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第8章  009

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 漸く少しずつ状況が飲み込めて来た翔真が、本木と岸本を交互に見る。

「じゃ、じゃあ何か? アンタ最初っからコイツが犯人だと……?」
「いえ。カードキーの入手経路に関しては、ほぼ岸本さんで間違いないとは思っていましたが、殺人については確信が持てませんでした。なので、あえて口を挟むのを避けていたんですが……」

 本木は早口でそこまで言うと、人差し指と親指で顎先をスリスリと撫で始め、それを数回繰り返した後、閉じていた瞼をパチッと開くと同時に口元をニヤリと歪ませた。

「なるほど、そういうことだったのか……」

 そして、まるで独り言のように呟いた。

「恐らくですが、弘行さんを殺したのは、この部屋に自由に出入りすることが可能な人……。つまり、相原社長、貴方ですね」

 思ってもなかった名前が上がったことで、二人はソファから転げる勢いで立ち上がった。
 そんな二人の前でも、やはり黒瀬だけは冷静な姿勢を崩すことはない。

「やはりそうでしたか……」

 黒瀬が襟元までキッチリ締められたネクタイを、指の先を使って少しだけ緩めた。
 黒瀬に名指しされた相原は、当然のことながら顔を引き攣らせたが、直ぐに膨れっ面に変え……

「俺は悪くない。アイツが、俺と友作の恋路を邪魔するから悪いんだ……」

 まるで駄々でもこねるかのように唇を尖らせた。
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