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九章
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九章
ボコボコにされた。
叫びだした私の顔面に拳を打ち込み、ベッドから転がり落ちた私は床に倒れ込んだ。父はそんな私の腹に蹴りを入れる。静かにしろ、黙れと、押し殺した声を頭上から浴びせかける。混乱していた私には、父の声が聞こえていなかった。
「そんな……、嫌だ」
腹を蹴られて息が詰まりながらも、己の口から弱々しい声を漏らす。嫌だ。
床に伏せて嫌だ嫌だと弱々しく繰り返す私の横っ面に、父親の右足が直撃する。背後の壁に後頭部をぶつけ、視界が霞んだ。頭を抱えてうずくまる。視界が一瞬白くなった。
「もういい、お前ほんと役立たずだよ」
そう吐き捨てると、父は部屋から出ていった荒々しい足音が遠のいていく。
口の中で鉄臭い、生暖かい液体が溢れている。舌の上になにか、硬い小石のようなものが乗っている。危うく飲み込みそうになり、慌てて吐き出した。唾液混じりの血と、折れた歯が床に落ちる。左の八重歯付近にポッカリと穴が開いているのを、舌の先で確認した。
体中が痛かった。蹴られた腹も、殴られた顔も、手足もきっと引っ張られたりしたのだろう、上手く動かない。
でも、そんな体中の不具合なんかよりも、自分の胸の真ん中に大穴が空いたような、この喪失感、そして絶望の方が辛かった。
ボコボコにされた。
叫びだした私の顔面に拳を打ち込み、ベッドから転がり落ちた私は床に倒れ込んだ。父はそんな私の腹に蹴りを入れる。静かにしろ、黙れと、押し殺した声を頭上から浴びせかける。混乱していた私には、父の声が聞こえていなかった。
「そんな……、嫌だ」
腹を蹴られて息が詰まりながらも、己の口から弱々しい声を漏らす。嫌だ。
床に伏せて嫌だ嫌だと弱々しく繰り返す私の横っ面に、父親の右足が直撃する。背後の壁に後頭部をぶつけ、視界が霞んだ。頭を抱えてうずくまる。視界が一瞬白くなった。
「もういい、お前ほんと役立たずだよ」
そう吐き捨てると、父は部屋から出ていった荒々しい足音が遠のいていく。
口の中で鉄臭い、生暖かい液体が溢れている。舌の上になにか、硬い小石のようなものが乗っている。危うく飲み込みそうになり、慌てて吐き出した。唾液混じりの血と、折れた歯が床に落ちる。左の八重歯付近にポッカリと穴が開いているのを、舌の先で確認した。
体中が痛かった。蹴られた腹も、殴られた顔も、手足もきっと引っ張られたりしたのだろう、上手く動かない。
でも、そんな体中の不具合なんかよりも、自分の胸の真ん中に大穴が空いたような、この喪失感、そして絶望の方が辛かった。
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