S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

第７章 Fate

８

　それからしばらくの間、茂美さんの店のキッチンで働きながら、じっとほとぼりが冷めるのを待った。

　とは言っても、アイツらが茂美さんの店へ俺を尋ねて来ることは、一度もなかったけど。

　あれから何日も経ってるし、何と言っても茂美さんの店は街の中心地、繁華街からは遠く離れた所にひっそりと佇んでいて、そんな場所に、しかもゲイバーがあるなんて、地元の人でも知らない人が多いくらいだ。簡単に俺の居所を突き止めることなんて、絶対出来っこないって……、諦めたんだ……って、そう思った。

　勿論、逃げてばかりいたってどうにもならないことは、こんな馬鹿な俺でも分かっていた。
　でもまたアイツらに見つかれば、また好きでもない相手に身体をいいようにされる、あの生き地獄のような世界に逆戻りすることになる、そう思ったら怖くて……

　だから俺は、どこにいても常に息を潜め、人目を避けるようにして日々を送っていた。そうしていれば、いつかアイツらだって俺の存在なんて忘れるだろうって……


　自分のことしか考えてない、甘くて、狡い考え。


　大体六百万もの大金を、アイツらがそう簡単に諦めるなんてあるわけないし、金儲けの為だったら手段を選ばない奴らだって、十分過ぎる程分かっていたのに……


　どうして気付かなかったんだろう。
　まさか俺の知らない所で、大事な人達が傷付こうとしていることを……


　大切な人が、人知れず涙を流していることを……
　愛する人の肩を抱くことも出来ず、一人苦悩していることを……


　どうして俺は気付かなかったんだろう。


　もっと早くに気付いていれ、誰も悲しませず、苦しめることも無かったのに……って、今更もう遅いんだけどさ……



　俺は智樹を傷付けてしまったから。



　大切な友達を泣かせてしまったから……