ＲｏｏｍＮｕｎｍｂｅｒ「０００」

第７章 ００８

１４

　黒瀬は手帳のページを何枚か捲ると、小さく「なるほど」と呟いてから、一瞬本木の方に視線を向けた。
　その様子はまるで、黒瀬が何やら本木に向かって目配せをしているように見えなくもなく……

　岸本は苦笑いを浮かべると、「えっと……」と何かを思い出すような仕草をして見せた。

「何か思い出したことでも？」
「いやぁ……、思い出したって程でもないんですけど……」
「かまいません。何か気づいたことがあれば話して下さい」

　黒瀬に促され、岸本は小さく頷くと、スッと息を吸い込んだ。

「俺、ここに来る前、何だか良くわかんないんだけど、眠っちゃってたみたいで……」
「では、ここに来たのは、岸本さん自身の意思では無かった……ということですか？」
「まあ……、そうなるかな……」
「誰かに無理矢理連れて来られた、という可能性も？」
「ま、まあ……、うん……」

　岸本の視線が一瞬、翔真と智樹に向けられる。

　視線を向けられた二人は、当然のことながら、岸本の視線から咄嗟に視線を逸らすが、その口元は微かに引き攣っている。

「岸本さんが目を覚ました時、この部屋には誰が？」
「それは、その……、掃除の人が二人……」
「他には？」
「他には……、弘行の死体があっただけで……」

「〝死体〟ですか……」
「はい、死体です」

　黒瀬の、メモを取る手がピタリと止まった。