英雄は恥を晒す

yulann

文字の大きさ
24 / 27

第二章 第一節

しおりを挟む
「どうしてこんなことに? 誰がこんなことを?」

「私のことはいいの。それよりも、マオのことをお願い。世界が滅びる前に。世界を救って」

「私にそんなこと・・・」

「大丈夫。貴方は私が信じた最高の妹よ。私を信じて」

「分かった。でも、その子は・・・・」

「貴方に任せるわ。世界がいい方向に進むように、この子のこともお願いね」

「うん」

 女性は勢いよく扉を開けて出ていく。

「どうしてこんなことになったのかな? ただ一緒に生活して、子供を育てて、ずっと一緒に笑っていたかっただけなのに。ごめんね。マオ。一人にしてごめんね。いつか必ず、貴方を迎えにいくからね」

 女性が見せた初めての涙。その涙と共にマオは目を覚ました。その瞳からは涙が流れていた。

「どうした? 変な夢でも見たか?」

「ここ数年見てなかったのに。多分、アルメリアさんに関する夢だった」

「ああ。マオに力を貸してくれたって人だったな。あの時以来会えてはないんだろう?」

「うん。どうして急に。何かの前触れなのかな?」

「気にしてもしょうがないだろ。今日は特別な日だ。そのことは一旦忘れて今日に全力を出し切ろうぜ」

「そうだね。僕たちの集大成だ。最高の結果を残そう」

 いつもの登校時間よりも二時間ぐらい早く、最高学年の生徒は校舎から遠く離れた森に集まっていた。そこには校長を始めとする教師陣のほぼ全員が集まっていた。

「全員集まったな。事前にも通達してあったが、最終試験内容の確認をおこなう。森を囲うように貼る結界の中で、チームごとに生き残りをかけて戦うバトルロイヤルだ。チームは最大四人。チームごとにリーダーを決めてもらい、リーダーの魔法具が発動した時点でそのチームは失格。他のメンバーの魔法具が発動しても続行となる。リーダーを倒した場合は三点。他のメンバーは一点。リーダーのみを倒した場合他のメンバーの得点は加算されないので注意するように。最後まで生き残ったチームには生存ポイントとして五百ポイント付与する」

 途中で退学した者も多く、三万人いた生徒は一万人近くまで減っていた。だが、それでも一万人が一つの目的に向かって競争する。競争が過激化するのは明白だった。

「なお、このバトルロイヤルには教師陣も参加する」

「え? 先生達も?」

「そうだ。ただし、教師陣はチームを組むことはないし、撃破時にボーナスポイントがつく」

「ボーナス?」

「教師一人を倒すごとにそのチームに千二百ポイントを加算する。効率よく倒したとしても、四人チームなら二百チーム分に匹敵する。回復薬を一定数持ち込めるとはいえ、二百チームを倒すのは至難の技だろう。それに見合う価値はあると判断した」

「先生達は森の中を巡回するんですか?」

「そういうわけでない。一定の範囲を決めてその中を巡回するという感じだ。範囲内に入った生徒は容赦無く攻撃する。その範囲の見極めもとても重要な戦法の一つだろう。ただし・・・」

「ただし・・・?」

「トネー先生はメルセを赤で引退してまだ日が浅いということもあり、遊撃者として参加してもらう。範囲に縛られず、自由に戦闘をしてもらう。自分たちが目指す者の実力を味わい、力を試す最後のいい機会となるだろう。その代わり、トネー先生を撃破したチームは二千点のボーナスを付与する。彼はそれだけ強い」

「そんな。トネー先生に見つかったら終わりじゃないですか」

「そうかもしれんな。だが、戦場はそんなに簡単な場所ではない。相手は止まって待ってくれないし、魔法具がない可能性だってある。魔物との戦いで魔法具が発動したとして、生きて帰れる保証はどこにもない。そんな戦場に君達はこれから足を踏み入れる。名声のため。お金のため。さまざまあるだろう。だが、そこは理不尽の嵐だ。だからこそ、自分の限界を図る最後の場所として、自分の限界を超える初めの一歩として、君達が最高の結果を残すことを期待している。怯える者もいるようだが、先生との戦いが楽しみで仕方がないという者もいるようだ」

 教師の視線の先には、トネーのクラスの生徒達が笑みを浮かべていた。苦笑いではない。純粋にこれから起こることを楽しみにしている表情だ。

「君たちもわかっていると思うが、君たちは優秀だ。本来、一万人も生徒が残ることはない。半分、いや、多くても三千人いればいい方だ。まあ、誰かの影響もあるかもしれないが。そのことを自覚し、自信をもて。試験の開始は一時間後、日の代わりを持って終了とする。試験開始一時間後に教師陣には戦闘に加わってもらう。試験という名前だが、0点だからといって退学になるわけではない。全身全霊を持って試験に臨んでくれ」

「「「はい」」」

 生徒達の覇気のこもった返事によってその場は解散となる。

「よし準備は万端だね」

「うん。絶対に最後まで生き残ろう」

「当たり前だ」

 マオ達はいつもの三人でメンバーを組み開始の合図をまった。

 ドカーン

 遥か上空に巨大な火花が咲き誇る。

「さあ開始の合図だ。僕たちは英雄になる。そのためにも負けるわけにはいかない」

 マオ達にとって、長い長い波乱万丈の一日が幕をあげた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

追放された最強令嬢は、新たな人生を自由に生きる

灯乃
ファンタジー
旧題:魔眼の守護者 ~用なし令嬢は踊らない~ 幼い頃から、スウィングラー辺境伯家の後継者として厳しい教育を受けてきたアレクシア。だがある日、両親の離縁と再婚により、後継者の地位を腹違いの兄に奪われる。彼女は、たったひとりの従者とともに、追い出されるように家を出た。 「……っ、自由だーーーーーーっっ!!」 「そうですね、アレクシアさま。とりあえずあなたは、世間の一般常識を身につけるところからはじめましょうか」 最高の淑女教育と最強の兵士教育を施されたアレクシアと、そんな彼女の従者兼護衛として育てられたウィルフレッド。ふたりにとって、『学校』というのは思いもよらない刺激に満ちた場所のようで……?

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

処理中です...