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四章
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捕まえる前に、ちらりと考えたさ。こんなにかわいい生き物を、無抵抗な生き物を捕まえなくてもいいのでは?町で買ってきた食料も、クロスが持ってきていたお菓子や保存食もたくさんある。わざわざ捕まえなくてもいいのだ。でも、この丸々と膨らんだお腹や、程よい肉付きの脚部を見ていたら、一気に食欲が押し寄せてきたのだ。お菓子ばかり食べていたクロスはどうか知らないが、私は朝ごはんにパンとミルクだけ、そして昼食は抜いている。
仕方ない、仕方のないことなのだ。
「私は食うぞ」
「好きにしなよ。僕は脚を一本だけもらって君を遠巻きに見ながら食べるから」
お前も食べるんじゃないか。図々しいな。
元いた道から森に入って歩くこと三分、思いの外近い場所に幅一メートルほどの川が流れていた。周囲は拳大ほどの石がゴロゴロと転がってはいるが、河原とは言えない程度だった。山中と同じような茶色の土の地面で、草も適度に茂っている。
少し上流に向かったところに、奥行きがおよそ五メートルほどの洞穴も発見した。入り口は四つん這いにならないと入れない程狭く、しかし内部は広くなっている。もしかすると、冬場に熊が冬眠に使用するものかもしれない。それか現役で巣に使われてるかもしれないが、........まぁ鉢合わせたら、いっそ殺して食べてしまえばいいか。
クロスが洞穴に寝床をこしらえる役を買って出たため、私は洞穴の入り口から少し離れた場所で火をおこして、肉を焼くことにした。捕まえた時点でそのつもりではあったが。
幸い、クロスの魔法のカバンには必要なものがあった─────あまり必要のないものもたくさん入っている────ので、原始人のように枝を必死にこすって火をおこす必要はなかった。マッチもあるし、燃やすものは周囲に豊富にある。
準備している間にウサギが逃げないか心配だったので、後ろ足を片方だけ細いロープで軽く縛り、もう片方の端を自分の腰のベルトにくくりつけた。ウサギを地面に下ろすと、警戒することもなく私の足にまとわりつき、周囲の草を抜いたり邪魔な石を取り除く私に時折すり寄って来た。なるほど、これほど人懐っこいならば捕獲しやすいし、家畜にするのも容易いだろう。おまけに美味しそうだ。
仕方ない、仕方のないことなのだ。
「私は食うぞ」
「好きにしなよ。僕は脚を一本だけもらって君を遠巻きに見ながら食べるから」
お前も食べるんじゃないか。図々しいな。
元いた道から森に入って歩くこと三分、思いの外近い場所に幅一メートルほどの川が流れていた。周囲は拳大ほどの石がゴロゴロと転がってはいるが、河原とは言えない程度だった。山中と同じような茶色の土の地面で、草も適度に茂っている。
少し上流に向かったところに、奥行きがおよそ五メートルほどの洞穴も発見した。入り口は四つん這いにならないと入れない程狭く、しかし内部は広くなっている。もしかすると、冬場に熊が冬眠に使用するものかもしれない。それか現役で巣に使われてるかもしれないが、........まぁ鉢合わせたら、いっそ殺して食べてしまえばいいか。
クロスが洞穴に寝床をこしらえる役を買って出たため、私は洞穴の入り口から少し離れた場所で火をおこして、肉を焼くことにした。捕まえた時点でそのつもりではあったが。
幸い、クロスの魔法のカバンには必要なものがあった─────あまり必要のないものもたくさん入っている────ので、原始人のように枝を必死にこすって火をおこす必要はなかった。マッチもあるし、燃やすものは周囲に豊富にある。
準備している間にウサギが逃げないか心配だったので、後ろ足を片方だけ細いロープで軽く縛り、もう片方の端を自分の腰のベルトにくくりつけた。ウサギを地面に下ろすと、警戒することもなく私の足にまとわりつき、周囲の草を抜いたり邪魔な石を取り除く私に時折すり寄って来た。なるほど、これほど人懐っこいならば捕獲しやすいし、家畜にするのも容易いだろう。おまけに美味しそうだ。
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