わたしの愛した世界

伏織綾美

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九章

9-7

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一時間ほどすれば母が迎えに来るので、私はそれまで公園で時間を潰すのだった。

その日も、私は母に持たされた水筒を肩にかけて、公園に向かった。いじめっ子も公園に来ており、私を見るなり腰巾着に命じた。


「捕まえろ!」


腰巾着たちは彼女を恐れて、必死になって私に向かって来る。私も捕まりたくはないので、必死に逃げ出す。彼女の右手にはバッタが握られているのが見えたのだ。前に、他の子が無理やり草や虫を口に入れられたのを、見ていたことがある。

そんなひどい目には遭いたくないので、全力で逃げ回るが、腰巾着達も彼女の暴力が怖いので、全力で追いかけてくる。しかも多勢に無勢だ。公園から出ようとしたところで、後ろからタックルされてしまった。


「やめて!帰るの!」


必死に私を取り押さえた男の子に訴えるが、手柄を手に入れたと思っている男の子はニヤニヤするだけで、私の訴えは聞いてくれなかった。いじめっ子がこちらに歩いてくる。バッタと、木の棒。その棒の先には小さな毛虫が乗っているのが見えた。
子供は恐ろしい。加減を知らない上に善悪のボーダーラインも曖昧だ。そして何より、集団の中では力が物を言う世界なのだ。


「こっちに連れてきて」


と、彼女は公園の一角を指差した。そこは大きなマンションの裏で、いつも影が落ちているので暗いところだ。公園の外から見にくい場所でもあるので、悪いことをするのに最適なのだ。


「嫌!」


無理に立たされて、取り押さえたのとは違う他の腰巾着達も加わって、私は両手を掴まれて両足も持ち上げられてしまった。

皆笑っている。楽しそうだ。
人をいじめるのが、そんなに楽しいのか。全身を突き破ってしまいそうなほどトゲトゲした感情が、憎悪が己の体の奥底から湧き上がってくるのを感じた。できることなら、こいつらを全員殺してやりたいとすら思った程だ。
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