愛膿ファンタジア

ふみのあや

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間奏 キマジメゴシック

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 アルマ六番街、クリーブレント、その一角に、ようやく一同の待ち人が訪れた。

「おはよ」

 それこそは、そのグラデーションされた赤髪と肩のベースがトレードマークの、尖ったナイフが如き殺伐纏いしパンキッシュガール。
 そしてその挨拶に対し、怒りを露わにするゴス美少女とメタラーガール。

「おい、ハーデス。卿、刻限に遅れて置きながら、開口一番がそれなのか?」
「そーっすよー、いい歳してそんなんで恥ずかしくないんすかー???」

 しかし、そんな二人の心情など素知らぬ顔で、彼女は尋ねた。

「あれ、マーリンは?」
「待てども待てどもやってこぬ卿を探しに、出て行ったのだが……」
「まだ帰ってこないっすねー」
「ふーん」
「というか、なんなのだ。遅刻の謝罪はなしなのか?」

 自分で聞いておきながら興味のなさそうな返事をした赤髪に、ある意味当然の切り返しをするゴス美少女。外見に反し、彼女はこの中で一番の常識人なのかもしれない。

「あたしも好きで遅れたわけじゃない」
「なんかあったんすか?」
「からまれた」
「なんだ、卿、また道行く信徒共に説教でもされたか」
「急に奇跡ぶっぱしてヤリ逃げ。しかもあの変態雌ガキ、なんか間違えたとかなんとか……」

 その時のことを思い出したのか、先程まで無愛想且つ仏頂面だった赤髪の顔に、少しだけ表情が浮かんだ。

「だから遅れたのはあたしのせいじゃない」

 そう言ってむんずと腕を組み、そっぽを向く赤髪。
 そんな彼女に向け、頭の悪そうなメタラーガールの声が飛ぶ。

「あれ? てか、はではでってば、服破けてるじゃないっすか! もしかしてエル信者にやられた傷っすか? ダサいっすね!」

 メタラーガールが指摘したのは、単純に元々そういうデザインがなされているというだけの、意図的に傷んだ意匠が施されたダメージタイツだった。
 そして彼女は、このタイツがパンク少女お手製の、苦心の末に完成したお気に入りの一品であることを、知らない。

「これは元から。つーかヘヴィも似たようなもんでしょ」

 ちょっとばかしむっとしたような声で、しかしやはりぶっきらぼうにそう返す赤髪。

「えーー! 心外っすーー! この最高にメタルなうちのファッションをそんなはではでが来てるようなパンキッシュなのと一緒にしないでくださいっすよーー」

 そのケバすぎる紫髪ツインテをブンブン揺らし、負けじと言い返すメタラーガール。
 すると、

「パンクは理解されづらい。だから、あんたががそう思うのは勝手、」
「わかるっすよその気持ち。メタルもなかなか理解されないんっすよね……、」

 二人はそう啖呵を切って、

「――でも一回死ね」
「――とゆーわけで、デスメタルっすーー!」

 ほぼ同時にそう叫び、取っ組み合いを開始した。

「パンクが一番なんだよ!!」
「メタルこそ至高っす!!!!!」

 争いは低次元且つ平行線だったが、ある意味高尚であった。
 そんないつも通りのやり取りを、ゴス美少女はげんなりした顔で眺める。

「みゃー、たぁけらし。なんやがね……」

 そして、彼女はそうぽつり呟きながら、一人黙々と演奏に向けて準備を進めるのだった。

 今日のライブはあんばようオンタイムでいけんかにゃー、と、不安に思いながら。
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