ストーカーと彼女

ココナッツ?

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お風呂2+彼女の真骨頂

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(彼女視点)

 髪を洗っていたらまた彼が泣き始めてしまった。
 ヒックヒックと時々肩を揺らす。

 どうしたものかな…

 ゆっくりお風呂にでもつかってもらいたい。
 気分転換になって貰えればとも思っていた。

 なかなかうまくいかない物だな…

 しかし私は抜かりなく、髪を丁寧に洗う。

 いっそ下の方まで丁寧に洗ってしまえば…いやいや、やめよう、ちょっとやり過ぎだ。

 彼の心の負担も考えてやらなくてはならない。
 私は、彼の髪にリンスをつけ、よく髪を揉んで、流す。
 仕上げに背中を丁寧に洗えば、まぁ、半分満足である。

 あとは…

 後ろから、首の前に手を回し、顎を持ち上げる。
 彼の体がピクッと跳ねる。
 耳をパクッと食む。

「あっ…」

 舌を絡めて耳を食むうち、ゆっくりその耳が赤くなる。
 吐息のかかるような耳元で、そっと囁く。

「泣かないで」

 彼は顔をパッと真っ赤にする。

 性格がわからないうちは、この顔で言うと効果的面なんだよな…

 内心ちょっとにやっとする。
 私は彼から離れると、風呂場のドアに手をかけ、

「ゆっくり浸かってきて」

 にっこり笑ってそう言った。


 ーーー風呂場を出てからーーー
(side彼女)

 さて、此処からが私のやらなくてはいかない事真骨頂である。
 まず、シーツと布団カバーを洗濯機に突っ込む。
 洗剤と柔軟剤を入れ、洗剤開始! ポチッとな。
 それから、シーツを敷いて、布団カバーをかける。
 それが終わるとご飯の仕度である。

 少し時間が遅くなってしまったが、あの死にそうにひょろひょろの体では心元ない。
 しっかり食べて貰わねば…

 胃がびっくりするといけないので、油物は極力避けたいが、肉はつけて貰いたい。
 結局唐揚げを作り、配膳をする。

 まだ、出てきてないか……よし

 次は服の仕度である。
 傷や打撲の具合を確認したいため、脱がせやすい服が必要である。
 財布取り、窓から飛び出す。
 近くの服屋まで走った。


(彼視点)

 こんなにゆっくりお風呂に浸かるのはいつぶりだろうか……

 私は体を洗った後、湯船にゆっくりと浸かって暫く呆然としていた。
 うとうとし始め、かくん、かくんと船を漕ぎ始める。
 途中でハッとして目を覚まし、お風呂を出た。

 いけない、いけない……

 元々体力のある方ではない。
 多分少し疲れているのだろう。
 タオルを取り、髪を拭いて、ふと思う。

 あれ、服は?

 私はドアを開けて廊下に出る。
 窓に目が止まる。

 紙袋が床に放り投げてあり、手が、窓にかかっている。

「よっこらせっ!」

 私は目を見開く。
 あろう事か、彼女は天使の様にふわっと、窓から家に入ってきたのだ。
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