47 / 53
番外編 ー朝月夜ー 其の一
六
しおりを挟む
数日前のこと、
翔真が学友に誘われ、隣村の見世物小屋へ行った時のことだった。
たまたま隣に居合わせた商人風情の男が、俄には信じ難い話をしていたのを、たまたま耳にしたのを、翔真はふと思い出していた。
あの時、確か……
そうだ、どこそこの村に、人の血肉を食らう化け物がいるとかなんとか……
その時はそう気にもとめなかったが、昨夜の蔵での一件を考えれば、あながち単なる噂話というわけでもなさそうだと、そう思った瞬間、翔真は再び恐怖に身を震わせた。
でも待てよ?
昨夜は気が動転してしまって考えが至らなかったけれど、翌々思い返してみれば、もし父様があの蔵に化け物を飼っていたとして、あの人達は?
それに、暗くて風貌も分からなかったけれど、僕が耳にしたあの悲鳴のような声は、女性……若しくは幼い子供のようだった。
だとすると……
「あぁ……、一体全体何がどうなっているのか……」
混乱する一方の思考をいくら巡らせてみても、一向に纏まらない考えに、翔真は乱暴に頭を掻いた。
そして両の手で机を叩くと、座っていた椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった。
こうして悶々と時をすごしていたって仕方がない。
「確かめないと……」
あの蔵に何が隠されているのか、あの蔵で何が行われているのか、あの蔵の秘密を……
翔真が学友に誘われ、隣村の見世物小屋へ行った時のことだった。
たまたま隣に居合わせた商人風情の男が、俄には信じ難い話をしていたのを、たまたま耳にしたのを、翔真はふと思い出していた。
あの時、確か……
そうだ、どこそこの村に、人の血肉を食らう化け物がいるとかなんとか……
その時はそう気にもとめなかったが、昨夜の蔵での一件を考えれば、あながち単なる噂話というわけでもなさそうだと、そう思った瞬間、翔真は再び恐怖に身を震わせた。
でも待てよ?
昨夜は気が動転してしまって考えが至らなかったけれど、翌々思い返してみれば、もし父様があの蔵に化け物を飼っていたとして、あの人達は?
それに、暗くて風貌も分からなかったけれど、僕が耳にしたあの悲鳴のような声は、女性……若しくは幼い子供のようだった。
だとすると……
「あぁ……、一体全体何がどうなっているのか……」
混乱する一方の思考をいくら巡らせてみても、一向に纏まらない考えに、翔真は乱暴に頭を掻いた。
そして両の手で机を叩くと、座っていた椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった。
こうして悶々と時をすごしていたって仕方がない。
「確かめないと……」
あの蔵に何が隠されているのか、あの蔵で何が行われているのか、あの蔵の秘密を……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる