4 / 11
間奏 キマジメゴシック
しおりを挟む
アルマ六番街、クリーブレント、その一角に、ようやく一同の待ち人が訪れた。
「おはよ」
それこそは、そのグラデーションされた赤髪と肩のベースがトレードマークの、尖ったナイフが如き殺伐纏いしパンキッシュガール。
そしてその挨拶に対し、怒りを露わにするゴス美少女とメタラーガール。
「おい、ハーデス。卿、刻限に遅れて置きながら、開口一番がそれなのか?」
「そーっすよー、いい歳してそんなんで恥ずかしくないんすかー???」
しかし、そんな二人の心情など素知らぬ顔で、彼女は尋ねた。
「あれ、マーリンは?」
「待てども待てどもやってこぬ卿を探しに、出て行ったのだが……」
「まだ帰ってこないっすねー」
「ふーん」
「というか、なんなのだ。遅刻の謝罪はなしなのか?」
自分で聞いておきながら興味のなさそうな返事をした赤髪に、ある意味当然の切り返しをするゴス美少女。外見に反し、彼女はこの中で一番の常識人なのかもしれない。
「あたしも好きで遅れたわけじゃない」
「なんかあったんすか?」
「からまれた」
「なんだ、卿、また道行く信徒共に説教でもされたか」
「急に奇跡ぶっぱしてヤリ逃げ。しかもあの変態雌ガキ、なんか間違えたとかなんとか……」
その時のことを思い出したのか、先程まで無愛想且つ仏頂面だった赤髪の顔に、少しだけ表情が浮かんだ。
「だから遅れたのはあたしのせいじゃない」
そう言ってむんずと腕を組み、そっぽを向く赤髪。
そんな彼女に向け、頭の悪そうなメタラーガールの声が飛ぶ。
「あれ? てか、はではでってば、服破けてるじゃないっすか! もしかしてエル信者にやられた傷っすか? ダサいっすね!」
メタラーガールが指摘したのは、単純に元々そういうデザインがなされているというだけの、意図的に傷んだ意匠が施されたダメージタイツだった。
そして彼女は、このタイツがパンク少女お手製の、苦心の末に完成したお気に入りの一品であることを、知らない。
「これは元から。つーかヘヴィも似たようなもんでしょ」
ちょっとばかしむっとしたような声で、しかしやはりぶっきらぼうにそう返す赤髪。
「えーー! 心外っすーー! この最高にメタルなうちのファッションをそんなはではでが来てるようなパンキッシュなのと一緒にしないでくださいっすよーー」
そのケバすぎる紫髪ツインテをブンブン揺らし、負けじと言い返すメタラーガール。
すると、
「パンクは理解されづらい。だから、あんたががそう思うのは勝手、」
「わかるっすよその気持ち。メタルもなかなか理解されないんっすよね……、」
二人はそう啖呵を切って、
「――でも一回死ね」
「――とゆーわけで、デスメタルっすーー!」
ほぼ同時にそう叫び、取っ組み合いを開始した。
「パンクが一番なんだよ!!」
「メタルこそ至高っす!!!!!」
争いは低次元且つ平行線だったが、ある意味高尚であった。
そんないつも通りのやり取りを、ゴス美少女はげんなりした顔で眺める。
「みゃー、たぁけらし。なんやがね……」
そして、彼女はそうぽつり呟きながら、一人黙々と演奏に向けて準備を進めるのだった。
今日のライブはあんばようオンタイムでいけんかにゃー、と、不安に思いながら。
「おはよ」
それこそは、そのグラデーションされた赤髪と肩のベースがトレードマークの、尖ったナイフが如き殺伐纏いしパンキッシュガール。
そしてその挨拶に対し、怒りを露わにするゴス美少女とメタラーガール。
「おい、ハーデス。卿、刻限に遅れて置きながら、開口一番がそれなのか?」
「そーっすよー、いい歳してそんなんで恥ずかしくないんすかー???」
しかし、そんな二人の心情など素知らぬ顔で、彼女は尋ねた。
「あれ、マーリンは?」
「待てども待てどもやってこぬ卿を探しに、出て行ったのだが……」
「まだ帰ってこないっすねー」
「ふーん」
「というか、なんなのだ。遅刻の謝罪はなしなのか?」
自分で聞いておきながら興味のなさそうな返事をした赤髪に、ある意味当然の切り返しをするゴス美少女。外見に反し、彼女はこの中で一番の常識人なのかもしれない。
「あたしも好きで遅れたわけじゃない」
「なんかあったんすか?」
「からまれた」
「なんだ、卿、また道行く信徒共に説教でもされたか」
「急に奇跡ぶっぱしてヤリ逃げ。しかもあの変態雌ガキ、なんか間違えたとかなんとか……」
その時のことを思い出したのか、先程まで無愛想且つ仏頂面だった赤髪の顔に、少しだけ表情が浮かんだ。
「だから遅れたのはあたしのせいじゃない」
そう言ってむんずと腕を組み、そっぽを向く赤髪。
そんな彼女に向け、頭の悪そうなメタラーガールの声が飛ぶ。
「あれ? てか、はではでってば、服破けてるじゃないっすか! もしかしてエル信者にやられた傷っすか? ダサいっすね!」
メタラーガールが指摘したのは、単純に元々そういうデザインがなされているというだけの、意図的に傷んだ意匠が施されたダメージタイツだった。
そして彼女は、このタイツがパンク少女お手製の、苦心の末に完成したお気に入りの一品であることを、知らない。
「これは元から。つーかヘヴィも似たようなもんでしょ」
ちょっとばかしむっとしたような声で、しかしやはりぶっきらぼうにそう返す赤髪。
「えーー! 心外っすーー! この最高にメタルなうちのファッションをそんなはではでが来てるようなパンキッシュなのと一緒にしないでくださいっすよーー」
そのケバすぎる紫髪ツインテをブンブン揺らし、負けじと言い返すメタラーガール。
すると、
「パンクは理解されづらい。だから、あんたががそう思うのは勝手、」
「わかるっすよその気持ち。メタルもなかなか理解されないんっすよね……、」
二人はそう啖呵を切って、
「――でも一回死ね」
「――とゆーわけで、デスメタルっすーー!」
ほぼ同時にそう叫び、取っ組み合いを開始した。
「パンクが一番なんだよ!!」
「メタルこそ至高っす!!!!!」
争いは低次元且つ平行線だったが、ある意味高尚であった。
そんないつも通りのやり取りを、ゴス美少女はげんなりした顔で眺める。
「みゃー、たぁけらし。なんやがね……」
そして、彼女はそうぽつり呟きながら、一人黙々と演奏に向けて準備を進めるのだった。
今日のライブはあんばようオンタイムでいけんかにゃー、と、不安に思いながら。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。
だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。
互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。
ハッピーエンド
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/03/02……完結
2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位
2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位
2023/12/19……連載開始
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
スキル買います
モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」
ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。
見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。
婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。
レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。
そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。
かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる