愛玩人形

第13章 特別編「偏愛…」

４６

「まずいな……、ここにも来ていないとなると、智翔は一体どこに……」

　腕を組んだままの姿勢を変えることなく、二木が舌打ちをする。

　そして僕を振り返ると、「行先に心当たりは……？」と険しい表情を僕に向けた。

「心当たりと言われても……」

　幼い頃ならともかく、今の智翔が行きそうな場所など、思い当たるわけが無い。

　それでも、

「まさか潤一の所……とか……」

　唯一思いついた名前を口にするが、二木は即座にそれを否定した。

「それは無い」と、既に潤一には確認済みだと……

「じゃあ一体どこに……」

　智翔の身を案ずれば、こんな所で佇立している場合ではないことは分かってる。
　かと言って闇雲に動き回っていては、それこそ智翔の発見も遅れかねない。


　そうなれば智翔は……


「あっ……、もしかして……」
「どうした、心当たりでも？」
「いや……、分からない。でも、智翔が行く所といったら、あそこしかない」

　僕は二木に車の手配を頼むと、適当に着替えを済ませ、庭先に出て二木の到着を待った。

　気は酷く急いていた。
　ただ不思議なことに不安はなかった。


　もし僕の予想が正しければ、智翔はあの場所にいる筈だ。
　智翔がまだ幼い頃、夏になれば毎年のように三人で行っていた場所に……