全能で楽しく公爵家!!

山椒

文字の大きさ
117 / 120
都市開発本格始動

117:お父上様と電話

しおりを挟む
 ネットに百科事典のサイトを作ってそこにどんな知識を埋め込もうかと悩みつつ、俺はベラにねだられて『叛逆の英雄~時代をこえた叛逆~』をかいていた。

「ベラはアニェスが見たいんじゃないの?」
「見たいです」
「ならそっちをかいた方がいいんじゃないかな?」
「いえ、こちらも見たいです。どちらも続きが気になります」
「でもこっちの方をかくと」
「はい。こちらは一話しか見ていないのでまだ満足できていません」
「そっか……」

 え? ベラは俺を公爵家当主にするんじゃなくて漫画家にしようとしていないか? まあ公爵家当主か漫画家って選択肢になれば漫画家になるけど俺はどちらもしないといけないんだろ? 冗談かよ。

 俺の最終目標であるネットがある環境でダラダラするという目標が俺自身の手で遠のいているような……いやそもそもその目標の時点で無理なのか……?

 まあ疲れはしないしダラダラとかいているからいいんだけどさ。

 そう思いつつベラの膝の上で漫画をかいているとこちらに急接近してくる人がいた。グリーテンだ。

「アーサー! 秘密の部屋はどこにあるのかしら!?」

 グリーテンは扉を乱暴に開け放ち俺を抱き寄せながらそう聞いてきた。

 ベラからあんな簡単に流れるように奪えるとはさすがは七聖法と言える。魔法は全く関係ないけどね。

「グリーテンさま、乱暴に扉を開けないでください。それからアーサーさまを返してください」
「別にあなたのものじゃないでしょう?」

 ベラとグリーテンが俺を挟んで火花を散らしているがやめてくれませんか?

「グリーテン、どうしてそんなことを聞いてきたの? お手上げ?」
「自分で探そうとしていたのだけど、これを見て早く秘密の部屋に行きたいと思ったのよ! こんなの速く見たいに決まっているわ!」

 グリーテンがスマホを見せてきてそれには秘密の部屋のアプリが起動されていた。

「……お父さんから聞いたの?」
「そうよ。アルノさまがアプリストアのこれを教えてくれて、これがどこにあるのか知っているかって聞いてきたのよ」
「ベラ、お父さんに場所までは教えてなかったの?」
「はい、今は不要かと思いまして」

 もしかしてお父上様はベラが隠しているのかと思ったのかな? それでグリーテンに聞いたと。

 そもそもの疑問なのだが、どうしてお父上様はかなり早くにこのアプリの存在に気が付いたのだろうか。シルヴィー姉さんやルーシー姉さん、それにクレアやノエルさんの誰かが見つけて聞いたのかもしれない。

 それならもうあちらの家族も含めて広まっているってことか……まあサグラモール家ならいいけど。

「それでどこなの!? この飛行車はどこにあるの!?」

 興奮した様子で俺を抱きしめて聞いてくる。グリーテンが俺を抱きしめる時はいつもグリーテンの谷間に俺の頭がフィットしていい気分だ。

「アーサーさまをお放しください」
「いやよー」

 またベラとグリーテンの俺の取り合いが勃発しそうになったから俺は秘密の部屋の入り口が出現するよう電波を送れば壁から入り口が出てきた。

「あそこが秘密の部屋の入り口だよ」
「へぇ……!」

 すごい興奮した様子がその漏れ出た言葉だけでも分かる。

「アーサーさまはここで漫画をかいているのでお一人でどうぞ」
「また新しい漫画をかいているのね。でも私一人の方がじっくりと見れるからそうさせてもらうわ」

 グリーテンは俺を放して入り口に入れば何もかも興奮した様子で下に行った。

「これで静かになりましたね」
「まあまたここから上がってくるんだけどね」
「……なぜここに入り口をお作りになられたのですか?」
「だって他のところだと誰か入るかもしれないけど、ここなら誰もが注目してるでしょ?」
「……なるほど」

 まあ俺の場合はどこに作ってもいいけどここの方がロマンがあるし。どうせならベッドで寝て下に落ちていく、みたいなものも想像したがまあ却下した。ロマンだけではダメだからな。

「さ、アーサーさま。お手が止まっていますよ」
「えっ……はい」

 勉強しているわけでもないのにそんなことを言われるとは思わなかった。本当に俺に忠誠心があるのかと思ったけどこれくらい遠慮がない方がいいか。

 でもブラック企業みたいだ……。

 ベラの監視下、本格的な娯楽生活のために頑張り続ける。この漫画がウケれば娯楽都市が出来上がった時に盛り上がりを見せるだろうしネット環境も充実するはずだ。

 だからこその頑張り。今ここで頑張らなければいけないんだ!

「この漫画は私たちの時代よりも先を想定しているのですよね?」
「うん、そうだよ」
「アーサーさまの子孫は出てくるのですか?」

 子孫……うーん、どうだろうか。フィクションだからそこら辺を考える必要はないと思っていたんだが。

「ベラは出してほしいの?」
「いえ、純粋な疑問です。出してほしいと思っているわけではありません」
「実在の人物は『叛逆の英雄』に出てくるジャックたち以外は想定していないかな。まあ何か要望があればかくかもしれないけど」
「分かりました」

 そう言えばこの時代にジャックたちの子孫がいたな。気になって調べたことがあったけど。それを本人たちは気付いていないようだ。

 とにかく、今はそれを考えずにかこう。もし要望が多ければ設定を付け加えればいいし。

 ベラの体は極上の座り心地で極上の背もたれであるから二時間ほどぶっ通しでかき続けれた。何だか文字面が少々鬼畜な感じがするけどベラの要望だしそれは問題ないか。

 もしベラから四つん這いになっている背中に座ってくださいって言われたらどうしよう。まあ遠慮しながら座ると思う。

「あっ、グリーテン」

 グリーテンが思いのほか早く帰ってきた。もう明日までこもっているのかと思ったが、そこまでだったのか?

「すごかったわ……」

 グリーテンの顔を見たら違った。

 涎を垂らしており上気した顔になりイっている危ない顔をしているからとても良かったのだろう。

 そんなグリーテンを見ていた目はベラの両手によって塞がれた。

「あんなのは見てはダメです」

 まあ教育上良くはないことは分かっている。でも俺の精神年齢は成人しているからエロイなとは思う。

「グリーテンさま、そのだらしない顔をおやめください」
「だってー……すごく、よかったわぁ……」

 グリーテンの声色が艶めかしくてエッチなセリフにしか聞こえない。

「アーサーさまの前ですよ」
「大人の私を、これだけの顔にさせれるって分かってもらえるじゃない……」
「……アーサーさま、これ以上グリーテンさまに近づいてはなりません」

 嫉妬とかではなく普通にドン引いているな、ベラ。

「グリーテン、出てくるの早かったね。あまりお気に召さなかった?」
「そんなことないわよ! もうとっても良かったわ! あそこの一室を私の部屋にしてもいいわよね!?」
「うん、いいよ」

 どうせ余っているだけだし。

「アーサーさま、他のところに入り口を作らなければいけませんね」
「あー、うん、そうだね」

 そうか、グリーテンが下にいたら誰にも気づかれずに俺の部屋に入ってこれるのか。大人しくベラに従っておこう。

「それで、気に入ったのにどうして?」
「アルノさまがアーサーに返事をしてくれと伝えてほしいって言われたのよ。だからそれを伝えに一度上がってきたの。もう行くわね」

 グリーテンは用件を伝えるだけ伝えてまた秘密の部屋に向かった。

「お父さんからか……」

 一度無視していたがそれをまあお父上様に気付かれているわけではないからいいか。

「アーサーさま、腹をくくるべきかと」
「そうだよね……」

 俺は腹をくくってスマホを取り出してお父上様からのメッセージを見る。

『電話しようか』

 最後のメッセージがそれだったから俺はお父上様に電話をかける。

『アーサー?』

 ワンコールで出たお父上様の声は圧があった。

「なに? お父さん」
『ベラから秘密の部屋のことを聞いたし、グリーテンから秘密の部屋の写真をとってもらって飛行車のことも写真を受け取ったよ。もうこの際どうして僕に言わずに作ったとかは聞かないでおくよ』
「えっ? うん……」

 あれ、何だかお父上様の声が疲れているような気がするな……俺のせいか? まあお父上様がこの屋敷にいても秘密で作っていたが。

『それでだ。アーサーのこのアプリからの説明を見るに、これは人を運ぶための飛行船みたいな感じでいいのかな?』
「うん、その認識で合ってるよ」
『それなら少し頼まれてほしいことがある』

 何だか話すたびにものすごくお父上様の声が疲れてきている気がするな。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

処理中です...