君の声が聞きたくて

誠奈

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第12章  sostenuto

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 翔真さんからの連絡はないまま窓の外が明るくなって、いい加減寝ないとヤバいと思いながら、結局一睡も出来ないまま朝を迎えた。
 俺はスマホを手にベッドに入ると、全く眠気の来ない瞼を閉じた。

 いつもなら、どれだけ眠たくなくても、ベッドに入った瞬間に眠れるのに、どうしてだか全然眠れず、ギュッと瞼を閉じてふと思う。

 いつの間にか、時間なんて関係なく翔真さんが寝がけにくれる「おやすみ」の、そのたった一言が、俺にとってまるで魔法の呪文みたくなってたんだな、と。


 はあ、ダメだ、寝れねぇ……
 シャワーでも浴びて来るか……


 俺はベッドの上に起き上がると、全く鳴る気配のないスマホを枕元に置いた。
 ハンガーにかかったままのバスタオルを引っ張り、プラスチックケースの中から着替えを出しかけたその時、ともすれば聴き逃してしまいそうな小さな電子音が鳴って、スマホが短く震えた。


 もしかして!


 翔真さんかもしれない、なんて淡い期待を抱きながら、俺は急いでスマホを手に取ると、すぐ様メッセージアプリを開いた。
 でもスマホの画面に表示されたのは翔真さんの名前ではなく、潤一さんの名前で……


 何で潤一さんが……?


 内心訝しみながら、潤一さんからのメッセージをスマホに表示させた。

 『桜木、風邪引いて熱あるみたいだから、覗いてやってくれる?』


 え、翔真さんが?
 ひょっとしてこの間の晩、裸で寝たりしたから?


 俺は『分かった』とだけメッセージを返すと、シャワーを浴びるのは後回しにして、スマホと財布だけを手にアパートを飛び出した。

 自転車に跨り、強い陽射しが降り注ぐ中を汗だくになってペダルを漕いだ。
 途中コンビニに寄って、レトルトのお粥や、プリンとかゼリーとか、食欲がなくても喉を通りそうな物を、片っ端からカゴに投げ入れた。


 あ、飲み物とかも必要……か?

 あとは……、なんだ……?


 俺は思いつく限りの物を買い込み、ズッシリと重い袋を自転車のカゴに載せると、再びペダルを漕いだ。
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