君の声が聞きたくて

第２６章 番外編☆dolce

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　決して深くはならないキスを交わし、翔真さんが真剣な目で俺を見つめる。
　その視線だけで、翔真さんが何を言いたいのか……、翔真さんがどれだけ俺を真剣に愛してくれてるのかが分かる。

　俺は背中から回された翔真さんの手をそっと握ると、その手の甲を頬に宛てた。

　「後悔……しない？」
　「何を？」

　普通とは呼べない関係……
　祝福なんてきっと望めないし、こんな関係を認めてくれる人は少ない。

　俺自身、何度となく経験して来たことだから分かる。

　「俺なんかを選んだこと……、後悔しない？」


　今なら……


　「引き返すなら今だよ？」


　今ならまだ間に合う。


　お互い、決して浅いとは思わないけど、これ以上深く傷つけ合うことなく別れられる。

　「本当に俺で良いの？」

　俺が聞くと、俺の頬に宛てた手がピクリと震えて……

　「当たり前だろ？」

　俺の耳元に熱い息が吹きかかった。

　「智樹を選んだことを、後悔なんかするもんか」

　握った俺の手を解き、強く……強く抱きしめられる。

　「もしこの先後悔する時が来るとすれば、それは智樹を選ばなかった時だ」
　「翔真……さん……」
　「だからもう俺なんか……なんて言うな。俺は智樹が好きだし、この先もこの気持ちだけは変わらない」

　「永遠なんて信じない」以前俺は翔真さんに言った。


　多分……今もその考えは変わってない。

　でも今は……、今この瞬間だけは、永遠を信じてみたい。


　「傍にいても良いの？」
　「当たり前だろ？」
　「本当に？　俺、すげぇ我儘だよ？」
　「知ってる。つか、俺の方が智樹よりも、何十倍も我儘だし……」
　「ふふ、確かにそうかもね」

　真剣だった目が細められ、俺の身体がゆっくりベッドに沈められる。

　「智樹……」

　名前を呼ばれ、「何？」と首を傾げる俺に、ゆっくり翔真さんの顔が近付いて来る。

　そしてお互いの鼻先が触れ合った、丁度その時……

　ギュルルルル……と、翔真さんの腹が盛大に鳴った。