わたしの愛した世界

伏織

文字の大きさ
50 / 176
四章

4-4

しおりを挟む
「なるほど、じゃあその人も探すか」

簡単に行った私に、当たり前だがクロスは非難めいた口調で「言うだけなら楽だよね」と言った。私もなんでこんな簡単に言ってしまったのかわからない。ただの直感だ。見つかる気がする。


救世主は、優れた直感を持つ、だっけ。

あながち間違いではないのかもしれない。今の私には、すべてを説明することはできない。だが、このまま自分の選ぶ道を進んでいけば、すべての答えが見つかるような気がする。考えてみれば、これはこの世界に来る前からあった感覚だった。迷子になったときも、テストの選択問題で迷ったときも、自分のこの直感に従って動いたらすべてが正解だった。

毎晩のように父に「構われる」ようになるまで、私は今よりもっと元気でやんちゃな性分だった。自分のやりたいように遊びや勉強法をしてきたが、大した間違いを犯すこともなかった。


父の、……父と母のせいか。私がうまく生きられなくなったのは。
そんなことは最初から分かっていたはずなんだが、心からそれを受け入れたのは今が初めてなのかもしれない。

私を生んで、私を育てた両親に対して、情があったのだ。自分の親が、少しでも自分を愛していると思いたかった。多少(といってもいいものかは迷うが)の間違いを犯していたとしても、彼らは基本的には正しく生きていたと思いたい気持ちがあった。

もしかしたら父にされたことはすべてが夢か幻覚で、私の頭がおかしくなっているだけなのでは、と未だに思う時がある。なんてったって今いるのは異世界だ。これも夢かもしれない。

私が事故かなんかに遭っていて、何年間も昏睡状態なのかもしれない。その可能性もあるじゃないか。何も本気でこの世界を救おうなんて考えなくてもいいのではないか。
私の両親はごく普通の人達で、私はただ長い間眠っているだけ。父が私に性的虐待をしたことも、母がそれを扇動したことも、彼らに殺されたこともすべて夢。


「ちょっと、いきなり考え込むのやめてくれる?」

「……ああ、ごめん。己を見失ってた」

「なんだそれ」


熱くなった目頭をごまかすために、私は頭上の青天井を見上げた。鼻孔をくすぐる細やかな風に、周囲の植物や土の匂いを感じた。夢のようには思えないくらいリアルだ。でも、わからない。
夢と現実がわからない。腹の底を鋭い鉤爪で引っかかれているようだ。こんなに不安になるのは、いつぶりだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

『まて』をやめました【完結】

かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。 朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。 時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの? 超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌! 恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。 貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。 だから、もう縋って来ないでね。 本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます ※小説になろうさんにも、別名で載せています

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。 遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら 自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に スカウトされて異世界召喚に応じる。 その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に 第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に かまい倒されながら癒し子任務をする話。 時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。 初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。 2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

気弱令嬢の悪役令嬢化計画

みおな
ファンタジー
 事故で死んだ私が転生した先は、前世の小説の世界?  しかも、婚約者に不当に扱われても、家族から冷たくされても、反論ひとつ出来ない気弱令嬢?  いやいやいや。 そんなことだから、冤罪で処刑されるんでしょ!  せっかく生まれ変わったんだから、処刑ルートなんて真っ平ごめん。  屑な婚約者も冷たい家族も要らないと思っていたのに・・・?

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!  

処理中です...