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間奏 リバイバルリハーサルリサイタル
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「もどったぜ」
アルマ6番街クリーブラント、その中心に位置するとある広場に、颯爽と帰還した茶髪の女。
それに応えるのは、
紫髪ツインテールに、髑髏柄のワンショルダーが目を引くメタラーガール。
ロングの赤髪とダメージタイツが、攻撃的で尖った印象を与えるパンキッシュガール。
その美しい白磁の肌以外の全てを、頭からつま先まで漆黒に包んだゴシック美少女。
そんな、我の強い三人の美女。
「おかえりなさいっすー!」
「おそい」
「ご苦労だった」
濃いメンバー三人それぞれの性格が出たその返答に、彼女は少しだけ苦笑。
ちょっとした土産話を始める。
「アイに会ってきたよ。あいつときたら、さっそく愛を見つけていたぜ」
「相変わらずだな、奴は」
「アイドルちゃんらしいっすね」
「どーでもいい。セッション、はやく」
旧友の再来に、皆、言葉にはしないが沸き立っている。それを、茶髪は感じ取った。
「元はといえば卿が……」
故に、苦言を呈すゴス美少女を制して、彼女は続ける。
なぜなら、この場で一番浮かれているのは、ほかならぬそいつなのだから。
「いいさ。ハーデスの気持ちもわかる。うずうずしてるんだろ?」
「別に」
不機嫌そうに目をそらす赤髪のパンキッシュガール。
「卿!」
もちろん咎めるゴス美少女。
そんな彼女を愛おしく思い、茶髪は、その、万物を呑みこんでしまいそうに思えるほど美麗な彼女の黒髪に、手をのばす。
「そう怒ってやるなよ。いつもありがとね、ミック」
そうして、そのまま優しく撫であげて、アリッサムのように白い頬へくちづけをする。
そんな仕打ちをされてしまえば、先程まで凛としていたゴス美少女だって、及び腰になってしまうというもの。威厳などはとうに消えていた。
「にゃ……」
けれど、彼女は諦めない。少しうわぶった声になってしまったが、なんとか言葉をひねり出し、どうにか取り繕おうと試みる。
「け、卿、無礼だぞ……!」
しかし、それでも彼女の苦難は続く。彼女のそんな必死の努力をあざ笑うかのように、紫髪のメタルガールがその華奢な体へと抱きついたのだ。
「みく様かわいいー!」
浴びせられているのが好意なだけに、反抗しづらい彼女は、なすがまま。
「う、うむ。」
頷くのがやっとのたじたじ具合だ。
ある意味いつものやり取りではあるのだが、この場の誰よりも静かに内なる音を奏でていた赤髪は、待ちきれないというように口を開いた。
「だからさ、はやくしよって」
更に、手元ではずっと、肩から下げたベースの弦をいじり続けている。
そんな彼女に、茶髪は微笑む。
「オーケー、ほんとにうずうずしてるんだね、ハーデス。でも、わかるぜ。僕もだよ。今日はなんて刺激的なんだろう。最高にロックだ」
「我も、それには同意しよう」
「うちもっす」
二人も、滾る闘士を目に宿して、頷いた。
「なら、やろ。曲はあれでいいでしょ」
そして、彼女はいつも通り端的にそう吐き捨てる。
けれど、彼女等には、それで通じるのだ。言葉など、いらない。この四人は、その先の音の世界に立っているから。
そして、その世界は、今ここに掻き鳴らされる。
「もちろんさ。じゃあ、やろうか。」
「ロックに」
「ゴシックに」
「メタルに」
「パンクに」
四人は口々にそのルーツを叫び、
「We are ?」
茶髪の問に、全力で応える。
「「「Heldin !!!」」」
ヘルディン。それは、ヒロイン。彼女達は、いや、音楽を愛す全ての者が、この音楽の主人公でありプリンセスなのだという、彼女等の矜持を示す宣誓。
しかして、四人はもう一度口を揃えて、放つ。一曲目の、タイトルを。
「「「「Jam Cracker」」」」
曲名を告げる声。
――――刹那の無音。
一転。身体の中身、その悉くが攪拌されるような爆音が、鳴り響いた。
そのカルテットは、この世の何よりも熱く、激しく。
今日もアルマには音楽が絶えない。
アルマ6番街クリーブラント、その中心に位置するとある広場に、颯爽と帰還した茶髪の女。
それに応えるのは、
紫髪ツインテールに、髑髏柄のワンショルダーが目を引くメタラーガール。
ロングの赤髪とダメージタイツが、攻撃的で尖った印象を与えるパンキッシュガール。
その美しい白磁の肌以外の全てを、頭からつま先まで漆黒に包んだゴシック美少女。
そんな、我の強い三人の美女。
「おかえりなさいっすー!」
「おそい」
「ご苦労だった」
濃いメンバー三人それぞれの性格が出たその返答に、彼女は少しだけ苦笑。
ちょっとした土産話を始める。
「アイに会ってきたよ。あいつときたら、さっそく愛を見つけていたぜ」
「相変わらずだな、奴は」
「アイドルちゃんらしいっすね」
「どーでもいい。セッション、はやく」
旧友の再来に、皆、言葉にはしないが沸き立っている。それを、茶髪は感じ取った。
「元はといえば卿が……」
故に、苦言を呈すゴス美少女を制して、彼女は続ける。
なぜなら、この場で一番浮かれているのは、ほかならぬそいつなのだから。
「いいさ。ハーデスの気持ちもわかる。うずうずしてるんだろ?」
「別に」
不機嫌そうに目をそらす赤髪のパンキッシュガール。
「卿!」
もちろん咎めるゴス美少女。
そんな彼女を愛おしく思い、茶髪は、その、万物を呑みこんでしまいそうに思えるほど美麗な彼女の黒髪に、手をのばす。
「そう怒ってやるなよ。いつもありがとね、ミック」
そうして、そのまま優しく撫であげて、アリッサムのように白い頬へくちづけをする。
そんな仕打ちをされてしまえば、先程まで凛としていたゴス美少女だって、及び腰になってしまうというもの。威厳などはとうに消えていた。
「にゃ……」
けれど、彼女は諦めない。少しうわぶった声になってしまったが、なんとか言葉をひねり出し、どうにか取り繕おうと試みる。
「け、卿、無礼だぞ……!」
しかし、それでも彼女の苦難は続く。彼女のそんな必死の努力をあざ笑うかのように、紫髪のメタルガールがその華奢な体へと抱きついたのだ。
「みく様かわいいー!」
浴びせられているのが好意なだけに、反抗しづらい彼女は、なすがまま。
「う、うむ。」
頷くのがやっとのたじたじ具合だ。
ある意味いつものやり取りではあるのだが、この場の誰よりも静かに内なる音を奏でていた赤髪は、待ちきれないというように口を開いた。
「だからさ、はやくしよって」
更に、手元ではずっと、肩から下げたベースの弦をいじり続けている。
そんな彼女に、茶髪は微笑む。
「オーケー、ほんとにうずうずしてるんだね、ハーデス。でも、わかるぜ。僕もだよ。今日はなんて刺激的なんだろう。最高にロックだ」
「我も、それには同意しよう」
「うちもっす」
二人も、滾る闘士を目に宿して、頷いた。
「なら、やろ。曲はあれでいいでしょ」
そして、彼女はいつも通り端的にそう吐き捨てる。
けれど、彼女等には、それで通じるのだ。言葉など、いらない。この四人は、その先の音の世界に立っているから。
そして、その世界は、今ここに掻き鳴らされる。
「もちろんさ。じゃあ、やろうか。」
「ロックに」
「ゴシックに」
「メタルに」
「パンクに」
四人は口々にそのルーツを叫び、
「We are ?」
茶髪の問に、全力で応える。
「「「Heldin !!!」」」
ヘルディン。それは、ヒロイン。彼女達は、いや、音楽を愛す全ての者が、この音楽の主人公でありプリンセスなのだという、彼女等の矜持を示す宣誓。
しかして、四人はもう一度口を揃えて、放つ。一曲目の、タイトルを。
「「「「Jam Cracker」」」」
曲名を告げる声。
――――刹那の無音。
一転。身体の中身、その悉くが攪拌されるような爆音が、鳴り響いた。
そのカルテットは、この世の何よりも熱く、激しく。
今日もアルマには音楽が絶えない。
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