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第19章 Clue
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余程疲れが溜まっていたのか、朝までソファーで眠ってしまった俺は、朝の空気に冷えた身体を熱いシャワーで暖めた。
朝飯なんて、智樹が出て行ってからは一度もとったことが無いから、インスタントのコーヒーだけを片手に新聞を捲ったその時、ふと充電器に繋がれたままの、智樹のスマホが目に入った。
アルバムを借りて来たはいいが、松下潤一と知り合ったのが高校に入ってからとなると、結局は何の頼りにもならない。
だとすれば、後は智樹が以前使っていたと言うスマホと、ごく最近まで使っていたスマホだけが頼みの綱と言うことになるが、智樹が出て行く直前まで使っていたスマホは、メールはおろか、着信履歴に至るまで見事に消去されていて、たった一枚、俺が無理矢理一緒に並んで撮った写真が残っているだけだった。
後は電話会社から取り寄せる通話記録を待つしかないが、それだっていつになることか……
俺は息を一つ吐き出し、スマホから充電器を引き抜き、電源を入れた。
スマホが完全に立ち上がるまでの時間に酷くもどかしさを感じながら、その反面、このままずっと電源が入らなければいいと思ってしまうのは、智樹が松下潤一を一瞬でも愛したという事実を知りたくないからだ。
今更知ったところで、俺の智樹への気持ちが変わるわけでもないけど。
やがて俺の手の中でスマホが小さく震え、暗証番号の入力を求める画面が表示された。
俺は慣れた手つきで四つの番号を入力すると、最後にエンターキーを押した。智樹は単純な上に面倒臭がりだから、キャッシュカードを初めとして、暗証番号はいつも同じ数字に設定してある。
そしてこのスマホもそう、同じ数字の並びで暗証番号は設定されていた。
「不用心な奴だな、全く……」
呆れてる訳じゃない、昔から根本的なところは何一つ変わっていないということに、何故だか喜びを感じてしまった俺は、思わず笑いを零した。
でもその笑みは、トップ画面が開いたと同時に凍りついた。
電波が繋がったと同時に受信される何通ものメッセージ、そのどれもが松下潤一から送られて来た物だった。
「会いたい……」
「どこにいる」
「お前は俺の物だ」
そんなメッセージが、智樹が実家を出る数週間前まで続いていた。
朝飯なんて、智樹が出て行ってからは一度もとったことが無いから、インスタントのコーヒーだけを片手に新聞を捲ったその時、ふと充電器に繋がれたままの、智樹のスマホが目に入った。
アルバムを借りて来たはいいが、松下潤一と知り合ったのが高校に入ってからとなると、結局は何の頼りにもならない。
だとすれば、後は智樹が以前使っていたと言うスマホと、ごく最近まで使っていたスマホだけが頼みの綱と言うことになるが、智樹が出て行く直前まで使っていたスマホは、メールはおろか、着信履歴に至るまで見事に消去されていて、たった一枚、俺が無理矢理一緒に並んで撮った写真が残っているだけだった。
後は電話会社から取り寄せる通話記録を待つしかないが、それだっていつになることか……
俺は息を一つ吐き出し、スマホから充電器を引き抜き、電源を入れた。
スマホが完全に立ち上がるまでの時間に酷くもどかしさを感じながら、その反面、このままずっと電源が入らなければいいと思ってしまうのは、智樹が松下潤一を一瞬でも愛したという事実を知りたくないからだ。
今更知ったところで、俺の智樹への気持ちが変わるわけでもないけど。
やがて俺の手の中でスマホが小さく震え、暗証番号の入力を求める画面が表示された。
俺は慣れた手つきで四つの番号を入力すると、最後にエンターキーを押した。智樹は単純な上に面倒臭がりだから、キャッシュカードを初めとして、暗証番号はいつも同じ数字に設定してある。
そしてこのスマホもそう、同じ数字の並びで暗証番号は設定されていた。
「不用心な奴だな、全く……」
呆れてる訳じゃない、昔から根本的なところは何一つ変わっていないということに、何故だか喜びを感じてしまった俺は、思わず笑いを零した。
でもその笑みは、トップ画面が開いたと同時に凍りついた。
電波が繋がったと同時に受信される何通ものメッセージ、そのどれもが松下潤一から送られて来た物だった。
「会いたい……」
「どこにいる」
「お前は俺の物だ」
そんなメッセージが、智樹が実家を出る数週間前まで続いていた。
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