ＲｏｏｍＮｕｎｍｂｅｒ「０００」

第２章 ００２

４

　若干の疑念を抱えながら、受け取ったコインロッカーのカギを手に、智樹は駅構内へと向かった。

　あれ程抵抗を感じていたエプロンドレスも、駅前に点在するメイドカフェのおかげか、それ程気にならなくなっていた。

　智樹は添付されていた地図を頼りに、目的のコインロッカーへと急いだ。
　慣れないヒールの踵を鳴らし、人混みを掻き分てて歩くその足取りは次第に速度を上げ、やがて……

「あった……」

　地図上に示されたコインロッカーを見つけた瞬間、智樹はそこに向かって走り出した。

　ところが……

　そこは、智樹が想像していた通路に面したコインロッカーとは違って、幾つかのコインロッカーが立ち並ぶ……、言わば一室のようなスペースになっていて、構内を行き交う人からの視線が避けれるせいか、女子学生達が制服から私服に着替えたり、メイクをしたり……
　中にはＯＬ風の女性の姿も見える。

　その光景に、「マジかよ……」一人ごちって肩を落とした智樹は、自分が何故着たくもないエプロンドレスを着せられているのか、漸くその理由に気が付いた。

　確かに、完璧ではないにしろ、一応見た目が女ならば、ある種異様とも思えるその空間に足を踏み入れたところで、白い目で見られることもない。

「でもな……」

　それでも躊躇ってしまうのは、どれだけ外見を女のように装ってみても、中身はれっきとした男……、なのだからだろう。