スキル「ジョブチェンジ」で下剋上!

山椒

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30:最上級魔法

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 金貨の分配を済ませ、ルナとブレアは自分たちの宿に戻った。

 ルナが一緒の宿で寝ると言い出したが俺たち三人でいっぱいだから大人しく帰ってもらった。

 そこからアニーにお願いされて食材の買い出しを行いたいとのことで、アニーとエマと一緒に買い出しに行きバッチリとダンジョン攻略の準備を行った。

 部屋には二つしかベッドがなかったが俺とアニーが一緒で一つのベッドを使い、エマが一つのベッドを使うことで納得した。

 ただアニーは料理の準備があるとかで俺が起きている間に一緒に寝ることがなかった。

 アニーがしっかりと寝ているかを確認しないといけないな。でも俺よりも先にアニーが寝るわけがないから難しいところだ。

「おはよーバンリー!」
「ひょえぇ!?」

 前回よりも遅く来てくれると思ったが、それどころか前回よりも早くルナがここにきた。

「ルナ、早くないか?」
「えー? そんなことないってー」

 そんなことはあると思いつつもルナの表情を見れば本当にそう思ってそうだ。

「これなら一緒の部屋で寝ていればよかったわ……」

 若干眠そうなブレアが少し遅れて部屋に来てそうつぶやいた。

 ブレアとルナが部屋で待っている間、俺はアニーにお世話をしてもらい、それを慣れない感じで見ているエマという状況で準備を終わらせた。

「よし、行くか」
「行こー!」
「ようやくね。早く行きましょう」
「はい」
「ま、まだ、心の準備が……」

 前回よりも一人増えた五人でザラルダンジョンに入る。

 元々持っていたのか分からない大きな盾を持つ盾使いのルナ。

 アニーに出してもらった<ヒートフィスト>を装着する拳士の俺。

 ナイフを身に着けているが暗器を取り出して戦うという盗賊のアニー。

 武器の価値は分からないが高そうな赤の宝石が付いた杖を持つ炎使いのブレア。

 アニーから受け取った背丈くらいある杖を持った賢者のエマ。

 バランスのとれたいいパーティになっているな。そういう風にジョブを選んだんだから当たり前ではあるんだけど。

「まずエマのレベルを上げることを最優先にするぞ」
「当然ね」
「な、なんで?」
「……これくらいのことも分からないのね」

 こうやってエマと会話させていると自分でメンタル回復をするブレア。二人とも扱いやすくて逆にメンタルケアが不要ということになっている。

「ジョブを三つ解放したとは言えエマのステータスはこの場にいる誰よりも低いんだ。優先的にエマを上げていかないといけないんだ」
「な、なるほど……!」
「ちゃんと魔法を覚えているのでしょうね?」

 昨日はエマに攻撃魔法を覚えさせるためにブレアから魔法の本を借りた。

 エマは<錬金術>しか覚えていないから攻撃魔法を覚えさせるために借りたわけだが、ブレアはすんなりと貸してくれた。

 おそらくその時から吹っ切れてはいたのだろう。それはいいことだ。

「は、はひぃ……」

 ブレアと話すとき、エマはかなりビビった様子を見せる。俺の近くにきてブレアから隠れるようにするのは高圧的なブレアが怖いのだろう。

「フン、それで何を覚えたのかしら?」

 エマではなく俺に聞いてくるブレア。

「<ムスペルヘイム>と<ニブルヘイム>の二つだ」
「……最上火炎魔法と最上冷却魔法じゃない」

 そんな本を渡してきたくせに機嫌を悪くするんだから勘弁してほしいところだ。

 ブレアが渡してきた本は『ソロモンの魔導書』というもので難しい魔法ばかりが記されているとアニーに教えられた。

 俺は読んでも分からないからひとまずはアニーから字の勉強をしている。

 大学ではフランス語を習っていたがそれに加えて異世界語という前代未聞の語学を学ぶとは思わなかった。

 喋れる分難しいというのは言っておく。

「最上魔法を見せてもらおうじゃない。失敗すれば笑ってあげるわ」
「うへぇ!?」

 ガチガチになっているエマに話しかける。

「エマ、大丈夫だ」
「で、でも……」
「俺が付いている。だから俺の言う通りにすれば平気だ。全部俺のせいになるんだから」
「う、うん……」

 俺のせいだと言っておけば意外に楽になるものだ。

「じゃあさくっとモンスターを集めるか。頼むぞルナ」
「任せてー!」

 このダンジョンではサイレンウルフがいる。サイレンウルフが見つかればサイレンウルフが他のモンスターを集めてくれる。

 集まるまで頑張るのはルナの仕事だ。

 少し進んだところで最初に出会ったのはサイレンウルフだった。五体のサイレンウルフはダンジョン内に響く遠吠えをしてモンスターを集め始めた。

 後方から大量のモンスターが来たことで俺はエマに声をかける。

「エマ、あのモンスターたちにムスペルヘイムだ」
「は、はひぃ!」

 エマに足りないのは成功体験だ。成功体験を積み重ねていけばエマもビビることはなくなる。

 エマは焦る必要はないのに焦って早く魔法を撃とうとする。

 だけどジョブのおかげかエマの才能のおかげかは分からないが、ちゃんとムスペルヘイムを撃つことができた。

 ただし、加減など関係なしの最大火力をもって。

 ある程度遠くに放たれたはずのムスペルヘイムはここまで熱が届くほどの火力で、ダンジョンを揺らすほどの火力でモンスターたちを焼き尽くした。

 ムスペルヘイムという名に恥じない威力をエマは見せてくれた。

「ど、どう……?」
「あぁ、ちゃんとできていた。すごいぞエマ」
「ふひっ! ひひひひひっ……!」

 独特な笑い方で嬉しさを表現するエマ。

「ちょっと、あんなの何発も撃っていたらこっちを巻き込むわよ」

 ブレアはエマに聞こえないように俺に話しかけてくる。

「分かっている。最初は遠くのモンスターを狙わせるようにする」
「……宝の持ち腐れというのはこういうことね」

 それを俺好みに仕込んでいくのが楽しみで仕方がないんだよ。
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