S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
317 / 369
第25章   End of Sorrow

15

しおりを挟む
 しきりに不安を口にする雅也に、俺はある人物の名前を告げた。
 すると雅也はそれまでの不安顔を一転、無邪気な子供のように目を輝かせた。

 「マジで? マジであの人が?」

 雅也が驚くのも無理はない。
 俺だって最初返答を貰った時は、我が耳を疑ったくらいだから。

 「どうだ? 俄然やる気になっただろ?」
 「勿論だよ。だって坂口さんだよ? あの人なら、名前も知れてるし、百人力だよ」

 確かに雅也の言う通りで、坂口の経営するダンススタジオからは、プロとして活躍するダンサーも多く排出しているし、坂口のレッスンを受けたくてスタジオに通うダンサー志望の生徒も多いのは事実だ。
 そして坂口自身も、かつては多くの舞台を踏んだ経験もあるプロのダンサーだ。

 その坂口が企画運営に加わるとなれば、劇場としては願ってもない宣伝材料になる。
 加えて、副支配人として俺の右腕を務めてきたとは言え、直接運営に関わるにはまだまだ不安の残る雅也のサポートまでしてくれると言うのだから、これ程有難い話はない。

 運営から退くことを決めた俺にとっても、大きな安心材料の一つになる。

 「そっか、あの坂口さんが……。あ、ねぇ、もしかしたらこの劇場から世界で活躍出来るようなダンサーが出ちゃったりしてね?」
 「そうだな、それも夢じゃないかもな」

 それが例えば智樹であって欲しいと願ってしまうのは、まだダンサーとしての智樹を諦めきれていないからなんだろうな。


 ま、諦めるつもりは毛頭ないが……

 出来ることなら、劇場がストリップ劇場として最後の役目を終えるその時は、智樹と一緒に迎えたい。
 智樹のステージで幕を引き、次に幕を開ける時も、智樹と……


 「あ、ところでこれ……」

 俺は財布の中に仕舞ってあった小さな紙切れを、チワワと戯れる雅也の前に差し出した。

 「これは?」

 幾つかの数字が書かれた紙切れを手に取り、雅也が首を傾げる。

 「和人の携帯番号だ」
 「えっ、和人の?」

 瞬間、雅也の目が大きく見開かれ、紙切れを持つ手が心なしか震えたように見えたのは、俺の気のせいだろうか……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

処理中です...