ストーカーと彼女

ココナッツ?

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錯綜する誤解と彼の心情

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(彼視点)

 彼女が私にそっと轡をして部屋を出た。
 私は肩から力を抜く。
 何と無く天井を見上げた。

 昨日から、ずっとこんな感じなんだな…

 彼女に襲われるまで、キスさえした事はなかった。
 彼女をいつも遠くから見ているだけで、そんなところを想像した事さえなかった。

『置いていかないで下さい』

 自分が言った言葉を思い出す。
 随分と欲張りになったものだと、自分で呆れる。

「ーー、ー」

 乾いた笑いは、彼女がしていった轡の所為でただのかすれた音になった。
 何故涙出てくるのかわからない。
 何故こんなに胸が締め付けられる様な気分になるのかわからない。

 さっきの私は、おかしかったよな…
 でも、今もやっぱり、なんというか、変な気分だな…

 ずっと片思いしていた相手からされる甘美な行為の数々。
 私の体に電流が走った様な快楽が、容赦なく強要される。
 そんな状態が、昨日からずっと続いている。
 その所為か、一人でいる時は体がずっとスースーと冷たい。

 そういえば今、裸だっけ…

 服を着ようと思って腕を引く。
「カチャッ」という音が、手が縛られている事を知らせる。

 ああ、縛られてたっけなそういえば彼女は…、彼女はどんなつもりで私の体を弄んでいるのだろう…

 彼女が私を好きだ、と自惚れ切れない私が居る。
 話を聞こうにも、轡をされていたり、タイミングが合わなかったりして出来ない。

 あんな美人なら相手は幾らでも居るだろうに…

 暫くぼーっと考えて居ると、ふと、例えばの話が思い浮かんだ。

 例えば、彼女がサイコパスで、殺人鬼で、こういう事をするのが趣味だったとしたら…

 こういった行為を好む男性は少ない。
 法的にも完全に違法である。
 そしてそう思ったら、今の状況に酷く辻褄があっている様に思えてしまった。

 でもそれなら…私はいつか飽きられて、彼女に殺されてしまうのだろうな…

 石鹸の匂いがする。
 彼女のいい匂いがする。
 見なくても、わかる。

 風呂上がりの、濡れた髪の上にタオルを乗せた、美しい人形の様な彼女が、私の横に立っていた。



(彼女視点)

 なんというか、獲物が、諦めた顔で横たわっている様な、そんな印象を受けた。

 ん?何があった?

 会話が殆ど無いので、色々な勘違いが交錯していそうだなとは思いつつ、今更面と向かって事情を説明するのも少し恥ずかしい。

 ま、その分はちょっと我慢して頂きますか…
 ん?

 ふと、彼の目元に泣いた様な跡が残っているのに気付く。

 あれ、また泣いていたのか?

 大分情緒不安定なのかもしれない。
 私は、 彼の頭を優しく撫でる。
 彼は驚いた顔をしてこっちを見つめている。
 私はゆっくり、ゆっくり手で彼の髪をすく。
 彼の顔は、徐々に赤くなっていく。
 いたたまれない様に横を向く。
 自分の口元が緩むのを感じる。

 少し、休ませてやらないとな…

 彼のこめかみにキスをする。
 彼の体がビクッと跳ねた。
 彼が目を見開いて、少し震えながら向こうを向いている。
 首まで真っ赤だ。
 私はこめかみ周辺を舌で舐め始める。
 彼の顔は徐々に顔をくしゃくしゃにして、細めた目から涙が溢れ始める。

 泣かせるつもりは無かったんだけどな…

 手で彼の涙を拭う。

 さて…

 私は彼をお風呂に入れるべく、彼の手錠を外した。
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