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甘すぎる新婚生活

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 今夜が私たちにとって結婚初夜になるのは、当然わかっている。
 彼の意志こそ把握していなかったものの、どうなってもいいように心の準備はしてきたつもりだ。

 立場上、碧斗さんは跡継ぎを望まれているだろう。それでも彼は、強引にはしないという。
 小野寺家を継ぐ子の母親が私でいいのかと、姉の所業を考えれば申し訳ない。
 でも彼が私を求めてくれるというのなら、自分の気持ちのまま素直に応じたい。

「私、怖くなんてありませんから」

 ゆっくりと体を起こした碧斗さんが、至近距離から私の顔を覗く。視線を反らしたくなるが、今だけはだめだとじっと見つめ返した。

「本当に? 音羽に無理はさせたくないんだ」

「は、はい。初めてなので、その……そういう意味では怖いのですが、相手が碧斗さんなら」

 さすがに羞恥に襲われて瞼を伏せてしまったが、私の決意は感じ取ってくれていると信じたい。

「初めて?」

 もう耐えられないとばかりに、両手で顔を覆う。そうしながら、こくこくと首を縦に振った。

 フランスで知り合った男性に、交際の誘いを受けたことはある。けれど、どうしてもその気になれなかった。

 まして体だけの関係を示唆する人など論外で、男女付き合いの経験がないままこの年齢まできてしまった。

「うれしいよ。音羽が俺を受け入れてくれて」

 指の隙間から、そっと碧斗さんを伺う。
 言葉通りの笑みを浮かべた彼に、再びふわりと抱きしめられた。

「嫌がることは絶対にしない。だから、音羽。俺のものになってくれないか」

 彼の着ているシャツをぎゅっと掴み、こくりとうなずく。
 それを感じ取ってすぐさま立ち上がった碧斗さんは、素早く私を横抱きにした。

「きゃっ」

 振り落とされないように慌てて彼にしがみついた私を、碧斗さんがくすりと笑う。

 私を抱えていても、彼の足取りはまったく危なげない。
 すらりとした見た目からは想像できなかったが、しっかりとした体つきを服越しに感じてドキリとする。

 ベッドルームの扉を無造作に開け、その先に迷いなく進んでいく。

 チラリと見れば、ふたりで横になっても十分に余裕のある大きなベッドが鎮座していた。
 その上にそっと降ろされ、碧斗さんも左隣に座る。

 彼の方を見られず、視線をうつむかせる。
 ドクドク痛いほど打ちつけてくる鼓動を宥めるように、胸もとをぐっと押さえた。

 肩にそっと手が乗せられる。
 極度の緊張に余裕をなくした体は、それだけでピクリと跳ねた。
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