君の声が聞きたくて

誠奈

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第23章  passionato

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 「でもその内、アイツ、俺に条件出してきやがって」
 「どんな?」
 「二年待つって。二年待つから、どれくらい本気なのか行動で示せ、って」


 二年、か……。
 数字にすればそう長くも感じないが、時間にすればけっこうな期間だ。

 尤も、俺の三年には僅かに及ばないが……


 「それからは必死っすよ。アイツに認めて欲しい一心で、それまで毎日のように乗り回してたバイクも手放して、煙草も辞めて……、死に物狂いで勉強して、今の会社入ってからも、やっぱり必死で……」

 本当に欲しい何かを手に入れるために、何かを切り捨てる……、一見簡単なように見えて、実はそんな簡単な事でもない。忍耐力と努力と、そして何を捨て何を残すのか、時には決断力だって必要になる。
 そうして得られた物はきっと、何物にも変え難い宝になる。

 「漸くOK貰った時は、もうこれで死んでも良い、って思えるくらい嬉しくて」


 上杉のように……


 「諦めなくて良かったなって。こんな俺でもそう思えたんです、だから兄貴も……」


 諦めるな、全力でぶつかって行け、と上杉の目が俺に訴えかけるが、実際今の俺にそれだけの根性があるんだろうか……
 それに、智樹が今の俺を見てどう思うのかを考えると、不安ばかりが胸を過ぎる。

 「幻滅、されたりしないだろうか……」
 「さあ、それは分からないっすよ。だって、俺は智樹さんじゃないんで」
 「そう……だよな」

 確かに、智樹がどう思うのかを上杉に尋ねたところで、上杉は智樹ではないんだから答えようもない。

 「でも、三年前の兄貴がどうだったか俺は知らないけど、俺は今の兄貴嫌いじゃないっすよ?」
 「えっ?」
 「勿論、上司として……っすけど」

 冗談ぽく言って、上杉が豪快に笑う。


 つか、俺だって上杉のことを智樹と同じ目線で見たことないけど……
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