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序章
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上も下もない、右も左もない。なのに、私は階段を上っている。
生暖かい空気を掻き分けながら、一段一段をしっかりと、足でとらえていく。足の裏で石の冷たさを感じながら、膝に力を入れて体を持ち上げる。息を吐く。
顔を上げると、目の前には延々と石でできた階段が続いている。かなり長いらしく、上の方は白い霧に隠れてよく見えない。
階段の端は青々とした茂みに挟まれ、更に深い森が広がっている。足を止めて森の中をよく見ようとしたが、一本二本と木を超えた先は、真っ暗な影しか見えない。辛うじて開いている頭上には、白い雲で覆われた空が僅かに見える。
私は叫んだ。声の限りに叫んだ。
誰か居ないのかと、叫んだ。
不思議なことに、声は私の喉から零れた直後、直ぐに消えた。最初から声なんて無かったかのように、口に出した瞬間空気に溶けた。よくよく思い返してみると、私の声だけではなく周囲の、この世界の音の全てが死んでいる。
この世界は無音になってしまったのか、それとも私の耳が聾されてしまったのか。
いや、今はそんなことはどうでもいい、とにかく私は、この階段を上らなくてはならないのだ。理由なんて知らない。そんなものはこの先にあるのだから、頂上に着いてから確認すればいい。
一段、一段と確実に足を進めているはずなのに、どうしてだ。なぜか周囲の景色は動かない。一段上がったはずなのに、体は全く移動していない。
上がろうとするだけ無駄だ。そのことは薄々分かっているのだが、言い知れぬ使命感が私の体を動かし続ける。そのうち呼吸が苦しくなってきた。足取りも、泥にはまったように重くなっていく。それでも階段を上らずには居られなかった。
もっと、もっと上に行かなくては。
あの人に会わなくてはならないのだ……。
生暖かい空気を掻き分けながら、一段一段をしっかりと、足でとらえていく。足の裏で石の冷たさを感じながら、膝に力を入れて体を持ち上げる。息を吐く。
顔を上げると、目の前には延々と石でできた階段が続いている。かなり長いらしく、上の方は白い霧に隠れてよく見えない。
階段の端は青々とした茂みに挟まれ、更に深い森が広がっている。足を止めて森の中をよく見ようとしたが、一本二本と木を超えた先は、真っ暗な影しか見えない。辛うじて開いている頭上には、白い雲で覆われた空が僅かに見える。
私は叫んだ。声の限りに叫んだ。
誰か居ないのかと、叫んだ。
不思議なことに、声は私の喉から零れた直後、直ぐに消えた。最初から声なんて無かったかのように、口に出した瞬間空気に溶けた。よくよく思い返してみると、私の声だけではなく周囲の、この世界の音の全てが死んでいる。
この世界は無音になってしまったのか、それとも私の耳が聾されてしまったのか。
いや、今はそんなことはどうでもいい、とにかく私は、この階段を上らなくてはならないのだ。理由なんて知らない。そんなものはこの先にあるのだから、頂上に着いてから確認すればいい。
一段、一段と確実に足を進めているはずなのに、どうしてだ。なぜか周囲の景色は動かない。一段上がったはずなのに、体は全く移動していない。
上がろうとするだけ無駄だ。そのことは薄々分かっているのだが、言い知れぬ使命感が私の体を動かし続ける。そのうち呼吸が苦しくなってきた。足取りも、泥にはまったように重くなっていく。それでも階段を上らずには居られなかった。
もっと、もっと上に行かなくては。
あの人に会わなくてはならないのだ……。
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