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「参りましょうか?」
ワゴンを押す松下の後ろを、僕は徐々に熱が高まって来た身体を引き摺りながら着いて行った。
松下が兄様のお部屋の扉を叩くけど、相変わらず中からの返事はない。
「失礼します」
取っ手を回しながら、松下が開きかけた扉に向かって頭を下げた。
「翔真様、お茶をお持ちしました」
「ありがとう」
薄闇の中、久しぶりに聞く兄様の声と、キッと軋む車輪の音が響く。
「おや? そこにいるのは智樹だね? どうしたんだい? そんな所に立っていないで、さあ、ここへ来て顔を見せておくれ?」
椅子に座ったままの兄様が、僕に向かって両手を広げて見せた。
あぁ、兄様……!
僕は思わずその腕の中に飛び込んだ。
「おやおや、一体どうしたって言うんだい?」
兄様の匂い……
兄様の体温……
そして僕を抱き締めてくれる兄様の腕……
あぁ、僕の大好きな兄様……
僕は知らず識らずのうちに兄様のシャツを涙で濡らしていた。
「こんなに泣いて…。相変わらず智樹は泣き虫だね?」
僕の背中に回った兄様の手が、まるで幼子をあやす様に規則正しく叩く。
「智樹、少しだけ離れてはくれないか? せっかくのお茶が冷めてしまう」
あっ、そうだった……
僕は嬉しさのあまりつい……
僕はゆっくり兄様から離れると、寝台の端に腰を降ろし、カップを口に運ぶ兄様の様子を、ジッと見つめた。
ワゴンを押す松下の後ろを、僕は徐々に熱が高まって来た身体を引き摺りながら着いて行った。
松下が兄様のお部屋の扉を叩くけど、相変わらず中からの返事はない。
「失礼します」
取っ手を回しながら、松下が開きかけた扉に向かって頭を下げた。
「翔真様、お茶をお持ちしました」
「ありがとう」
薄闇の中、久しぶりに聞く兄様の声と、キッと軋む車輪の音が響く。
「おや? そこにいるのは智樹だね? どうしたんだい? そんな所に立っていないで、さあ、ここへ来て顔を見せておくれ?」
椅子に座ったままの兄様が、僕に向かって両手を広げて見せた。
あぁ、兄様……!
僕は思わずその腕の中に飛び込んだ。
「おやおや、一体どうしたって言うんだい?」
兄様の匂い……
兄様の体温……
そして僕を抱き締めてくれる兄様の腕……
あぁ、僕の大好きな兄様……
僕は知らず識らずのうちに兄様のシャツを涙で濡らしていた。
「こんなに泣いて…。相変わらず智樹は泣き虫だね?」
僕の背中に回った兄様の手が、まるで幼子をあやす様に規則正しく叩く。
「智樹、少しだけ離れてはくれないか? せっかくのお茶が冷めてしまう」
あっ、そうだった……
僕は嬉しさのあまりつい……
僕はゆっくり兄様から離れると、寝台の端に腰を降ろし、カップを口に運ぶ兄様の様子を、ジッと見つめた。
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