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王都でも渦中
072:社交界終了。
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気を失ったスティードさんはエディさんが呼んできた使用人さんたちによって運ばれて行き、少しスッキリとした気持ちになりながらお父上様の元へと向かった。
「ただいま、父さん」
「アーサー、少しいいかな?」
「なに?」
お父上様の元へと行くと、お父上様は何故か険しい顔をしていた。トイレにでも行きたいのか?
「アーサー、僕が言っていなかったのも悪いと思うけど、その剣は何だい?」
「名前のないただの剣」
「そんなのがただの剣なわけがないよ……。どうしてそんなものをこの場で作ったんだ?」
「えっ、ランスロット家として派手な剣を作って勝てば、印象に残るかなって思って」
「うん、十分に印象の残っただろうね。だけどその後のことを考えていないよね、アーサー」
あと? ただ『創造』で作った剣を見せれたのだから、すごーいで終わるんじゃないのか?
「アーサーさま! 私にその剣をお譲りいただけませんか!?」
「いえいえ、この私こそがその剣に相応しい! 言い値で買いますぞ!」
「その剣はもはや国宝級の一品です! 私は財産の半分を出します!」
ものすごい勢いで俺に詰め寄ってきた貴族の人たちは、俺の持っている剣を凝視している。
かなり強い剣を作ったと自負しているが、ここまで反応して来るとは思わなかった。
まあランスロット家である俺がこれをしてもおかしくはない。今あるすべての名剣は大昔のランスロット家の当主が作ったと言われていて、それはカリブルヌスであろうと例外ではない。
ルーシー姉さんも『創剣』を極めれば実物の剣を作ることができるし、多種多様な剣を生み出すことが可能だ。それを生きている中でできるかどうかは別だけど。
そしてこの国の貴族は騎士寄りの貴族であるから、こういう剣には目がないのだろう。
お父上様が言っていたその後のことというのは、こういうことだったのか。これは本当に面倒だ。
「アーサー、この剣は誰かにあげていいものなのかな?」
「えっ、うーん……」
荒れているこの場でお父上様にそう聞かれたが、ここで俺が何度も作れると言ったらそれは面倒なことになるだろう。だからそれは言わないが、特にこの剣が必要なわけではない。
「一年に一本だけ作れるもので、大切な剣だけど今の僕には必要ないから……」
「では、一旦私に預けてみませんか?」
俺の言葉にこの社交界の主催者であるパトリス・ボールスさんがこちらに来ながらそう言ってきた。
「アーサー殿、私がその素晴らしき剣に相応しい人物を選定しましょう」
「はい、お願いします」
相談役みたいな役割を担っているボールス家の当主がこう言ってきているのだから、俺はそれに頷くしかない。
さらにボールス家の決定に他の貴族が何か文句を言えるはずもなく、その場はそれで落ち着いた。さすがはボールス家だな。
リザさんもこれくらいの対応ができれば、いいんだけどね。本当にどうしてボールスさんはリザさんを厳しくしつけないのだろうか。将来それで困るのは彼女自身なのに。
パーティー会場に戻る貴族たちを他所に、俺とお父上様はエディさんの元へと向かった。
「見事な戦いぶりでした、アーサーくん。自身を挑戦者だと名乗っていたとは言え、五歳の男の子にここまで完膚なきまでに倒されるとは思ってもみなかったでしょう」
エディさんはとても嬉しそうな感じだった。
「社交界の場で、スティードさんを倒してよかったんですか?」
「それがあいつの望んだことですから気にしなくてもいいですよ。それに社交界ではこういうことは毎回起きることではありませんが、珍しいことでもありません。挑戦する気概を貴族たちは見てくれるでしょう」
確かにそっちの方が騎士みたいな感じがするな。
「それなら良かったです」
「スティードはああ見えても天狗になっていました」
「天狗に」
「えぇ。私やアルノ殿では遠く及ばないと思っているのは事実でしょうが、それ以外の騎士たちに負けることはないと思っている節はありました。アーサーくんにも、勝てると自惚れていたところはいただけませんね」
冷静に息子を評価するエディさん。
「でも、スティードさんが聖域を使いこなせれば危うかったと思います」
「冗談を。スティードがいくら努力してもアーサーくんに勝つことはできませんよ。私やアルノ殿では訳が違う。アルノ殿も気づいておられるであろうが、アーサーくんには神が宿っている」
えっ、もしかして俺が魔神によって全能が与えられたことがバレたか?
「はい。アーサーには人智を超えた才能、それこそ神のような才能が宿っています」
「そんなアーサーくんに、いくら足掻いても秀才としか呼ばれない私の息子が勝てるわけがありません」
お、おぉ……息子なのに酷い言いようだな……。でも正しく表現するのは好感が持てる。
でも一人だけこの場で黙っているエレオノールさんがさっきから下を向いて黙っているのが怖いんだけど。
エレオノールさんは間違いなくブラコンだと思う。
さっきスティードさんと一緒にいた時、エレオノールさんはスティードさんに憧れ以上の感情を持っていたのが分かっていた。
だからその兄を俺はボコした訳だからキレられる覚悟はしている。
「……ない」
「はい?」
体を震わせて何か言おうとしているエレオノールさん。
「認めない! あんたがお兄さまに勝ったことなんか認めないわ!」
「認めないって言われても、勝ってしまったのですから認めない以外にないですよ」
「どうせあんたが卑怯な手を使ったんでしょう!? そうじゃないとお兄さまに勝てるわけがないじゃない!」
「エディさんがいたのにどうやって卑怯な手を使うんですか」
はぁ、もうこういうキャラはリザさんだけで十分なのにエレオノールさんとまで話していたらお腹いっぱいで吐きそうになる。
「……ッ! 何より、あんたなんかを立派な騎士だと思ってしまった私に腹が立つ!」
そう吐き捨ててエレオノールさんは走り去っていった。
何だかんだ言って、兄大好き―だけではなかったんだな。俺のことも見ていたみたいだ。
「アーサーくんを少しは気になっているようですね、エレオノールは」
「そうですか? かなり嫌われているように見えますね」
「そうでもありませんよ。あの子は人一倍騎士に憧れています。そんなエレオノールがああ言ったのですから、気にはなっているはずです」
あんな奴に気に入られても面倒なだけだ。メンドウはギネヴィアさまで十分だ。
……しかし、何だかエレオノールさんを見ているとモヤモヤとするんだよな。これから何かしてくれそうな予感と言うべきか。
この感覚は、クレアさんと出会った時と同じ感じがする。
まぁ、今はそんなことを思っていても仕方がないしあの性格だと無理だ。
とりあえずはボールス家主催の社交界は無事に終えることはできた。
「ただいま、父さん」
「アーサー、少しいいかな?」
「なに?」
お父上様の元へと行くと、お父上様は何故か険しい顔をしていた。トイレにでも行きたいのか?
「アーサー、僕が言っていなかったのも悪いと思うけど、その剣は何だい?」
「名前のないただの剣」
「そんなのがただの剣なわけがないよ……。どうしてそんなものをこの場で作ったんだ?」
「えっ、ランスロット家として派手な剣を作って勝てば、印象に残るかなって思って」
「うん、十分に印象の残っただろうね。だけどその後のことを考えていないよね、アーサー」
あと? ただ『創造』で作った剣を見せれたのだから、すごーいで終わるんじゃないのか?
「アーサーさま! 私にその剣をお譲りいただけませんか!?」
「いえいえ、この私こそがその剣に相応しい! 言い値で買いますぞ!」
「その剣はもはや国宝級の一品です! 私は財産の半分を出します!」
ものすごい勢いで俺に詰め寄ってきた貴族の人たちは、俺の持っている剣を凝視している。
かなり強い剣を作ったと自負しているが、ここまで反応して来るとは思わなかった。
まあランスロット家である俺がこれをしてもおかしくはない。今あるすべての名剣は大昔のランスロット家の当主が作ったと言われていて、それはカリブルヌスであろうと例外ではない。
ルーシー姉さんも『創剣』を極めれば実物の剣を作ることができるし、多種多様な剣を生み出すことが可能だ。それを生きている中でできるかどうかは別だけど。
そしてこの国の貴族は騎士寄りの貴族であるから、こういう剣には目がないのだろう。
お父上様が言っていたその後のことというのは、こういうことだったのか。これは本当に面倒だ。
「アーサー、この剣は誰かにあげていいものなのかな?」
「えっ、うーん……」
荒れているこの場でお父上様にそう聞かれたが、ここで俺が何度も作れると言ったらそれは面倒なことになるだろう。だからそれは言わないが、特にこの剣が必要なわけではない。
「一年に一本だけ作れるもので、大切な剣だけど今の僕には必要ないから……」
「では、一旦私に預けてみませんか?」
俺の言葉にこの社交界の主催者であるパトリス・ボールスさんがこちらに来ながらそう言ってきた。
「アーサー殿、私がその素晴らしき剣に相応しい人物を選定しましょう」
「はい、お願いします」
相談役みたいな役割を担っているボールス家の当主がこう言ってきているのだから、俺はそれに頷くしかない。
さらにボールス家の決定に他の貴族が何か文句を言えるはずもなく、その場はそれで落ち着いた。さすがはボールス家だな。
リザさんもこれくらいの対応ができれば、いいんだけどね。本当にどうしてボールスさんはリザさんを厳しくしつけないのだろうか。将来それで困るのは彼女自身なのに。
パーティー会場に戻る貴族たちを他所に、俺とお父上様はエディさんの元へと向かった。
「見事な戦いぶりでした、アーサーくん。自身を挑戦者だと名乗っていたとは言え、五歳の男の子にここまで完膚なきまでに倒されるとは思ってもみなかったでしょう」
エディさんはとても嬉しそうな感じだった。
「社交界の場で、スティードさんを倒してよかったんですか?」
「それがあいつの望んだことですから気にしなくてもいいですよ。それに社交界ではこういうことは毎回起きることではありませんが、珍しいことでもありません。挑戦する気概を貴族たちは見てくれるでしょう」
確かにそっちの方が騎士みたいな感じがするな。
「それなら良かったです」
「スティードはああ見えても天狗になっていました」
「天狗に」
「えぇ。私やアルノ殿では遠く及ばないと思っているのは事実でしょうが、それ以外の騎士たちに負けることはないと思っている節はありました。アーサーくんにも、勝てると自惚れていたところはいただけませんね」
冷静に息子を評価するエディさん。
「でも、スティードさんが聖域を使いこなせれば危うかったと思います」
「冗談を。スティードがいくら努力してもアーサーくんに勝つことはできませんよ。私やアルノ殿では訳が違う。アルノ殿も気づいておられるであろうが、アーサーくんには神が宿っている」
えっ、もしかして俺が魔神によって全能が与えられたことがバレたか?
「はい。アーサーには人智を超えた才能、それこそ神のような才能が宿っています」
「そんなアーサーくんに、いくら足掻いても秀才としか呼ばれない私の息子が勝てるわけがありません」
お、おぉ……息子なのに酷い言いようだな……。でも正しく表現するのは好感が持てる。
でも一人だけこの場で黙っているエレオノールさんがさっきから下を向いて黙っているのが怖いんだけど。
エレオノールさんは間違いなくブラコンだと思う。
さっきスティードさんと一緒にいた時、エレオノールさんはスティードさんに憧れ以上の感情を持っていたのが分かっていた。
だからその兄を俺はボコした訳だからキレられる覚悟はしている。
「……ない」
「はい?」
体を震わせて何か言おうとしているエレオノールさん。
「認めない! あんたがお兄さまに勝ったことなんか認めないわ!」
「認めないって言われても、勝ってしまったのですから認めない以外にないですよ」
「どうせあんたが卑怯な手を使ったんでしょう!? そうじゃないとお兄さまに勝てるわけがないじゃない!」
「エディさんがいたのにどうやって卑怯な手を使うんですか」
はぁ、もうこういうキャラはリザさんだけで十分なのにエレオノールさんとまで話していたらお腹いっぱいで吐きそうになる。
「……ッ! 何より、あんたなんかを立派な騎士だと思ってしまった私に腹が立つ!」
そう吐き捨ててエレオノールさんは走り去っていった。
何だかんだ言って、兄大好き―だけではなかったんだな。俺のことも見ていたみたいだ。
「アーサーくんを少しは気になっているようですね、エレオノールは」
「そうですか? かなり嫌われているように見えますね」
「そうでもありませんよ。あの子は人一倍騎士に憧れています。そんなエレオノールがああ言ったのですから、気にはなっているはずです」
あんな奴に気に入られても面倒なだけだ。メンドウはギネヴィアさまで十分だ。
……しかし、何だかエレオノールさんを見ているとモヤモヤとするんだよな。これから何かしてくれそうな予感と言うべきか。
この感覚は、クレアさんと出会った時と同じ感じがする。
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