性の無い僕らを愛して

なよ。

文字の大きさ
12 / 13

第十二章

しおりを挟む
 「お前、何でアイツとキスしたの?」

 夏樹が僕を怒ったように睨む。少し怖かった。

 「可愛かったからって言ったら夏樹は怒るよね?」

 「当たり前だろ! 自分の性別をいい加減自覚しろよ!! お前今は女なんだよ!!」

 夏樹が起こる。僕は周りを見て少し慌てた。今は女だって言葉、人によっては面倒な捉え方するから本当は控えて欲しいけど、頭に血が上った夏樹はそこまで気が回らなかった。

 「な、夏樹、ごめん、謝るから抑えて」

 「はぁ!? 俺は冷静だよ!! てか、あいつが…………名前なんだっけ? えっと……」

 「逢ちゃん」

 「そう、そのアイって奴がお前の事好きになったらどうするんだよ!?」

 「ならないでしょ? あの子、多分僕と性別無い理由が違うもん」

 「どういう事だ?」

 無性別者は幾つかパターンがある。

 僕のように好きな人が居たら、その人の性別で自分の性別が決まるパターンがあるけど、逢の場合は身体的性別で決まるタイプみたいだ。本来、生まれた時に現れるはずの性別が、成長してもなかなか現れない。でも、ホルモンバランス的に性別が決定されているから、成長の過程でどちらかになる。

 逢の場合は多分このパターンだ。

 でも、これは少し問題があって。

 自分の性別に強い違和感を持つようになるから心と身体で強いかい離が現れる。その為精神的な抵抗が強くなり性別が現れるのが遅くなる場合がある。……って中村先生が言っていた。

 逢は多分、女の子になる。でも、心が男の子だからホルモンバランスが崩れて性別が現れにくくなっている。無性別者の性同一性障害。

 自然界には両方の性別がある個体があるけど、脊椎動物まで進化した生物は必ずどちらかの性別にしかなれない。脳が処理できないからだとか、身体の負担が考えられるとか色々あるけど詳しくは分かっていない。

 って言うのを夏樹に簡単に説明した。

 僕もよく理解していないから。

 「ふーん、俺らのとは少し違うんだな。てか、心の性が男なら俺らと同じように女好きになれば良いんじゃね?」

 「はぁ、夏樹は本当に無性別者だったの?」

 「あっ!?」

 夏樹が少し苛立って居る。

 「良い? ひとつの身体に女の子と男の子が居るんだよ? どっちの心もあるんだから反発し合うでしょ? 片方だけ現れようなんて、片方を殺そうとするものなの。それだと、選ばれなかった方は生きようと自分が先になるようにするでしょ?」

 「……お、おぉ」

 「理解してる?」

 「うっ、あまり……」

 「正直だね」

 「おう!」

 「夏樹のそういう所好きだよ」

 「俺もヒバリの事大好きだぞ」

 「うーん、要らない」

 「え?」

 「えへへ」

 夏樹とこういう会話って僕、結構好きなんだよね。

 すっごく自然体で話せるし、気兼ねなく本音言えるし、それに好きってお互いに分かっているから、裏切らないっていうのは心から安心する。

 「嘘だよ。可愛いなぁ、夏樹のそう言う拗ねた所」

 「はぁ!? 可愛いくねぇし!! てか、男に可愛いとかキモイだろ?」

 「え、キモくないよ」

 「キモイ」

 「キモくない」

 「キモイ」

 「キモくない」

 「キモイ」

 「好き」

 「はぁ!?」

 「ええ、引っ掛からなーい!!」

 「お前、最近俺で遊んでないか?」

 「ばれた?」

 「おう」

 そっか、バレていたかー。

 「……なんだよ、急に手なんか繋いで」

 「うん? 一緒に教室まで行こうって思って」

 「いつも行ってるだ?」

 「今日は何か特別」

 「何だよそれ」

 「えへへ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...