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05:十二個も能力があっても最初が便利すぎて二つ目出すの遅くなるよね。

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 騎士団に俺と紫髪の女性が戦うことを女性が伝え、俺と紫髪の女性が向かい合う。

「私はロザリオ王国聖ガブリエル騎士団騎士団長リリスだ」
「宝月照耀」

 騎士団の半数くらいは村人たちの確保に向かっていた。

「ルールは何もない。行くぞ」
「ルールはあるだろ。お前は俺を殺す気で行って、俺はお前を殺してはならないっていうルールがな」
「ふっ、私を殺せるつもりか? だが安心しろ、貴様では私は殺せない」
「なら俺の勝利条件はお前を認めさせるということだな」
「そうなるな。認めさせられるかどうかは知らないがな」

 こんなルールが公平じゃない勝負を作るのはジャイアンくらいだろ。

「ならもしお前を殺すことができれば俺の勝ちにしてもいいな?」
「あり得ないことだが、いいだろう。カレン聞いていたな! 私が死んでもこの男を丁重にもてなせ!」
「はっ!」

 これで俺がこいつを勢い余って殺してしまっても問題はなくなった。

「では行くぞ。そちらからかかってくるといい。その私に勝てる自信がどれほどのものか、見せてみるといい」
「じゃあ遠慮なく」

 すごく俺のことを見下しているリリスに千の手による打撃を約一秒で千撃与えた。

 俺には全く見えていないのだが攻撃を加えた安底羅によってほぼ防がれたということが伝わってきた。

「……驚いた。まさか初手で私にこれを使わせるものがいるとはな」

 先ほどまで着ていたゴツイ鎧がより強固に変化して妖艶な紫色の光で威圧感を放っている全身鎧になっていた。

 初撃で決めるつもりだったがどうやらそういうわけにはいかない相手らしいな。

「何だよその鎧は」
「この鎧はSランクモンスター「パープルダイヤモンドドラゴン」の素材でできている災鎧さいがい。世界で最も硬いと言われているドラゴンの鎧だ。これを出せば貴様に勝ち目はないだろう」
「それを壊したら損害賠償請求が来ることはあるか?」
「この鎧は修復機能も付いている生きた災厄だ。壊れたところで問題はない。壊れたらの話だが」
「それを聞いて安心した」

 絶えず千手を放ち続ける。

「確かに攻撃回数と速度は優秀だ。上位の連中でも手も足もでないだろう。だが最上位の私クラスともなれば面倒なだけで厄介ではない」

 千手をかいくぐり横から俺に攻撃を仕掛けようとするリリス。だがすべての千手を攻撃に回しているわけではないから防御に回している千手でリリスを近づけないようにする。

 ふぅ、ここまで冷や冷やする戦いは初めてだな。今までのモンスターは瞬殺できていたがリリスは千手をかいくぐってくる。

 さてさて、これだけ打ち込んだんだ。さすがにあるんじゃないか? ……どうやらあったようだな。

「リリス、さっきぺらぺらと喋ってくれたお礼だ。今からその災鎧特攻の攻撃を仕掛けるぞ」
「そんなことができるのならやってみるといい」

 千手をかいくぐって俺に近づこうとするリリスだがすべてかいくぐれているわけではない。ある程度の被打は許容している。

 だから攻撃をあてれないわけではなくまた千手をかいくぐろうとしたリリスに千手を当てた。

「ッ!?」

 リリスの鎧は千手の攻撃をたった一度受けただけでヒビが入った。それを見逃さずにすべての千手を攻撃に回して特攻が入った千の手がリリスに襲い掛かった。

 リリスの鎧はすべて砕け地に伏せているリリス。

 安底羅の「千手」は千の手を繰り出す能力だが千の特攻があり通常は一つの手に一つの特攻が付与されている。

 相手の弱点である特攻を発見することができればすべての手にその特攻を付与して攻撃することができるのが安底羅の強みだ。

 今回は相手が災鎧であったから千の特攻を色々と組み合わせて特攻を発見していた。

 攻撃回数、攻撃速度、弱点攻撃を兼ね備えた万能神将が安底羅だ。

「勝負ありか?」
「……まさか、災鎧が壊されるとはな」
「最初に聞いていたから文句は受け付けないぞ」
「文句はない。この状態でも修復できる。時間はかかるが」
「俺を認める気になったか?」
「認めるも何も、これで認めなければ私は騎士として失格だ」

 さっきまでの反応はまあ敵だったし仕方がなかったのかな。

 少し冷や冷やとしたが特に怪我することなくリリスを倒すことができて安堵していると清香が駆け寄ってきた。

「だ、大丈夫ですか!? お、お怪我はありませんか!?」
「あぁ、この通りバッチリ。心配をかけたな」
「……何よりです」
「何をしているのかアタシの目では分からなかったわ。千手であの鎧を砕いたのかしら?」

 清香の後ろから来た四条にそう問われて頷く。

「そうだ。千手は千の手と千の特攻を持っているからあの鎧の特攻を見つけて砕いたんだ」
「……チートすぎね。それ以外の十一の神将が弱いかマイナスでなければ腹が立つレベルね。そこのところはどうなの?」
「同じくらいに強いぞ」
「やってられないわね。アタシの術式がゴミみたいじゃない」
「だが四条の術式を鍛えたらどんなものからでも守れるんじゃないか?」
「できるのかしらね」
「それは四条次第だろ……摩虎羅から鍛えたら強くなるって伝わってくるな」
「……鍛えてみようかしら」

 俺頼りでやるのもいいがやっぱり術式があるのなら鍛えるのが一番だとは思う。

「キミたち三人はロザリオ王国に案内しよう。私に勝ったことは名誉なことだ。ロザリオ王国でも丁重にもてなされるだろう」
「それは助かる。俺たちはここら辺のことを何も分からないからそれも教えてくれると助かる」
「お安い御用だ。ではすぐに帝都に向け――」
「ネピリム襲来! 二時の方向より多数襲来!」

 騎士団は全員が厳戒態勢に入ったが何が襲来してきたのか分からなかった。

「しまったな。災鎧が壊れたから来れるようになったのか」
「何が来ているんだ?」
「人を食べる巨人だ。見たことないのか?」

 巨人と言われて思い浮かべるのは脳みそや内臓を吸い出していた気持ち悪いモンスター。

「ハゲた大きい男のことか?」
「そうだ。それがネピリムというモンスターだ。通常なら災鎧の加護により来ないが、コア以外破壊されたことで加護が消えている」

 リリスの言い方や騎士団の慌てようが異常に思える。

「ネピリムは厄介なのか?」
「一体一体は私クラスなら厄介ではないが並みの騎士が相手なら厄介極まりない。それに集団で動く習性があるから知性を持って獲物を狩りに行き、残酷に殺すことを嗜好としているモンスターだ」

 やっぱりあの時のあれはそういう殺し方をしていたのか。

 隣にいる清香が思い出したのか少し顔色を悪くしたから背中をさすってリリスに提案する。

「俺が鎧を壊してしまったからこうなってしまった。だからネピリムは俺がすべて倒しても構わないか?」
「やってくれるのならお願いする。謝礼ははずむぞ」
「それは良かった」

 ネピリムが来ている方向を見ると確かに何か来ているのが見えた。

「ここら辺は何もしてもいい場所なのか?」
「あぁ構わない。派手に行くのか?」
「あぁ、派手に行く。派手に散ってもらわないとな」

 それに安底羅以外にも出番が欲しいと言っている奴らがいるからな。

「四条、清香。十二神将の術式の一つを披露する」
「披露して教えるんじゃなくて教えなさいよ」
「メンドウだからこれで勘弁してくれ」
「どんな術式なのですか!?」

 期待した目線を送ってくる清香。

「珊底羅の「明星」だ」

 かなりハイテンションな意思が伝わってきながらネピリムたちの頭上に極大隕石が出現してこちらにまで余波が来るほどに隕石は落ちた。

「きゃっ!」
「おっと」

 清香が揺れでバランスを崩しそうだったから体を支えた。

 四条は最初から俺をつかんでいたからそういうことはなかった。

「こういうことは披露して教えるのでは遅いわよ。教えてから披露しなさいよ」
「あっはい。ごめんなさい」

 四条のガチ説教で思わず謝ってしまう。

 だが素人の俺たち以外は特にバランスを崩してこけることはしていない。

「ネピリムを確認しに行く!」
「俺も行く。何かあれば俺が後始末をつける」
「なら私の後ろに乗れ。あれほどの威力であるならば生きていることはまずないだろう」
「分かった」

 馬に乗るなんて初めてだと思いながら馬に乗ったリリスに手を借りながらリリスの後ろに乗る。

 すると急に馬が前足を上げたから危うく落ちそうになったが千手が後ろから支えてくれてそんな事態にはならなかった。

 あぁ、こうして背もたれになるから楽だな。えっ、いつまでももたれかかってくるな? いいじゃないか!

「ふむ、これは木端微塵になっているな」
「そりゃ星だからな」

 隕石が落ちた場所に近づくにつれ熱くなり始めもれなくネピリムは衝撃や熱によって木端微塵になっていた。

「災鎧を壊す術式に星を落とす術式。素晴らしい力だ」
「それはどうも。ちなみに俺はどれくらい強い?」
「それを判断するのに私の強さを私の独断と偏見で言う必要がある。私は世界で七つしか作られていない災鎧を持って十番目くらいだ」
「災鎧って七つしかないんだな……」
「素材がそもそも取れないし、素材を加工する者が見つからないというのが現状だ。それに私は災鎧を使えているだけで使いこなせているわけではないから十番目と判断した。そんな私に勝てるお前は五番目くらいではないか?」
「なるほど」

 なら十二神将すべてを使えば最強にはなれそうだ。

「ちなみに、ロザリオ王国では強い者が優遇されるぞ。ぜひロザリオ王国の騎士団に入ってほしいところだ」
「俺は帰るところがあるんだ。悪いがそれは断る」
「そうか。それは残念だ」

 俺とリリスはみんながいる場所に戻る。

「どうだった?」
「バッチリ死んでたぞ」
「あれほどの威力で死なない方がおかしいわよ」

 捕らえられている村人たちをゴミを見るような目で見ていた四条は俺が帰ってくると打って変わって普通の表情で俺に声をかけてきた。

 何だかその変わりようが怖く感じた。これが女なのか……!

「照耀様。今綺麗にしますね」
「あぁ、ありがとう」

 汚れていた服や体を綺麗にしてくれる清香。

「私は……こんなことしかできませんから」
「こんなことじゃなくて便利だろ。俺にはできないことだ」
「私は照耀様に何もお返しもお助けもできませんから、せめてこれくらいはさせてください」
「別に俺は清香にお返しも求めて助けているわけではないぞ。って言っても清香は納得はしないんだろうな」

 この子は本当にいい子過ぎる。口には出さないが四条みたいに助けられるのが当たり前と思えればいいがそれは清香には難しいのだろう。

「それなら少しずつでもいいから学んでいけばいいと思う」
「……どういうことですか?」
「魔法もあると思うしこの世界のことも分からない。何も分からない状況だからできることが見つからないだけだ。学んでいけばきっと役割を見つけられると思うぞ」
「はいっ! 頑張ります!」

 こう言えば頑張りすぎそうだがこれ以上思いつめられるのもあれだからな。

「それは自身の元にいろって言っているのかしら?」
「そんなこと一言も言っていないだろ。それは誰にでも役に立つことだからな」
「そうね。言っておくけれどアタシは特に恩返ししようとは思っていないわよ」
「それくらいがちょうどいいんだよ。でも少しくらいは恩返ししてくれてもいいんだぞ」
「名前で呼んであげるわ。照耀」
「へいへい。それなら俺も奏と呼ぶことにする」
「勝手にしなさい」

 四条、奏みたいに思えればいいと思ったのはウソだ。今の奏と清香を足して割ったくらいがちょうどいいな。
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