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起きてる時にお風呂場で
しおりを挟む(彼女視点)
彼の手錠を片方ずつ丁寧に外していく。
彼は、目を見開いて私見ている。
そんなに驚く事の連続だろうか?
私が足錠を外す。
彼は、繋がれていた腕をさすっている。
私は彼の着物を掴んで脱がそうとする。
彼はびっくりした様にこっちを向いて私の手をガッと掴む。
目線は下を向いたまま顔を真っ赤にする。
あんなに見られた後なのに…っと、先に脱がせておくんだったな…
しかしまぁ…かわいいな…
見た目は、痣だらけで、傷だらけで、骨張っていて…だから、普通の人が見たらかわいいなどという反応は帰ってこないだろう。
私の神経も大分狂っているのかもしれないな…
震える手で私の手を抑える彼は、軽く涙目である。
彼の肩に自分の顔を乗せる。
片方をそっと彼の背中に回し、彼の背中をゆっくりさする。
「大丈夫。怖がらないで…」
彼の呼吸が何処となくぎこちなくなる。
彼が吸って、短く吐く様な息を繰り返す。
泣き出す前の子供でもあやしている気分だ。
暫くそうしてさすっていると、彼はそのうち震えながらゆっくり、ぎこちなく両手を離した。
彼の肩から離れる。
彼の顔を見て、にっこりと笑う。
彼の着物をゆっくり脱がせていく。
相変わらず震えているが、私の腕を離した後、彼が腕を動かす事はなかった。
そのまま脱がし終えると、私は彼の膝下に手を入れお姫様ダッコをする。
彼の顔を強く自分の方に抱き寄せる。
「お風呂に入ろう」
震えが止まる。
彼がこっちを向く。
目をパチクリとさせている。
おや?また襲われるとおもってたのかな?
私はにっこり笑って彼を風呂場まで運ぶ。
風呂用の椅子に座らせるとキョトンと私をみる。
ああ、忘れてた…
リビングまで行って、ラップと大きめのゴムを持ってくる。
彼はじっと私を見ている。
彼の前にしゃがむ。
「怪我した方の足出して」
彼がおずおずと足を出す。
私は彼の足の傷の部分にラップを巻く。
きつ過ぎない様に上下をゴムで縛る。
これで水は染みてこないかな…
私は立ち上がってシャワーを取った。
(彼視点)
こんなやり方があるのか…
彼女が足の傷の周りにラップを巻いていくのを見つめる。
傷は出来るのがいつもの事だった。
いつの間にか痛いのを気に留めず風呂に入っていた。
傷が出来ると、痛いより先に面倒臭いと感じる様になっていた。
彼女がシャワーを取る。
彼女が温度を確かめてから、私の頭にシャワーをかける。
「しみない?…ああ、喋れなかったっけ…」
先にシャワーを止めて、私の轡を取る。
「…」
私は口を噤んでいる。
「痛かったら、首を縦に降って」
彼女が私の髪を洗い始める。
私は手を椅子についたまま下を向く。
私の髪に丁寧にぬるま湯をかけてく。
なんとも言えない気分だった。
なんて言っていいかよくわからない気分だった。
彼女が手でシャンプーを泡立てる。
私は丁寧に耳の後ろから髪を洗われる。
髪を洗って貰うのは、いつ以来だろうか…
いつか母が亡くなって、自分でやらなくてはいけない事が増えて、ふと、ゴミ出しに行った時にうっかり覗いてしまった家庭の風景。
自分と同じ年齢位の子供が髪を洗って貰っていた。
羨ましいな、と思って遠くから一人呆然と眺めいた自分を思い出してしまう。
思い出すと、いたたまれない気分になった。
ポロポロと、知らずに涙が出た。
彼女が洗う手を止める。
「大丈夫?」
私は、ぎゅっと手に力を入れて首を縦に振る。
彼女は、シャンプーに濡れた手のまま私の頭をそっと撫でると、また、髪を洗い始めた。
結局彼女が、私の髪と背中を洗い終わるまで涙は止まらなかった。
洗い終わってから彼女に耳にを食まれて、赤くなった。
「泣かないで」と耳元で囁かれて、やっと泣き止んだ。
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