ＲｏｏｍＮｕｎｍｂｅｒ「０００」

第８章 ００９

２０

　その表情は、黒瀬の推測が図星だと物語っていて、当然のことだが黒瀬もそれを見逃すことはなく……

「あくまで貴方自身は計画を立てただけで、実際に手を下したのはおそらく、貴方に対して特別な感情を持っていて、貴方自身も同様の感情を持っている方、つまり……」
「恋人……ってこと？」
「現状、憶測の域を出ませんが、まあそういうことになるかと……。どうですか？」

　心做しか弱くなったとは言え、それでも鋭さを隠しきれない黒瀬に見上げられ、岸本は観念したように拳をキュッと握った。
　そして唇をキリッと噛むと、瞬きをすることさえ忘れてしまったかのように見開いた目から、ポロポロと涙を零し始めた。

　突然の岸本の涙に、翔真も智樹も一様に戸惑いの表情を浮かべたが、それでもまだ岸本の心理が理解出来ないのか、翔真は俯いていた顔を上げた。

「あの、さ……。俺に誘拐の依頼してきたのがアンタだったとして、鍵は？　さっきの話だと、関係者以外の人間が手に入れるのって……」
「その件に関しては私から説明しましょう」

　翔真が全てを言い終え寸でのところで、それまで沈黙を貫いていた本木が遮るようにして、テーブルの上に並べられたカードキーを手にスッと席を立った。