254 / 369
第21章 Fade away
3
しおりを挟む
そんなある日、いつものように佐藤の自宅に向かった俺を、佐藤は行き先を告げることなく外へと連れ出した。
「お、おいっ、そんな勝手なこと良いのかよ」
もし潤一に知れたら、佐藤に会えなくなる。
佐藤のことは嫌いじゃない。
勿論、恋愛感情かと問われたら、それとは違うんだろうけど。佐藤と一緒にいると、自分を偽らなくて済む。それが俺にとっては一番の安らぎであり、唯一落ち着ける場所でもあった。
その佐藤に会えなくなるのは、今の俺にとっては……自分が消えていく恐怖と、罪の意識に苛まれるだけの日々を過ごす俺にとっては、正直辛い。
佐藤の車の助手席に座り問い詰める俺を、佐藤は一瞥することもなくハンドルを握り、アクセルを踏み込んだ。
自分でレーシングチームを持っていると言っていただけあって、佐藤の運転は翔真の神経質過ぎる運転に比べてとてもスムーズで、高速で駆け抜ける車窓から見る景色は、時折俺の脳裏を掠める走馬灯にも似た物があった。
「なあ、いい加減行き先くらい言えよ」
身体をスッポリと包み込む少し硬めのシートに背中を預け、一つ伸びをする。
「眠かったら寝てていいんだよ? 着いたら起こして上げるから」
車が走り出してから凡そ三十分、漸く聞いた近藤の声は酷く優しくて……
「どこに連れてかれるかも分かんねぇのに、おちおち寝てられっかよ。それより、何か話してよ」
眠たくなんてない。でも、一度睡魔に負けてしまったら、起きられる自信はない。
「話って? 何を?」
「何でもいいよ。仕事の話でも、元カノ……だっけ? 前に言ってただろ? 結婚考えた女がいたって」
「その話はあんまりしたくないな。特別良い思い出でもないし」
視線をフロントガラスに向けたまま、佐藤が苦笑する。
「じゃあ他の話してよ」
「そうだな、俺の話より、俺は智樹の話を聞きたいな」
「俺の? なんで?」
どうして佐藤がそんなことを言い出したのか、その時の俺は全く分からなくて……
「俺は人に話せるような、立派な人生歩んでないし……」
話をはぐらかすように、視線を車窓へと向けた。
「お、おいっ、そんな勝手なこと良いのかよ」
もし潤一に知れたら、佐藤に会えなくなる。
佐藤のことは嫌いじゃない。
勿論、恋愛感情かと問われたら、それとは違うんだろうけど。佐藤と一緒にいると、自分を偽らなくて済む。それが俺にとっては一番の安らぎであり、唯一落ち着ける場所でもあった。
その佐藤に会えなくなるのは、今の俺にとっては……自分が消えていく恐怖と、罪の意識に苛まれるだけの日々を過ごす俺にとっては、正直辛い。
佐藤の車の助手席に座り問い詰める俺を、佐藤は一瞥することもなくハンドルを握り、アクセルを踏み込んだ。
自分でレーシングチームを持っていると言っていただけあって、佐藤の運転は翔真の神経質過ぎる運転に比べてとてもスムーズで、高速で駆け抜ける車窓から見る景色は、時折俺の脳裏を掠める走馬灯にも似た物があった。
「なあ、いい加減行き先くらい言えよ」
身体をスッポリと包み込む少し硬めのシートに背中を預け、一つ伸びをする。
「眠かったら寝てていいんだよ? 着いたら起こして上げるから」
車が走り出してから凡そ三十分、漸く聞いた近藤の声は酷く優しくて……
「どこに連れてかれるかも分かんねぇのに、おちおち寝てられっかよ。それより、何か話してよ」
眠たくなんてない。でも、一度睡魔に負けてしまったら、起きられる自信はない。
「話って? 何を?」
「何でもいいよ。仕事の話でも、元カノ……だっけ? 前に言ってただろ? 結婚考えた女がいたって」
「その話はあんまりしたくないな。特別良い思い出でもないし」
視線をフロントガラスに向けたまま、佐藤が苦笑する。
「じゃあ他の話してよ」
「そうだな、俺の話より、俺は智樹の話を聞きたいな」
「俺の? なんで?」
どうして佐藤がそんなことを言い出したのか、その時の俺は全く分からなくて……
「俺は人に話せるような、立派な人生歩んでないし……」
話をはぐらかすように、視線を車窓へと向けた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる