わたしの愛した世界

伏織

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八章

8-14

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一度家の中を振り返る。一人で行動して大丈夫だろうか?しかしエリザは寝ているし、クロスも恐らく同様だ。起きていたとしても、扉を叩いて出てこいと言っても従うかどうか。力ずくで扉を破ってもいいが、それでは互いの関係に軋轢が生まれそうだ。

ということで、私は玄関の扉を静かに閉じた。

声のする方に向かい、森の中に走り出した。不思議だ、鳥の声や風の音すらしない。囁き声も、いつの間にか鼓膜から脳内に侵入している。頭の中で響いているのだ。


「誰なの!」


久しぶりに叫んだような気がする。囁き声があまりにもうるさくて、私の声すらも聞こえない。囁き声なのにうるさいなんて、矛盾もいいところだが。

短い草が足首をくすぐる森の中を、囁き声のする方に向かって走り出す。ところで、脳内に響いている声なのに、何故に聞こえる方向がわかるのだろうか。きっとこれも、このまま進んで行けば答えが判明するはずだ。


「ねぇ!なんなの?」


一度背後を振り返り、叫びながら再び前方に向き直った。と、それまで何も無い森の中だったのに、目の前が急に開けた土地になっている。







木の間を抜けて行くと、大きな岩が目の前に現れた。周囲は円形状に開けており、その中央に岩が位置している。
岩は全身を蔦で覆われており、葉の隙間から鼠色の岩肌が覗いていた。


大岩は逆さまになった台形のような形をしている。囁き声は岩の上から聞こえてくる。


「そこにいるの!?」


大岩に向かって叫ぶが、やはり自分の声は囁き声に殺される。いい加減苛立ってきた私は、岩に駆け寄って無数に絡まる蔦を掴んで、岩をのぼり始めた。
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