ＲｏｏｍＮｕｎｍｂｅｒ「０００」

第２章 ００２

７

　地下から地上に上がり、信号を渡った先に翔真の車が見える。
　距離にしたら大したことないのに、気持ちが焦っているのかやけに遠くに感じてしまい、タイミング悪く赤に変わった信号を待つ間、智樹は人知れずブーツのヒールで地面を蹴った。

　焦ったところで、信号が赤く灯っている時間が短縮されるわけでもないのに……

　そして信号が変わった瞬間、智樹は我先にと横断歩道に飛び出し、翔真の待つ車の助手席に乗り込んだ。

「取ってきたか？」
「ああ」
「よし、次行くぞ」

　二人は短い会話を交わすと、ボストンバッグの中を確認することもなく、車を発進させた。

　次の目的地に向かう間、智樹は乱れた息を整えるため、何度も深呼吸を繰り返した。
　そう長い距離を走ったわけでもないのに、動悸激しくて仕方なかった。

　そんな智樹の様子を運転席で見ていた翔真は、信号が赤に変わったタイミングで後部シートに腕を伸ばし、智樹を待つ間に買っておいた缶コーヒーを取り、それを智樹に差し出した。

「これでも飲んで少し落ち着け」
「お、おお……、サンキュ……」

　智樹は受け取った缶コーヒーのプルタブを引くと、若干温くなったコーヒーを、乾ききった喉に流し込んだ。

　一見気が強そうに見える智樹だが、実は見た目に反して気の弱いところがあるのを、智樹とは幼馴染でもある翔真は良く知っている。

　だからこそ、たかだかコインロッカーから荷物を持ってくるだけの、翔真にしてみれば子供のお使い程度のことでも、どれだけの神経をすり減らしたかが、手に取るように分かる。