わたしの愛した世界

伏織

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二章

2-11

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「ところで、ミミ」2人で歩き出してすぐに、クロスが私の名前を呼んだ。


「どうして本名を名乗らないの?」

「なんだ、わかってたの。知ってるならそう言ってよ」


本名を知られているのに、わざわざ偽名なんて使ってしまった。なんと間抜けな事だろう。


「や、君なりの事情があるからなって。本名を名乗ると嫌なことを思い出したりする、とかね」

「確かに本名は好きじゃないというか」


今までの自分とは決別したい気持ちがあった、というか。

「ミミ」というのは私の名前とは似てもいないし、全く違うものだが、決して即興で考えたものでは無い。いつだったか、どこだったかは覚えてないが、とても小さい頃に一緒に遊んだ友達の名前だ。
不思議と、彼女とどんな遊びをしたかなどは記憶にないのだが、彼女がとても活発でよく笑う、可愛らしい子だということはしっかりと覚えている。恥ずかしがり屋だった私にとって、彼女の性格は憧れだった。


「不思議だね。そんなに君にとって思い入れがある子なのに、何をして遊んだか覚えてないなんて」

「だね。........まぁ、とにかく私は自分以外の何かになりたかったんだ」

「それで他人の名前を堂々と騙ったのか」

「言い方が悪いよ。これくらいのことは許してよ」


クロスは水を再び1口飲み、皮袋の蓋を閉めた。白い頬が日光を受け、輝いているように見えた。小ぶりな鼻筋から、唇にかけての曲線が妙に艶めかしく、男性というよりは女性的な印象を受けた。しかし、顎から下に視線を下ろしていくと、喉元にはしっかりと喉仏があるのが分かった。


「誰にだって捨てたい過去はあるでしょ。君にはとくに。
だから、そう名乗りたいなら名乗ればいいと思うよ。僕はそれを尊重する」

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