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それ以来、僕は兄様の部屋に行くのを止めた。
だって、和人君に触れた手で、僕に触れて欲しくなかったから……
そんなある日、和人君の知人だという男が屋敷を訪ねてきた。
でもその日はたまたま和人君が二木の家に帰っていて、屋敷にはいなくて、僕がそのことを伝えると、爽やかを絵に描いたようなその青年は、悲しげに顔を曇らせた。
なんだか申し訳なくなってしまった僕は、せっかく訪ねて来てくれたんだからと、青年を応接間に通した。
向かい合せに座った僕達に、松下がお茶を淹れてくれた
「私はあちらに控えておりますので、ご用の際はお呼びくださいませ」
ピンと伸ばした腰を折り、松下が部屋を出て行くのを見計らって、漸く僕は口を開いた。
「相原さん、でしたね? 和人君とは一体……」
所在なさげに落ち着かない様子の相原さんが、慣れない手つきでお茶の入ったカップを持った。
「あの、実は俺……いえ、私はつい最近まで二木の家の使用人でして……」
あぁ、だからか……
身につけている物は、決して安物ではないのだろうけど、寸法はまるで合っていないし、よく見ると襟元は勿論、袖口や裾だって擦り切れている。恐らく主人のお下がりか何かだろう。
この状況に落ち着かないのか、相原さんは長身の背中を丸め、縮こまるようにソファーに座っていた。
「その〝使用人〟のあなたがどうして和人君を?」
「それは、その……、ある日突然坊ちゃんからお暇を出されまして……」
口籠る相原さんに、僕は更に言葉を続けた。
「もしかして、和人君とあなたは恋仲だったのでは?」
当てずっぽうなんかじゃない、相原さんの様子を見ていたら、何となくだったけどそう思ったんだ。
でもその一言に、目の前の相葉さんが激しく動揺したようで……
「そう、なんですね……?」
再度尋ねると、相原さんが僕を見ることなく頷いた。
やっぱり……
僕は、自分の中に初めての感情が、沸々と芽生え始めるのを感じた。
だって、和人君に触れた手で、僕に触れて欲しくなかったから……
そんなある日、和人君の知人だという男が屋敷を訪ねてきた。
でもその日はたまたま和人君が二木の家に帰っていて、屋敷にはいなくて、僕がそのことを伝えると、爽やかを絵に描いたようなその青年は、悲しげに顔を曇らせた。
なんだか申し訳なくなってしまった僕は、せっかく訪ねて来てくれたんだからと、青年を応接間に通した。
向かい合せに座った僕達に、松下がお茶を淹れてくれた
「私はあちらに控えておりますので、ご用の際はお呼びくださいませ」
ピンと伸ばした腰を折り、松下が部屋を出て行くのを見計らって、漸く僕は口を開いた。
「相原さん、でしたね? 和人君とは一体……」
所在なさげに落ち着かない様子の相原さんが、慣れない手つきでお茶の入ったカップを持った。
「あの、実は俺……いえ、私はつい最近まで二木の家の使用人でして……」
あぁ、だからか……
身につけている物は、決して安物ではないのだろうけど、寸法はまるで合っていないし、よく見ると襟元は勿論、袖口や裾だって擦り切れている。恐らく主人のお下がりか何かだろう。
この状況に落ち着かないのか、相原さんは長身の背中を丸め、縮こまるようにソファーに座っていた。
「その〝使用人〟のあなたがどうして和人君を?」
「それは、その……、ある日突然坊ちゃんからお暇を出されまして……」
口籠る相原さんに、僕は更に言葉を続けた。
「もしかして、和人君とあなたは恋仲だったのでは?」
当てずっぽうなんかじゃない、相原さんの様子を見ていたら、何となくだったけどそう思ったんだ。
でもその一言に、目の前の相葉さんが激しく動揺したようで……
「そう、なんですね……?」
再度尋ねると、相原さんが僕を見ることなく頷いた。
やっぱり……
僕は、自分の中に初めての感情が、沸々と芽生え始めるのを感じた。
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