻せなかった。涙は次々とあふれ出し、シェリルは本格的に泣き出してしまった。
何しろ今夜は、次から次へと招かざる客で忙しかった。何度命の危機を感じたことかわからない。
最悪の事態は常に頭の隅にあり、いざとなっても絶望したりしないわよ、少なくとも最後の最後まで抵抗してやるわ、絶対に大人しく死んでやるものかと心の奥底で決意していた。
しかし、シェリルが恐怖を覚える出来事はまったく予想外の形でやってきた。
シェリルも少しは違和感を感じていた。
そいつの近づいてくる足音は不自然だったし、かけてくる言葉も非常に引っかかるものだった。そして目の前のジュークの反応もおかしかった。しかし相手が声をかけてくる以上、そいつの正体が気になるのは当然のことだったし、声の主を自分の目で確認するのも、自然な流れだった。
なんの心構えもなくジュークの後ろに視線をやって、シェリルは硬直した。次いで両手で顔を覆った。
「どうも、魔女さん。俺はレイス・グラハムだよ。いや~、可愛いね~。これはラッキーだね~」
そういってペタペタ近づいて来る相手に、シェリルは絶叫した。シェリルの叫び声にぎょっとしたジュークは思わず立ち上がるが、シェリルはその体に飛びついた。
「いやー!!来ないで!!!」
ちらりとしか、ほんとうに一瞬しか見なかったが、間違いなかった。相手は全裸の男性だった。
「え~、何その反応?すっごく傷つく」
「レイス、お前どういうつもりだ。勝手に持ち場を離れて急襲班に入って、こともあろうに魔女に危害を加えておいて、よくものこのこ顔を出せるな」
ジュークは怒りを滲ませた口調で言うが、
「そんなことよりも!どうして裸なのよ!!!」
岩に激突する以上の衝撃をくらったシェリルはジュークに怒鳴った。激高する自分自身に驚きながらも、シェリルは感情を抑えることができなかった。とはいっても直に全裸の変態男にいうのは、本能的に回避し、怒りはジュークに向けられた。
「いやー、魔女さんが心配で服着るどころじゃなかったんだよ~。ほんと心配したんだって」
変態男に言い訳をされたシェリルは、自分の頭の中で何かがプツンと切れる音を聞いた。
「心配しなくて結構よ!それよりも服着てよ!いえ、いますぐ私の前から消えて!ここから出て行って!」
そう怒鳴ると、両目からボロボロと涙が零れ落ちた。
(えっ、私泣いてる)
家族を焼いた炎を目にしたときから、涙など流れなくなっていたのに、こんな変態男に泣かされるなんて。こんな男のせいで私ははしたなくもよく知らない男の人に怒鳴ったりなどして……
「ひっくっ、ううっ……」
一度波にのった感情は、引き戻せなかった。涙は次々とあふれ出し、シェリルは本格的に泣き出してしまった。
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